第3話 モンスターの力を引き出す方法

魔力炉の修復を終えた翌朝、迷宮内の空気は少しだけ澄んでいた気がする。青白い光を放つ魔力炉が規則的に振動し、ほんのりと暖かさを感じさせている。このエネルギーのおかげでダンジョンの崩壊はしばらく食い止められるだろう。


だが、俺の頭には次の課題が浮かんでいた。


「この迷宮、守りがザルすぎる……」


今はゴブリン一匹しか戦力がいないし、仮に侵略者が来たら一瞬で終わる。それを防ぐには、もっとモンスターを増やすか、今いるゴブリンを強化するしかない。


「お前、戦えるのか?」


俺がゴブリンに声をかけると、ゴブリンはちょっとだけ胸を張りながら「ギィ」と鳴いた。小さい体で精一杯の意思表示をしているが、どう見ても戦闘力は低そうだ。


そのとき、また頭の中にあのガイドの声が響いた。


《モンスターの育成について――ダンジョンのモンスターは、エネルギーと資源を使用して強化または進化させることが可能です》


「進化って、ポケモンみたいな感じか?」


俺は半信半疑でゴブリンを観察する。すると、ガイドの指示に従って手をかざすと、ゴブリンの上に淡い青白い光の円が浮かび上がった。その中には「ステータス」と書かれた項目が表示されている。


《ゴブリン(レベル1)

HP:10

攻撃力:5

防御力:3

特性:忠誠心(指示に従順)》


「しょっぺえ……」


見た目通り、かなり貧弱だ。これで戦えと言われても無理がある。


《ゴブリンを強化するには、魔力エネルギー10と木材5が必要です》


「また資源かよ。どんだけ集めさせる気だよ……」


文句を言いつつも、強化しなければこの先どうにもならないのは明らかだ。俺はゴブリンと一緒に迷宮内を探索し、必要な資源を集めることにした。


迷宮内を歩き回ると、意外にも使えそうな資源はまだ残っていた。魔力炉が復活したおかげで、迷宮全体に微弱ながらエネルギーが行き渡り、瓦礫の中に埋もれていた魔力結晶や木材が見つかりやすくなったようだ。


「よし、これで足りるな」


俺は集めた資源を確認し、ゴブリンの強化を試みることにした。魔力炉のそばにゴブリンを立たせ、必要な資源を炉に投入する。すると、ゴブリンの体が淡い光に包まれ始めた。


「なんかすごいな……本当に進化とかするのか?」


俺が見守る中、光が次第に強くなり、ゴブリンの小さな体がわずかに大きくなる。皮膚の色も少しだけ濃くなり、筋肉がついたように見える。


《ゴブリン(レベル2)

HP:20

攻撃力:10

防御力:6

特性:忠誠心(指示に従順)》


「おお、ステータスが倍になってる!」


俺は感動しながらゴブリンを見つめた。ゴブリンも自分の変化に気づいたのか、拳を握りしめて「ギィ!」と鳴く。なんだか誇らしげだ。


「よし、これなら少しは戦えるかもな」


ゴブリンの強化が終わったところで、俺は次の行動を考え始めた。まず、守備力を上げるための罠を設置するか、あるいは新しいモンスターを召喚するかだ。だが、今の俺にそれを選ぶ余裕はない。


「とりあえず、このゴブリンを使って周囲を守らせるしかないか……」


そんなことを考えていると、迷宮の入り口付近から異様な音が聞こえた。


ガチャ、ガチャ、と金属が擦れるような音。そして、鈍い足音が徐々に近づいてくる。


「まさか、侵略者……か?」


俺はゴブリンを引き連れて、音のする方へ急いだ。


そこには一体のスケルトンがいた。錆びた剣を握り、ボロボロの鎧をまとったその姿は、まさに定番の雑魚モンスターといったところだ。だが、今の俺にとっては十分脅威だ。


「おい、ゴブリン! お前の力を見せてみろ!」


ゴブリンは俺の指示を受け、力強く前に出る。そして、スケルトンに向かって突進した。


「ギィーッ!」


ゴブリンのパンチがスケルトンの胴体に直撃する。鈍い音を立ててスケルトンが後退し、その隙にゴブリンがさらに追撃を加える。スケルトンは防御もままならず、ついに崩れ落ちた。


「やった……!」


俺は拳を握りしめ、初めての勝利に歓声を上げた。ゴブリンも疲れた様子ながら誇らしげに立ち上がっている。


「これで分かった。モンスターを強化して、戦力を増やせば何とかなる!」


こうして、俺たちは迷宮を守るための第一歩を踏み出した。スケルトンとの戦いを終えた俺は、新たなモンスターを増やすための計画を練り始めた。

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