第4話 画策

 母親の計画とは・・・・・・

 王との営みの後、どうでもいい世間話でさり気なく聞いていた城の「抜け道」の件を、東洋人に教えたのです。そして、国の宝を盗んでくるようにと指示しました。そしてその盗み出した宝はお互いに折半でいいとして、東洋人と裏で手を組みます。


 小人の東洋人は自国で何をしてきたのかは不明でしたが、とにかく御用から免れるだけでなく良い儲け話を頂いたと大喜び。腹の中では盗んだ物を全て提示しなければこの女にもバレやしないと企てて、大半を自分の物にすればいいと思いその案を快諾します。


 母親にとっては、城は戦の為に作られた建物。攻め入られた時のための抜け道、抜け穴は必ずあることは知っていて、王に聞いた話も真実かどうかすら定かではない。一先ずはこの浅ましい東洋人を利用し、王の抜け道の話が正しいかどうかを確かめるのが目的でした。


 城というのは定期的に「洗浄」が必要で、そこに住む一族も別荘や別の城へと引っ越しを年に何度も行います。床に敷き詰められた藁の交換、各部屋に溜められた排泄物やその辺に用された物といった「洗浄」をしないと、ネズミが大量に繁殖してしまう。

 侵入にバレたとしても、そういった掃除人や病死した死体の運び屋に紛れるようにすれば問題が無いと踏んでいたのです。


 そうして何度か東洋人は盗みを成功させていきます。


 最初は銀製の食器類や小さなオブジェ。それが段々と宝石や真珠といった高価な物へと価値が上がって行き、二人はウハウハ。


 そこで母親は抜け道が正しいことが十分に判明し、生活に余裕も生まれてきたので今度は自分が城へと侵入することに決めました。


 城の女中、メイドに扮して王に会いに行ったのです。


 大きなお城では中で働くメイドや料理人、掃除夫などは百人を裕に超えて召し抱えている場合もあり、全体を把握している妃とその周辺、家政婦長とその侍女に気を付けていれば、見つかれば即刻「処刑」というリスクは高いが、紛れて侵入することは安易なものである。地方領主の元での経験もあり行動、所作にて違和感は一切無く、何日か掛けて城へと侵入し王とすれ違う場面を伺いました。


 そして念願のその日が訪れます。


 大広間の清掃をしている女中勢に紛れていると、王がその広間へとやってきました。城の中に居る、特に王やその親族の男性がやってくると女中は壁を向き顔を合わせないのが規則です。みんな方々に壁を見つめている最中、母親はワザと持っている箒を王が通るタイミングを見計らい倒して、直ぐ様に拾い上げるフリをし顔を見上げて

「も、申し訳ございません」

 とはっきりと目を見て言いました。


「気にするな」


 王は寛大な風に言いましたが、あんなにも愛し合った母親の顔は覚えていませんでした。はっきりと、お互いに目が合い顔を突き合わせたのにです。


 母親は色んな感情を抱きつつ、最終的には怒りと恨み、憎しみへと、自制心を保つかのように自分を誤魔化していきました。

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