第3話 サボり

「ど、どうする…?」

「どうするも何も、もう授業が始まったわけだし、このまま二人で行っても不審だろう。都合よく、この時間の授業は体育だからこのまま話していてもバレないだろ。陰キャボッチとしてのスタイルを確立してきた僕なら誰にも気づかれないと思うから」

「それ、自分で言ってて悲しくならない?」


問には答えず、弁当箱を仕舞い、深くベンチに腰掛ける。天を仰ぐと、雲の速度が早く感じた。


「……まぁ、理仁なら気づくかもな…」



「あれ…あいつ等が居ない…」


その事に気づいたのは授業が始まってから10分ほどした頃だった。今回の授業はアルティメット。フリスビーとラグビーが融合したような、良く分からないゲームだ。


確かにあいつはやりたくないなんて言っていたけれど、サボるとは思いもしなかった。授業には毎回出席して、評定を取りに行くタイプだったからな。唯朱ならやりかねないが…


「どうしたんだろう…」

いろいろなことに考えを巡らせる。まさか、あの二人がなにかあったんじゃ…


「おい!理仁!」

「ん?」


振り向いた瞬間、頬に激しい衝撃が加わる。俺に向けてパスしたのだろう。だが、考え事をしていたせいで、反応をすることが出来なかった。


痛いという程までは行かなかったが、念の為、保健室に行く。と言って授業を抜け出す。そして、先程見えた人影を追って、屋上に行く。


何かを話しているように聞こえたが、細部までは聞き取れなかったので、突入する。

すると、そこにはベンチに腰掛けている颯太と、それに向かうように立っている唯朱が居た。


颯太は手を掲げ、

「わりぃな。サボった」と言った。



え、嘘…なんでここに居るの…?

もしかして聞こえてた?!颯太に嬉々として話したあのことが…?


「わりぃな。サボった」

何事もなかったかのように近寄っていく。あ、やめて、やめて。これ以上傷を抉らないで…


手で顔を隠したくなる衝動をなんとか押さえつけながら、張り付いた笑みで理仁を見るしか無かった。


「なんでサボったんだよ…そんな二人して、唯朱はあり得るだろうと思ったけど、お前がな…」

「はは、悪い悪い。もしかして、先生に呼びにいけって言われたのか?」

「いや、フリスビーが顔に当たったから、保健室に行くつって、ここに来たんだよ。だから、特段呼ばれたとかではない。大体、あの人は放任主義だろ。あと、一つだけ聞きたいことがある。さっき、何か話している声が聞こえたんだけど、何を話していたんだ?」


あれ…もしかして聞こえてない…?


「あぁ。ちょっとゲームのことで盛り上がってな。こいつが話しすぎたせいで間に合わなかったんだよ」

「そうなのか。だけど、そのスマホは仕舞っておいたほうが良いぞ。そういうところだけは敏感だからな。ここの学校は」


た、助かったぁ〜

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