(第6話)
「体育の時間、外ばっかり見てたね」
「そんなことないよ」
昼休み、早希ちゃんにからかわれながら、なんとかお弁当を食べ切った。午後の授業中も天使くんの姿が視界にちらちら入っていて、心の落ち着く暇がなかった。
放課後になると、あたしは急いで校門を出た。早く家に帰って休みたい。
電車に乗ってほっと一息ついたとたん、驚いた。
「ひっ!」
隣の車両に乗っている友野奏介を見つけてしまった。しかも天使くんがガラス戸に張り付いてこっちを見てる。
(うそでしょ)
同じ町に住んでいるんだから同じ電車に乗っているのは不思議じゃない。だけど今日は天使くん付きだから怖くて逃げてきたつもりだったのに。離れた車両に移りたいけど一両目に乗っちゃった。奏介たちが乗っている二両目にしか行けない。あと三十分この状態?次の駅で一旦降りて別の電車に乗り換える?
(何も見えてない何も見えてない何も)
あたしは天使くんが見えないようにうつむいて心の中で唱え続ける。
「君、どこか具合が悪いのかなあ?」
「へっ?」
いつのまにか隣に座っていた男の人があたしの顔をのぞき込んでいる。あたしが乗り物酔いをしているように見えたのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます