第31話 三つの光が交わるとき ―デーモン、撃退―
「うわぁぁぁ!」
俺の悲鳴が響き渡る中、国王の体から放たれた黒い霧が俺たちを襲う。
「ハルキ、よけて!」
ネーラの声に反応して、俺は咄嗟に横っ跳びした。
「いてっ!」
見事に壁に激突。
さすが、俺だ。
その瞬間、国王の姿が一変した。
黒い霧に包まれた国王の目が血走り、異様な輝きを放つ。
「ギャハハハ!」
国王……いや、デーモンが不気味な笑い声を上げる。
「やっと、この体を完全に支配できたぞ!」
デーモンは俺たちを見下ろし、「さて、どちらから食おうかな?」と言いながら、
唾をゴクリと飲み込んだ。
「まずは、お前からだ!」
デーモンがネーラに向かって飛びかかる。
ネーラが両手を前に突き出す。
青白い光が彼女の指先から放たれ、デーモンに向かって飛んでいく。
しかし、デーモンは巧みにかわし、ネーラの魔法を封じ込める結界を張る。
「ちっ!」ネーラが舌打ちする。
「卑怯な手を使って……!」
彼女はイライラした様子で俺を睨む。
「ちょっと、なんとかしなさいよ!あんたの力を使えば、この結界を破れるはずよ!」
「えっ!?俺に!?」
「そう、あんたよ!早くしないと、本気で怒るわよ!」
「わ、分かった!やってみる!」
俺は必死に集中して、時間操作の力を呼び起こそうとする。
……だが、脳裏に激しい頭痛が走り、視界が一瞬揺れる。
(くそっ……頭が割れそうだ。心臓がバクバクして、内臓が軋むみたいに痛い……でも、やるしかねぇ!)
「くくく……お前の力、頂くぞ」
デーモンに支配された国王の声が、地下牢に不気味に響く。
その目は血走り、口元には残忍な笑みが浮かんでいた。
ネーラは後ずさりながら、両手に青白い炎を宿らせる。
「ハルキ、逃げて!」ネーラの声が震えている。
「私が食い止めるから!」
俺は歯を食いしばる。
「馬鹿言うな!絶対に見捨てたりしない!」
だが、俺にできることはなにもない。
デーモンの放つ黒い霧がネーラに迫る。
その霧に触れた壁が、まるで酸に溶かされたように溶けていく。
「ぐっ……」
ネーラが呪文を唱えるが、結界で彼女の魔法が押し戻されていく。
「ネーラ!」
俺は必死で叫ぶ。その時だった。
「ハルキ!」ジプトの声が頭の中に響く。
「石を使え!」
「石?」
「ポケットの中の石だ。それを握りしめて、時間を止めることをイメージしろ!」
俺は慌ててポケットから石を取り出す。
「時間を……止める?」
「そうだ!集中するんだ!」
俺は目を閉じ、石を強く握りしめる。
時間を止める……時間を止める……。
突然、石が熱を帯び始めた。
「これは……!」
目を開けると、世界の色が変わり始めていた。
現実が溶け出し、新たな次元が姿を現す。
デーモンの動きが、時間の濁流に足を取られるように、ゆっくりと……ゆっくりと……鈍くなっていく。
「ハルキ、これは……」
ネーラが驚いた声を上げる。
俺も状況が把握できていない。
ただ、この石の力で時間の流れが歪んでいることだけは分かる。
その時、予想外の出来事が起こった。
ビュンッ!
鋭い音と共に、一筋の光が地下牢の小さな窓を突き破るように射し込んできた。
「あれは……リンナの矢!?」
ネーラが驚きの声を上げる。
俺もその正体に目を見張った。
リンナの放つ矢を彷彿とさせる光の矢が、デーモンに向かって突進していく。
「ぐあああっ!」
デーモンの悲鳴が響き渡る。
光の矢がその体を貫いた瞬間、黒い霧が激しくうねり始めた。
「チャンスよ、ハルキ!」
ネーラの声に、俺は我に返る。
そうだ、今のうちに……!
俺は石を強く握りしめ、全身全霊でその力を引き出そうとする。
「うおおおおっ!」
すると、信じられない光景が広がった。
俺の周りから放たれた青白い光、ネーラの手から漏れ出る炎、そして光の矢が、運命の糸に導かれるように絡み合い始める。
「これは……三つの力が……融合している!?」
ネーラの驚きの声が響く。
融合した力は、渦を巻きながらデーモンに襲いかかる。
「ぎゃあああああっ!」
デーモンの絶叫が響き渡る。
黒い霧が薄れていき、国王の体からデーモンの力が抜けていくのが見える。
「ハルキ、今よ!」
ネーラの声に、俺は渾身の力で石を握りしめる。
「はあああああっ!」
最後の一押し。
融合した力がデーモンを包み込み、そして……。
パァン!
眩い光が地下牢を包み込んだ。
光が収まると、そこには倒れこむ国王の姿があった。
デーモンの気配は消え、ただ疲れ切った老人の姿だけがそこにあった。
「はぁ……はぁ……」
俺とネーラは、荒い息を吐きながら顔を見合わせる。
「な、なんだったんだ、今の……」
俺の問いかけに、ネーラも首を横に振る。
「分からないわ。でも、一つだけ確かなことがある」
「何だ?」
ネーラが真剣な眼差しで俺を見つめる。
「あなたの力は、私が想像していた以上のものよ」
俺は言葉を失う。確かに、今起きたことは俺の理解を遥かに超えていた。
だが、考えている暇はない。城内に警報が鳴り響き始めた。
「くそっ、見つかったか!」
「急ぎましょう、ハルキ!国王を連れて!」
俺たちは急いで国王を抱え上げる。
そして、暗い通路を駆け抜けていく。
俺たちの危険な脱出劇が、今まさに始まろうとしていた。
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