いいひと戦略について

 前回の「成功者の法則」に付随して、今回は「いいひと戦略」を紹介したいと思います。

 著者は岡田斗司夫。随分前に出版された書籍です。


 ここで言う「いいひと」とは「いい人間に見せかけた人」の意味です。謂わば偽善者。


 著者は「善人面した、いいひとになりましょう」と述べているわけです。これは大変恥ずかしい主張だと思います。


 現在はモラルが崩壊し、スラップ(恫喝)訴訟が当たり前のように行われる世の中になりました。善人に成り済ました悪人が好き勝手に生きて利益を貪る時代です。

 被害者が被害の声を上げたら、加害者から「名誉棄損だ」と訴えられて大金を奪われる。偶然にも明確な証拠を入手していれば勝つこともあるかもしれないが、通常は持っていない。そのため多くの性被害者たちのように敗訴し、世間の人たちからは嘘つき呼ばわりされるようになります。

 訴訟を起こしても証拠を提出することができなければ、加害者は不起訴処分となります。

 通常、被害は突発的に受けるものなので、そのタイミングで録音や録画などできるはずがない。被害者からすれば泣寝入りするしかないのが現状です。

 世の中には著者の言うところの「いいひと」が無数に存在します。


 著者はこう述べている。

「早とちりしないで欲しいのですが「いい人になれ」という道徳を説いているのではありません。あくまで戦略です。 極端な話、腹の中は真っ黒でもけっこう」

「断言しましょう。「いいひと戦略」をするのに、「本当のいいひと」である必要はありません」


 この界隈の人の考え方が素直に述べられていると思います。この手の人たちは相手を騙すことに関して一切の罪悪感を持たず、実行する際も躊躇しないところがある。騙す相手は情報弱者です。

 これでは老人を騙して金を奪い取っている闇サイトの連中と思考回路が同じではないかと思います。


 やはり「成功者の法則」に書いてあったように、実力の良し悪しや、人間性は関係がない。相手にそのように思わせたら良いのです。それだけ世間の人たちは騙されやすい。

 この「そのように思わせたら良い」という詐欺師のテクニックが恥ずかしげもなく主張され、堂々と行われるようになった。昔は一部の悪質な人間を除けば、多くの人は躊躇して行動を控えていたはずです。しかし今はそうではありません。


 著者は自身で「未来を予知する能力が高い」「俺は天才」などと盛んにアピールしています。しかし実は当たったように見せかけているだけで、実際は大して当たっていない。この書籍でも様々な未来予測を書いていますが、殆どのものが外れています。

 著書の論理で言えば、「的中したとか、しなかったとかは関係がない。的中したように思わせたら良いのだ」となります。


 著者の言い分は、「本当の意味でいい人なんて存在しない。だから、いい人の振りをすればいい。誰も気づかないのだし」ということでした。

 職場にも偽善者が存在します。表向きは善人そのものであっても、誰も見ていないところでは違法行為に手を染めている。

 自分より能力のある人や人格者が職場にいた時、入社してきた時は、あらゆる手を使ってでも全力で退職に追い込んでいる。それだけではなく退職した人の功績をすべて奪い取って、自身の評価へと結び付け、退職者のことを「あいつは非常識な奴だった」「仕事ができなかった」「問題ばかり起こしていた」などと誹謗中傷し、上司には「解決したのは私たちです。私たちが居なければ会社は大変なことになります」と虚偽の報告をしつつ、上司からの信頼を勝ち取っている。

 実力があるとか、真面目であるとか、人格者であるとかは一切関係がない。



「いい人は短期的に損をするが、長期的には得をする」


 これも著者が述べていた言葉です。これは偽善者という意味でも、善人という意味でも間違っていると思います。

 偽善者は短期的にも長期的にも得をすることが多い。よほど成りすますのが下手な人は別ですが。

 善人は、「短期的には損をしたとしても、長期的には得をする」と言いたい気持ちは分かりますが、残念ながら長期的に得をするとは限りません。

 GIve&Takeという書籍がありますが、その書籍には「与えるだけのGiverは最終的にTakerに利益を奪い取られる」ことが書いてあります。研究から導き出した答えです。

 Giverが得をしているように見えるのは、得をしている人だけを見ているから、そのように見えるだけです。

 Giverは悪人を見抜く目を持っていなければ大変な目に遭う。というのも、人間というのは、たとえ相手が悪人だろうと、そちら側についたら自分に取って得をするのなら、迷わずに悪人側につくものだからです。

