魔王軍の四天王に転生したら大陸奪還を命じられたのだが

@LEOLEONI

序章~転生~

俺の名前は佐藤海斗サトウカイト。どこにでもいる平凡なサラリーマンである。


年齢は三十五歳、独身、彼女もいない。恋愛、結婚には興味がなく、アニメ、ラノベ、ゲームが趣味。少しだけオタクである。


勤めている会社はブラックではないが、ホワイトかと言われるとそこまででもない。


多少面倒な事はあるものの、毎日夜中まで残業してある日過労死してしまい、気が付いたら異世界転生していた・・・なんて事はないのである。


とりあえず自分の仕事をこなし、上司の機嫌を取っていれば日々は平和に過ぎていく。


新人の頃はやけに意識が高く、「こうしたら会社はもっと良くなる、こうしたら働きやすくなる」などと上層部に提案していたが、今はその熱量は無い。


いかに日々の仕事を淡々とこなし、休日を楽しむかが生き甲斐となっているのである。


そんな俺も入社して十年以上経つ。なんだかんだで中間管理職の身だ。


「中間管理職」というワードを聞くと面倒くさそうなイメージだが、まさにその通りである。


よくあるのは「上司からのナンセンスな命令」、それに対する「部下から上司への愚痴」のサンドイッチである。


「佐藤君、君たちのチームのこの提案も良いと思うんだけど、今回は私の考えたこちらの案にしてみないかい?」


また始まったか。これがこの会社の名物、使えない上司のクソ代替案だ。


俺達のチームの出した案で十分問題ない筈なのになぜかいちいち首を突っ込んで周りをかき乱す。


しかし、ここでいろいろ意見すると面倒になるのでいつも言う通りにするといった感じだ。


その結果、


「そうですねー、そうですよねぇ、了解です。部長の案に変更させていただきます!」


とまあこんな感じになり、その後、


「佐藤先輩、なんなんすか!部長のこの代替案は?最初の提案で全然良くないですか!?」


とこんな結末が待っているのである。


ここで中間管理職の俺は必死に部下をなだめて、


「そうだよね、俺もそう思う。でもな、社会人には理不尽に耐えるというスキルも大切なのだよ。特にこの会社においてはね。次に同じような事があったらこっちの提案で行けるように部長にも強めに言ってみるからさ。」


「わかりましたよぉ。佐藤先輩がそう言うなら今回はこの代替案にしましょう。」


「ありがとう、聞き分けが良くて助かるよ!今度お昼ご飯奢るからさ!」


「絶対ですよ!お願いしますね!!」


といった感じに落ち着くのがお決まりのパターンである。


とまぁ、今週も面倒な事があったが無事に終わりそうだ。


明日は休みで今日は早く帰れそうだし、本屋にでも寄ってラノベを漁って帰るか。


俺の週末の過ごし方の大体は家でゲーム、アニメ、ラノベが日課である。


仕事が予定通りに終わり、いつもの本屋に寄ってみる。ここの本屋は駅から近く、俺の行きつけである。店内は広く、たくさんの本がずらりと並んでいる。


電子書籍の時代とはいえ、まだまだ賑わっているようだ。電子書籍の利便性は素晴らしいが、俺は紙という媒体が好きなのである。


電子書籍は少し目がちかちかするし、なんとなく紙の方が本の内容が頭に入ってきやすい。まあ目がちかちかするのは老化現象なのだろうけど。


そんな事を思いながらいつものラノベコーナーに向かう。いろいろな新作ラノベが置かれており、俺は目を輝かせながら一通りのラインナップを確認する。


ふと、なぜだろう。目に留まる一冊の本があった。


タイトルは「魔王軍の四天王に転生したら大陸奪還を命じられたのだが」と書いてある。表紙には魔王、魔王の左右には二名の側近、そして四天王らしきキャラクターが描かれている。


なんとも言えないイラストである。


この中二病みたいなタイトルに惹かれた俺はちょっと立ち読みしてみる事にした。


そしてその本を開いた瞬間、本の中から突然眩い光が立ち込めてきた。


「うわぁー、な、なんだー!」


次の瞬間、俺は光に包み込まれてしまった。


そして気が付くと俺は見覚えのない場所に飛ばされ、その場に跪いていた。


その時、


「面を上げよ!」


と正面から声が聞こえてきた!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る