13 死を思う。(きみを思い出す)
死を思う。(きみを思い出す)
生きているものには必ずいつかは死が訪れる。
そんなファニーファニーの言葉をぼくは思い出した。
君が死を迎えるときは、必ずぼくがそばにいてあげるからね。
そんな言葉を思い出した。
ぼくはとても怒った顔をしながら、ファニーファニーをいつのまにか、見ていた。
「ふふ。君はあいかわらず真面目だね。それに、とっても優しい。まるで小さな子供が、そのまま大きくなったみたいだね」とにっこりと笑いながらファニーファニーは言った。
「ぼくの命があれば、たとえば、君が本当に流行りの伝染病になったとしても、その命を救うことができるかもしれない。もしかしたら、君自身ではなくても、君の大切な人の命を救うことができるかもしれないよ」とファニーファニーは言った。
「ぼくの小さなひとつの命で、本当にたくさんの数えきれないくらいの、それこそ夜空に輝く星の数くらいの人間の命を救うことができるかもしれない。『命の糸』が切れることはなくて、たくさんの命をつないで行くことができるかもしれない。なによりも、ぼくは人間じゃない。ぼくは白い月兎なんだよ。人間とは違う種族の命なんだ。人間である君が、ぼくを殺すことに、それほど、悩んだり、迷ったりする意味は、あんまりないと思うけどな」と古い民族の仮面を指で触りながら、ファニーファニーは言った。
「悩んだり、迷ったりするにきまってるよ。……、だって、『ぼくたちは友達じゃないか』」とぽろぽろと泣きながら、ぼくはいった。(なんだか、怒っていることもばからしく思えてきたんだ。ぼくの目の前に『本当の大ばか』がいるから)
そんな泣いているぼくをみて、ファニーファニーは少し戸惑ったあとで、小さな声で「ごめん」と古い民族のお面でその綺麗な顔を隠しながら言った。(それから、ぼくの顔を見るために、ちょこっとだけ、仮面をずらして、片方の目でぼくを見つめた。まるでお母さんに怒られた小さな、小さな子供みたいに)
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