二一二二

「もう一人で行けばええんやないの」琴絵は二人に顎を上げた。「気にせずに好きなもん食べられるし、好きなところで花火見られるし」

「二二二一二二」と祖母。

 何だ、それは。二はカップルで一は琴絵ということか。おかしいよ。三とか五とかもあるんじゃないのか。もちろん家族や友だち同士も含めてくれてもいいのではないかと。

「五三三一五」

「あ、何か余計つらい」

「好きなもん食べながら歩いてるときに由紀ちゃんがなあ」

「由紀は関係ないやん?」

「ひびちゃんと一緒になあ。向こうはひびちゃんと手を繋いで花火見てるとき、あんたは一人で綿飴食べてるんやで。ご近所でしかも幼馴染みのアドバンテージ捨てるんか?」

「ちゃんと約束させる。響と由紀との話は進めんようにしてや。お風呂洗い一週間で」

「おばあちゃんも何かできるかも。孫の作るわらび餅が好きなんやけどなあ」

「まず約束に全力を注ぎたいです」

「まあねえ。明日は学校へ迎えに行く。一緒にブラジャーとパンツを買いに行こうか」

「何させる気なんですか。ワコールとかトリンプなんてどうやろか?」

 しかし今日はかわいく誘ったのに、まったく乗り気ではなかったなと、夕食を食べながら考えていた。すると役所の父が帰宅した。

「飲みに行くんじゃなかったの?」

「響が熱出したんやて。で、インフルとコロナの検査してるから中止や」

「ごはん準備するわ」と母。

「ん?辛気臭いな」

「行人さん、まあまあ。お仕事お疲れさんでしたな」と祖母が話を逸らした。「ひびちゃんは大丈夫なんですかいな」

「微熱らしいてすわ。足の手術もあるし」

「へ?」と琴絵。

「何や。何も聞いてないんか。響、去年交通事故に遭うたやろ。足の甲の骨が神経圧迫してることわかったんや。夏休み前に骨を除く手術するんや。手術はすぐ済むらしいけど」

「走れるようになるん?」

 父は母が持ってきた焼酎を水で割ると、指で混ぜながら「走るのはな。でも本人は意外に諦めついたみたいやわ」と唇を結んだ。

「でも今日も普通に歩いてたで」

「何か指が痺れてるんやて。で、いろいろ調べたら甲の骨が悪さしてるらしい」

「痺れはとれるん?」

「たぶんな。ただ競技には戻れん。アホなバイクのせいでと言うてるわ。響自身は記録に限界も感じてて、そろそろ諦めようとしてたとこやと話してたけどな」

 琴絵はポテサラを箸で寄せ集めながら聞いていた。だから去年も夏期講習でがんばってたということだ。この冬も鍛えてたし。

「ん?」琴絵は気づいた。「お父さん、響と話したみたいな言い方してるやん」

「話したんや。昨夜ヨセフの散歩してるときに会うて二人で話したんや。響、いつもリハビリしてるやん。五km歩いてる言うてた」

「いつから?」

「事故が去年の春やろ。夏くらいから歩いてるはずや。たまに会う」父は箸でポテサラのハムをつまんだ。「歩きすぎたんや。もう諦めかけてた言うてるけど、去年は何とか大会に間に合わせようとしたんやろうな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る