第3章: 目の前の選択

洞窟の奥へ進むにつれて、空気はさらに冷たくなり、二人の呼吸が白く煙るようになった。足元の岩が滑りやすく、少しばかり注意を払わなければ、どこかで足を取られてしまいそうだ。しかし、二人はそれでも前に進んだ。奥に進むことで、二人はその先に待ち受ける「何か」に向かって一歩一歩、確実に踏み出していった。

「どうしてこんな場所が隠されていたんだろう?」

美澄が呟いた。その声はどこか不安げだったが、それでも彼女の目には興奮が宿っている。洞窟の中の異様な静けさが、彼女の心をそわそわさせていた。

「隠されていたというよりも、放置されていたんだろう。」

悟は無感情に答えるが、心の中では何かしらの不安が芽生え始めていた。ここに来たのは、単なる探検ではない。二人の目的が、何かしらの「重要な発見」を伴っていることを悟は強く感じ取っていた。

洞窟の内部はますます深く、神秘的な光景を広げていった。壁に反射する光、時折聞こえる水滴が石に落ちる音。それが不気味でもあり、どこか神聖にも感じられた。

「待って、あれを見て。」

美澄が声を上げて指さす先には、薄暗く光を放つ石が壁に埋め込まれているのが見えた。その石は青白く輝き、異常なまでに鮮やかな色を放っていた。

悟はその石を見つめ、少し眉をひそめる。「何か不自然だな。」

彼の言葉には警戒心が混じっていた。これはただの光ではない、何か仕掛けが隠されているように感じた。

美澄は一歩踏み出し、その石に触れる前に何か言いかけたが、言葉が喉に詰まった。その瞬間、洞窟の奥から低い音が響いた。それはまるで大地がうなりを上げているかのような、重々しい音だった。

「これは…」

悟が一歩前に出て、周囲を警戒しながら息を呑む。何かが動き出したようだった。

その音が止まると、洞窟の中が一瞬、死んだように静まり返った。美澄は恐る恐るその石に手を伸ばすが、悟はそれを止めた。

「待て。触れてみるのは危険だ。」

その言葉が響いた瞬間、石から一条の光が発せられ、洞窟全体が一瞬で明るく照らされた。

驚きと共に、二人の前に現れたのは、複雑な模様が浮かび上がった壁だった。その壁には、異様な文字が刻まれており、まるで時間を遡るような映像が幻のように浮かび上がっていた。

美澄は息を呑みながらその光景を見つめ、悟も目を見開いた。この光景は、ただの遺物ではない。何か意味がある。そして、その意味が彼らを試すものだと、悟は直感的に感じ取っていた。

「どうする、悟?」

美澄が問いかける。その目には、好奇心と恐れが入り混じった色が浮かんでいる。

悟はしばらく黙ってその光景を見つめていた。彼の理性が、何かしらの罠が仕掛けられていることを警告していた。しかし、同時に、この状況を避けることはできないとも感じていた。

「進むしかない。」

悟の答えは静かで決意に満ちていた。どこかで感じた不安と恐怖が、彼の中で一つの確信に変わっていくのがわかった。これは、ただの偶然ではない。二人にとって、これこそが本当の試練であり、決断の時が来たのだ。

二人は再びその光の先に向かって進み始めた。

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