第40話

当然だけど、彼の体は、私の息がかかるくらい近い距離にあった。目の前には彼の首があった。


彼の手が遠慮がちに私の右胸の少し上を軽く押した。


本当に軽く、でも成長期の胸の痛さは服に触れるだけでも痛いのを私は身を持って毎日痛感している。



『いっ…た』



少しの痛みに彼の首元に前のめりになった。

自然と吐息が彼にかかる。


「あ…ごめんね。もう止めておく?」



体を一瞬大きく揺らした彼。自分で招いたくせに、逃げるなんて許さない。


私は、大丈夫です、と言って触診を促した。


彼は私の言葉に戸惑いながらも手を動かした。患者が診てほしいと言っていて、途中で止める医者はいない。


彼は一呼吸置いて、次は左の胸より少し高い位置に手を伸ばすはずだった。

でも、私の行為によって、彼は避けていた私の胸を掴むように触ることとなった。


彼の空いていたもう片方の手を、ギュッと握って、彼の耳元でこう囁いた。



“藤堂先生、優しくしてね”



その言葉に、かかる息に、握られた手に、動揺した彼は、移動するはずだった手を離そうとしたのだろう。キャミソールがその手の動きに反発して、彼の手は私の胸に収まるように戻ってきた。

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