第7話

本当に瞳がきらきらしていて少年みたい

香織さんの言っていた通りだ


「あきら、あたしの尊敬するおじさん」


「香織ちゃん、おじさんはないでしょ」


「だってあたしたちからみたらおじさんです」


「香織ちゃん」


「あたしの尊敬する作家さんだよ」


二人のやりとりが、きっと普段から日常茶飯事なことがうかがえた

おじさんなんかに見えないくらい若々しい彼の、よく見ると目じりが下がっている優しそうな顔立ちに私の警戒心は自然と消えていった


でも一番の要因は、香織さんが心を開いているのが二人の掛け合いを見てすぐにわかったから

きっといいヒトなんだと思う


『…は、はじめ…まして』


香織さんの後ろから出てきて、さっきクマさんにしたみたいに小さく頭を下げた


『白…坂…あきら…です…』


「…(かっかわいいー)」


「…(善さん)」


「…(香織ちゃん、なにこの愛らしい子は!)」


「…っち(だから嫌だったんですよ)」


「…(こんなにかわいい子今まで隠してたなんて、減給だ!)


「…(あ?いいからさっさと挨拶して下さい)」


「あ、あきらちゃん?はじめまして!小説家の遠山善です」


『…(コク)』


「香織ちゃんから話だけはずっと聞いていたよ。僕のことは善さんでいいよ、よろしくね」


優しげな顔で微笑まれて、そして頭を撫でられた


瞬間、香織さんに手首をひねられて「僕の商売道具~」という悲鳴が聞こえた


――おかしい

嫌悪感を感じなかった

ヒトなのに、男のヒトなのに


そっか…


香織さんの信頼しているヒトは大丈夫なのだとこのときわかった

香織さんのヒトを視る嗅覚は犬をはるかに上回っているから


男性とまともに話をしたのが学校の先生以来だということを後になって気がついた

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