第26話 伝説の三人と、語られなかった真実
アジトの中は、意外にも居心地が良かった。
古びた家具が並ぶ中、暖炉からは心地よい温もりが漂う。
「さて」
カルロスが大きな椅子に腰を下ろした。
「ゆっくり話を聞かせてもらおうかの」
俺たちは、カルロスを中心に半円を描くように座る。
知恵の泉から水を汲もうとする旅人のごとく、全神経を集中させて彼の言葉を待つ。
「えっと」
俺は少し緊張しながら口を開く。
「カルロスさんは、一体何者なんですか?」
「わっはっは!」
カルロスが豪快に笑う。「わしか?ただの老いぼれじゃよ」
「いやいや」
ネーラが冷ややかに言う。
「その『ただの老いぼれ』が、さっきは大地を操ったわけ?」
「まあ、ちょっとしたトリックじゃな」
カルロスが髭をさする。
「若い頃は、もっと派手にやれたんじゃが……」
「若い頃って……」
リンナが目を輝かせる。
「カルロスおじさまの若い頃の話、聞きたい!」
「おお、そうか?」
カルロスの目が懐かしそうに遠くを見る。
「昔、わしはジープ王国の……」
「あ、それって伝説の3人の話?」
リンナが興奮気味に言う。
「おや、知っとったのか」
カルロスが驚いた顔をする。
「えっ、伝説の3人?」
俺は首を傾げる。
「なんですか、それ」
「ふむ」
カルロスが髭をなでる。
「じゃあ、ハルキ小僧のために、ちょいと話してやろうかの」
カルロスの声が、時の重みを帯びて響く。
過去の記憶が、彼の言葉とともにゆっくりと形を成していく。
「昔々のことじゃ。わしと、セリオ、そしてオルドの3人で……」
「オルド!?」
リンナが思わず声を上げる。
「ああ、そうじゃ」
カルロスが頷く。
「リンナの師匠のな」
俺は、少し前にリンナから聞いたオルドの話を思い出す。
「その3人で、何をしたんですか?」
俺は興味深そうに尋ねる。
「ほっほう」
カルロスの目が輝く。
「わしらは、ジープ王国を襲った大軍を撃退したのじゃ」
「へぇ、すごいじゃないですか」
「そりゃあな」
カルロスが自慢げに胸を張る。
「わしは拳一つで敵の大将を……」
「はいはい」
ネーラが呆れたように言う。
「また大げさな話になってきたわね」
「おや、ネーラ」
カルロスが笑う。
「まだ懲りずに口出しするのか。お前が生まれる前の話じゃぞ」
「え?」
俺は驚いて聞く。
「ネーラとカルロスさんって、知り合いなんですか?」
「ああ」
カルロスが頷く。
「わしは、このツンデレ娘の師匠でな。昔は魔法理論のイロハも教えてやったもんじゃ」
「だ、誰がツンデレよ!」
ネーラが真っ赤になって叫ぶ。
「わっはっは!まだまだじゃな、ネーラ」
俺とリンナは、思わず吹き出してしまう。
「で、でも」
俺は笑いを堪えながら聞く。
「どうしてカルロスさんは、ここにいるんです?王国の英雄なら、もっと……」
カルロスの表情が、一瞬だけ曇る。
「ああ、そのことか」
カルロスが深いため息をつく。
「実はな、ジープ王国が『防衛大国』を宣言した後、わしは王国を去ったんじゃ」
「え?どうしてですか?」
「理由は……」
カルロスが言いよどむ。
その時、突然外で物音がした。
「!」
俺たちは一斉に身構える。
「くそっ」
カルロスが立ち上がる。
「もう見つかったか」
「え?」
俺は慌てて聞く。
「誰に?」
「説明している時間はない」
カルロスが真剣な顔で言う。
「お前たち、裏口から逃げるんじゃ」
「でも、カルロスおじさまは?」
リンナが心配そうに聞く。
「わしは大丈夫じゃ」
カルロスが笑う。
「こんな老いぼれ、誰も相手にせんよ」
「カルロス……」
ネーラが珍しく優しい目でカルロスを見る。
「さあ、行け!」
カルロスが叫ぶ。
俺たちは、仕方なくカルロスの指示に従う。
裏口から出ると、そこには密林が広がっていた。
「カルロスのバカ爺!」
ネーラが叫ぶ。
「絶対に生きてなさい!」
俺たちは、カルロスの勇姿を胸に刻みながら、再び逃走を始めた。
そして、ジープ王国の真実を探る旅が、新たな段階に入ろうとしていた。
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