葛藤
「じゃあまた来週」
「おう、またな! あと、今日はちゃんと休めよ寝不足」
「わかってるって」
道路の脇には所々に雪の山が見られ、そのそばには誰かが雪かきをしたような跡が残っている。前を歩くカップルはマフラーやニット帽を身に付けながら、楽しそうにおしゃべりをしている。
これからバイトに向かわなければならない。そう考えるたびに、胸が締め付けられる。昨日のことを忘れようとすればするほど、今日も同じ過ちを繰り返すのではないかと心配になる。それに、今日はなんだか頭が痛い。こういう日は大体ミスを連発する。そしたらまた、お客さんから冷たい目で見られるんだろうな……。
誠の脳内に不安の根がどんどん張り巡らされていく。降り積もった雪が、徐々に誠の体を沈めていく。一歩進むごとに深く、そしてまたさらに深く。
……いっそのこと、辞めてしまえば楽になれるのではないか。誠の脳内に甘い
けれど同時に、ここで引いてしまったらもう戻れないような気もする。なんとなく、そんな感じがするのだ。たしかに、後ろには
寒さか、それとも怯えか、震える右腕を左手でギュッと握りしめる。顔をあげると、すでに
まだお昼時前ということもあり、ホームにはそこまで人がいないようだ。線路沿いを歩いていき、誠は一番人数の少ない乗車口の列に並んだ。キノシタドラッグはここから2駅分離れており、電車で大体5分くらいだ。短い休憩時間ではあるが、このうちに少しでも気持ちの方を落ち着かせたい。息を大きく吸い、ゆっくりと深呼吸をする。大丈夫、今日もきっと乗り越えられる。自分の体に冷静さが戻ってくるのを感じる。
「あれ? 誠くんじゃない」
突然の声に不意打ちを食らい、誠は体をびくつかせた。後ろを振り返ると、そこには何度もお世話になった先輩である
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