第5話 未知なる世界
「わ、わぁ……凄い!凄いですよロンゼルさん!!アレ見てください!」
「分かったから!分かったから先に行くな!!」
広大な森林に、メルフェリアの興奮した声とロンゼルの絶叫が響く。
魔境に着いてからというもの、メルフェリアは興奮しっぱなしであった。
今まで小さな国の穏やかな風景しか知らなかった少女が目の当たりにする魔境は、全てが新鮮で刺激的。見た事も無い生物、見た事も無い景色、ありとあらゆるものが彼女の興味の的であった。
お淑やかな女王の姿はどこへやら。泥まみれになりながら魔境を転がり回るその姿はまさに初々しい冒険者である。
「だあぁ!もう!いい加減にしなさい!」
「あうう……」
背負った鞄を掴まれ宙づりになるメルフェリア。
分厚い手袋を嵌めた小さな手には、黄色と赤が歪に渦巻いたおどろおどろしい葉が握られていた。形はハート形で無駄に可愛らしい。
「おいおい。どうしたんだよそれ」
「あ、これですか?さっき道端で見つけてつい取って来ちゃいました。すごく不思議な色と模様です。凄くないですか?」
「それな、ヌンヌロって植物の葉で、ちょっとでも口に含んだだけで全身が麻痺して死ぬ猛毒だぞ」
「ひっ!?」
メルフェリアは慌てて葉を放り投げる。一応、ロンゼルは持っていた水筒の水で手袋を洗ってやった。
「気持ちは分かるが、いい加減落ち着け。下手しなくても命が安い世界なんだぞ」
「す、すみません……」
何処から拾ったのか、ロンゼルが持っていた細い木の棒で何度も頭を叩かれるメルフェリア。そこに、一国の姫の威厳は微塵も感じられない。
ひとしきり叩き終わった後、ロンゼルはその木の棒を徐に齧り始めた。
「!?」
「これ、食べられるんだよ。ハカシーヴァって木の枝なんだけどな。サクサクしてて美味しいぞ」
ぽきりと折って差し出された木の枝。意を決して齧ると、クッキーのような芳ばしさと蜂蜜のような甘みが口いっぱいに広がった。
その後も、カジュナラスという二足歩行の巨大な鳥に追い掛け回されたり、ポクルという毛玉の様に丸くてふわふわな小型魔獣を愛でたり、リンドラという二つの頭を持つ肉食のトカゲに追い掛け回されたりと、初めての魔境を堪能したメルフェリア。
二日かけてようやくたどり着いた目的地。そこは、つい最近ロンゼルが訪れていた、『カンガラの宝石箱』という小さな砂漠であった。
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