『薔薇色のソレイユ』運命を継ぐ魔法少女は記憶を紡ぐ
ソコニ
第1話『目覚める薔薇』
祖母の庭には、いつも薔薇が咲いていた。
朝の陽射しに輝く真紅の薔薇、夕暮れに淡く光を放つ純白の花びら。小さな庭は、まるで虹を地上に落としたかのように、様々な色の薔薇で彩られている。
「花梨、そろそろ帰る時間じゃない?」
ぼんやりと庭を見つめていた私——桜庭花梨の耳に、祖母の千代さんの声が届いた。制服の袖を軽く揺らす春の風が、どこかいつもと違う空気を運んでくる。
「ねえ、おばあちゃん」私は思わず声をあげた。「あの青い薔薇、本物?」
庭の隅に、不思議な色の薔薇が一輪だけ咲いていた。深い青色をした花びらは、まるで夜空か深い海のよう。
「よく気がついたわね」
祖母の表情が、急に真剣になった。
「花梨、あなたにはもう話しておかなければならないことがあるの」
夕暮れの庭で、祖母は静かに語り始めた。私たち桜庭家に伝わる「薔薇の色」の力について。そして、その力を狙う者たちの存在について。
「私たちの血には、特別な力が宿っているの。それは『薔薇の色』と呼ばれる力。感情を色に変え、その色を通じて世界に働きかける力よ」
信じられない話だった。でも、祖母の真剣な表情に、これが決して作り話ではないことを悟った。
「花梨、あなたももうすぐ目覚めるわ。その時のために——」
その時だった。
突然の轟音と共に、庭の薔薇が激しく揺れた。見知らぬ黒い影が、塀を越えて侵入してきたのだ。
「千代様、『白薔薇』の力をお渡しください」
影は低く唸るような声で告げた。祖母は私の前に立ち、凛とした態度で対峙する。
「花梨、逃げなさい!」
「でも、おばあちゃん!」
「大丈夫、私には『白薔薇』の力がある。ただ、もし私に何かあったら——」
祖母の言葉は、激しい衝突音にかき消された。白い光が庭を包み、目が眩むような閃光が走る。その瞬間、私の胸の奥で、何かが目覚めた。
鮮やかな真紅の光が、私の体から溢れ出す。それは、まるで薔薇の花びらのように、空を舞っていた。光は次第に私の周りを包み、制服が光に包まれて変化していく。
「これが、私の『薔薇の色』——?」
そして私は、もう一つの光に気づいた。庭の隅で、静かに輝く青い光。青い薔薇の前に佇む、一人の少女の姿が、夕暮れの中にくっきりと浮かび上がっていた。
少女は私と同じ制服を着ていた。しかし、その姿は青い光に包まれ、どこか神秘的な雰囲気を放っている。
「協力して」少女は短く言った。「あなたの『真紅』と、私の『青』で、きっと——」
彼女の言葉が終わらないうちに、新たな衝撃が庭を襲った。戦いの幕開けだった。
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