マルチバース俺
雛形 絢尊
第1話
もうすぐ住む街だ。どれほど走らせてきただろうか。
少し腰が痛む。この体勢のまま、
夜道を直走る。そんなことを考えていると
無性に喉が渇いてくる。
潤いを求め、少し先を見た。
しかしながらまだ、自動販売機、
コンビニエンスストアも見当たらない。
秋の紅葉が朽ち、冬の閑散とした雰囲気を
醸し出すその木々を掻き分け、道路を真っ直ぐ。
その思いのせいか、アクセルを深く、
深く踏み込んだ。
針を指す位置が、速さを物語る。
公衆トイレであろうか、
その手前にあるのは自動販売機であろうか。
よし、よしよし。スピードを緩める。
ゆっくりとその路肩に車を停め、
自動販売機の前に立つ。
眩しいほどの光の眺めを凝らすと、
なかなか目のつかない。
流通していない種類の飲み物が
多く揃っている。そうなると少し悩む。
2秒ほど悩んだ末に、
スポーツドリンクを選んだ。
落下する音と共に、身体を低くする。
もう少しで着くはずだが、
念のため用を足しておこう。
自分の吐息が白く吐き出され、
小さな公衆便所に入り込んだ。
ズボンのチャックを悴む手でおろし、
湯気を排出する。幾分かそれを出した後、
手を洗うため手洗い場へいく。
やけに冷たい水に驚き声を上げると、
咄嗟に目の前にある鏡を目にした。
垢がついており、枯葉が蜘蛛の巣にかかる。
ニット帽をだらしなく被り、欠伸を拵えた。
その直後、右上部に皹が
入っていることに気がつき、
それを見た。
まるで蜘蛛の巣のように亀裂が入っている。
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