第2話

「最っっ、悪」

私はとにかく、やけ食いしていた。

ただし任務を仰せつかったので、歩きながらだが。

結局あの後、どうなったかというと。

アルファレヒト国王陛下のご説得も虚しく、あのクソジジイの意見が採用されてしまったのだ。

つまり、あの厄介者の「第十一期勇者」の召集、それが私の目下の任務となったわけだ。

私は今、自分に対する過小評価及び、それを敬愛する陛下の前で堂々とやられてしまったことに対する怒りで、ぶっちゃけていえば胸糞の心境だ。

目を怒らせて大声で愚痴をこぼしているせいか、王都の民たちは私を避けるようにして道を譲る。

気高き特殊魔法技官ともあろうものが、なんたる醜態か。

あのジジイ、辺境の地にでも埋めてやろうか。

「ちょ……、ちょっと、お待ちくださーい!」

「遅いわよ、レイネー!深夜とはいえ、緊急を要します!」

「それは分かってますけどー……」


後ろから慌ただしくついてくるのは、私の秘書、レイネー・ショートストン。

背が低いため、資料の束を抱えていると、いつものことながら顔しか見えない。

「レイネー、いつも言っていると思うけど、そんなに資料が必要なの?」

「はい!この世界は、情報に満ちていますので!」

「あなた、資料の読み過ぎでメガネになったのよね?今、視力は大丈夫なの?」

「はい!この間の検査で、両目ともに視力が0.05を切ったと言われました!」

「それ、全然大丈夫じゃないじゃない……」

毎度のことながら、仕事熱心過ぎると言うべきか、趣味に走りすぎて自滅していると言うべきか。

まあ、彼女のおかげで助かったことは一度や二度ではないが。

「仕事はほどほどになさい。両目ともに視力が0.02を切ったら、解雇します」

「え!?それ、どういう基準!?」

さて、今はそれよりも。

「レイネー。第十一期勇者は、この王都にいるということで、間違いないのよね?」

「はい、間違いありません。私のデータ解析にかかれば、王国内の誰がどこにいるか、秒単位で解明が可能です」

「便利なのか恐ろしいのか、よく分からないけれど。それで、奴が今どこにいるか、分かるかしら?」

「それがですね、シャーロット様。偶然というべきか、目の前の酒場にいるんです!」

「げっ」

「え?何でちょっと嫌そうなんですか?」

「いいえ、別に。何でもありません」

目の前の酒場。

私は汚物を見るような目で、この建築物を眺めていた。

もう何年も前から不快な、この場所。

なぜなら、ここに来るのは、魔法使いくずれ、ろくに戦場に出たこともないくせに謎の自信を発動してイキがっている自称戦士(?)、酒を飲み比べて仲良く路上にゲロを吐く汚らしい遊び人、などなど。

いずれもこの神聖なる王都には相応しくない、下等な連中だ。

こんな酒場は、百害あって一利なし。

早く潰れることを、心から祈るばかりだ。


ドカアアアン!!!

爆音が鳴ったかと思う間もなく、私は目の前の光景にただただ衝撃を受けるばかりだった。

なぜなら、散々に嫌っていたこの酒場が、祈って間もなく爆発したからだ。

「きゃーーっ!!!」

当然のことながら、国民たちの悲鳴が響き渡る。

しかし私は、微動だにしなかった。

「あわわ……、何やってるんですか、シャーロット様。目の前が、目の前が……」

「そうね」

「いえ、『そうね』ではなく……」

「……」

「あれ……?なんか、嬉しそう……」

私はただ、この景色に見惚れてしまっていた。













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