(第6話)

「体育の時間、外ばっかり見てたね」

「そんなことないよ」

 昼休み、早希ちゃんにからかわれながら、なんとかお弁当を食べ切った。午後の授業中も天使くんの姿が視界にちらちら入っていて、心の落ち着く暇がなかった。

 放課後になると、あたしは急いで校門を出た。早く家に帰って休みたい。

 電車に乗ってほっと一息ついたとたん、驚いた。

「ひっ!」

 隣の車両に乗っている友野奏介を見つけてしまった。しかも天使くんがガラス戸に張り付いてこっちを見てる。

(うそでしょ)

 同じ町に住んでいるんだから同じ電車に乗っているのは不思議じゃない。だけど今日は天使くん付きだから怖くて逃げてきたつもりだったのに。離れた車両に移りたいけど一両目に乗っちゃった。奏介たちが乗っている二両目にしか行けない。あと三十分この状態?次の駅で一旦降りて別の電車に乗り換える?

(何も見えてない何も見えてない何も)

 あたしは天使くんが見えないようにうつむいて心の中で唱え続ける。

「君、どこか具合が悪いのかなあ?」

「へっ?」

 いつのまにか隣に座っていた男の人があたしの顔をのぞき込んでいる。あたしが乗り物酔いをしているように見えたのかな。

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