空気って凍るんだ
ある日、小二の息子を連れて温泉に行った時のこと。 入り口に掲示が貼ってある。
「三月三十日より刺青のある方お断りします。」
今日は三月二十九日。ふーん、明日からダメなんだ〜。四月一日じゃなくて、三月末なんだなぁ。などと、どうでもいいことを考えながら受付に向かう。
その受付で何やら揉めている様子。老夫婦の旦那さんが口を開いているけど、何を言ってるのかはよく聞こえない。 その横で、奥さんが
「もういいやん、行こう」
と言いながら僕たちを見て、一言。
旦那さんが引き下がり、ようやく温泉に入っていった。
そんなにうるさい感じには見えないけどなぁ〜と思いつつ、僕たちも普通に受付を済ませて脱衣所に向かう。
そして、脱衣所に入った瞬間。
さっきの旦那さんがモンモン背負ってる。 ああ、そうか、さっき揉めてたのはこれか!「刺青のある方お断りします」ってやつだ!
その時、隣で息子が脱衣所に響き渡る声で言った。
「お父さん、あの人ダメだよ〜!刺青しているのに、入ろうとしている。」
瞬間、空気が凍りついた。 「あ、やばい。どうしよう、どうしよう…!」
頭フル回転。あっ、そうだ!
「他人の振りだ!」と心の中で叫びながら、
「僕〜、お父さんどこかなぁ〜?」と、息子を引っ張ってその場を離れようとする案が…
いや、バレてる。ああ、もうダメだ。
仕方なく、少し大きめに声を出して、
「アホ、いかんのは三月三十日からや!今日は三月二十九日!ちゃんと書いてあっただろ?」
息子は、なんのためらいもなくフルチンで走り出し、貼り紙を見て戻ってきた。
「本当や!明日じゃなくてよかったなぁ〜。あの人、入れなかったよ〜!」
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