【連作版】御江戸あやしあやかし絵巻~九尾男子の願掛けご飯~
千田伊織
第一帖 寺出奔の怪
第1話 出逢いとは突然に。
こんな話をご存じだろうか。
一、江戸時代に爆発的に増えた
一、
一見、
息がかすれる。冷たい空気は喉を引きずり、舌に血の味を覚えさせた。
何せ左腕を失ったせいで満足に走ることが叶わない。
しかし背後にはねっとり重苦しい黒い
味方はおらず、荒れた夜の山を使い古しの
「ついて来んなよっ!」
少年は目を閉じ、力を振り
言葉で通じるようなものではないことは分かっている。しかし言わずにはいられなかった。
怪しい寺を
あの寺には
お
それもこれも、追いかけてくるこの靄のせいだ。
疲弊しきった身体に加えて、肺も握り締められたように苦しくなってくる。
「誰か──」
少年は細くなった喉で最後の空気を吸おうとした。
そのとき、まるで
少年は崩れた姿勢を木に支えられながら、駆けずり回った。
お願いだ、巻いてくれ。霧よ、味方してくれ。
生まれてこの方、仏様に心から祈りを捧げたことなどなかった。見たことないものに願うなど、それはあまりに愚かではないかと
訂正しよう。もしここで助かれば、仏様はいらっしゃる、と。そして毎朝の
いるやもわからぬ仏に祈りながら駆けていたとき、するりと風が頬を撫でるような感覚があった。
その空いた場所には、
少年は気づかぬうちに足を止めていた。
一歩、一歩と吸い込まれるように小屋へ足を近づける。
思い出したように背後を振り返るが、あの黒い靄は
そう
視界の端で小屋の引き戸が開いたように見えた。その足はやけにきれいで
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