 Giverだからといって油断していると足元を掬われてしまいかねません。



「イヤな人の周りには徐々に人がいなくなる」


 これも残念ながら間違っている。一見正しいように思えるが、イヤな人の周りには同じ価値観を持ったイヤな人やイエスマン、傍観者タイプの人たちが集まってきます。一緒に行動を共にすることが居心地が良かったり、自身にとってプラスになるのであれば、イやな人から離れていくことはありません。

 実力のない人はイヤな人に行動を取らせることで、おこぼれを貰って生きていかなければならない。外に出て行って自身の力で利益を得ていくほどのバイタリティなど持ち合わせてはいないからです。

 傍観者たちも、無害なように思えて、実はイヤな人をサポートしている強力な協力者です。

 本当にイヤな人の周りから人が去っていくのであれば、ブラック企業がいつまでも存続し続けるわけがありません。政治家を見ていても、それは分かることです。類は友を呼ぶのです。離れていくのは善人たちくらいなもの。



「芸能界で10年以上生きている人はみんないい人」


 ろくでもない人間が山ほどいることは近年、証明されています。ここでいう「いい人」が偽善者という意味なら合っているかもしれませんが。

 著者が何を根拠にしているのかというと、それは明石家さんま,タモリ、ビートたけしの三人だけを見ていたからでした。サンプル数がたったの三つ......。

 著者は説明するに当たって、自分にとって都合の良い人物だけを取り上げていたわけです。よく使われる騙しのテクニックの一つ。


 著者の「良い人間なんていない。だからいい人になんてなる必要がない。そう思わせればいいだけ」

 この考え方に関しては、昔から一貫して嫌悪の感情が湧き起こってくる。

 医療の学校に通っていた時も教員たちが、この考え方を持っており、生徒たちに自分たちの歪んだ思想を植え付けていた。

 医療の現場で働く人の大半もこの考え方を持っているが、これは悪しき慣習を断つことができずに、反対に、それが正しいものと認識されて、継承され続けているからなのでしょう。

 もちろん医療従事者の中にも良い人も存在します。しかし、その人たちの多くは長くは続かず、業界から去っているのが現状です。働き続けたければ、業界の体質に染まるしかありません。



 この悪質な連中のことを語った時、必ず聞く言葉があります。それは「因果応報」です。

 よく「良い人間には良いことしか起きない」「悪い人間には必ず天罰が下る」「いずれ、その人も苦しむことになる」「今も内心、傷ついているはずだ」といった極端な話をする人たちがいます。

 しかし当然、因果応報といったオカルトの類いが起こることはありません。それを裏付ける統計データもありません。

「会社が倒産したり、部署が閉鎖、退職する羽目になった」この程度のことなら起こるかもしれないが、この犯罪者たちが、それまでしてきたことを考えたら到底、釣り合うものではありません。被害者たちは無数に存在しており、その人たちは退職どころか人生を破壊されている。中には、その後、自死した人もいるでしょう。


 これは芸能界で起きている性犯罪事件でも同じことが言えます。

「今までのように芸能活動ができなくなった」「数千万円、払った」「違約金を数億払う羽目になった」としても、被害者たちのことを想えば、全く釣り合ったものではありません。

 仮に加害者が自死したとしても、それでも釣り合わないと思います。

 被害を受けた善人たちは人生を破壊されて生涯苦しみ、中には命を絶つ人もいるが、悪人は必ずしも処罰されるとは限らない。何事もなかったかのように平然と生きている人もいる。

 被害者が100の痛みを受けたとしたら、加害者はその半数以下であることが殆どではないでしょうか。



「善人である必要はない、偽善者になれ」


 著者の、この主張を受け入れた時、その直後から人生が切り開かれていくのかもしれない。しかし、それは闇落ちしたことにもなる。

 金持ちなど生活に余裕がある人は良いとしても、余裕のない人の場合は、綺麗事を言っていられないこともあるでしょう。

 医療従事者や介護職員たちが、さも当たり前かのように他人の人生を壊してまで利益を獲得するのは、ある意味、仕方のないことなのかもしれません。この人たちも、親や夫が金持ちなど、幸運な人生を歩んでいたのなら、闇落ちすることはなかったはずです。


 人生とはつくづく運だと感じます。

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