幹部に休みはない!〜自分が作ったゲームを全力で攻略しようと思います〜

魔法をかけられる

序章

プロローグ

 俺の名前は鷹宮健二たかみや けんじ。29歳の男で賢者目前のゲーマーであり経営者だ。彼女はいないし賢者になりかけていることに今更ながら焦っていたのだが、今では領主の息子として日々研鑽を重ねている。


 ー2050年日本ー

 

 我が社は2040年にあるゲーム機を発売する。

 それこそが今俺がプレイしているゲーム機PK15だ。このPK(Palette Kingdom)15で遊べるのは1つのMMORPGのみ。だが、このゲームが発売されて僅か1年の間にPK14の10倍の売り上げを記録した。

 その影響で今ではうちもトップ企業の仲間入りだ。

 

 このゲームが売れたのには理由がある。

 それは他のゲームとは比較にならない自由度だ。

 その自由度の高さからこのゲームには寿命が無い。

 買い物や食事までできてしまうのだから。当然、デートだって可能だ。

 

 そして、やはり一番の魅力はキャラメイクにある。キャラメイクといっても普通の物とは全く違う。

 どんな生物にでもなれて、生物の種類で持っている固有特性まで違うのだ。


 俺は、このゲームのテストプレイからずっとドッペルゲンガーを使っている。ドッペルゲンガー(亜種)はゲームの中で性能だけならダントツのトップ。

 だが、ドッペルゲンガー(亜種)は使用率が極めて少ない。

 なぜなら、求められるプレイスキルが他の種族とは別格なのが理由だろう。

 通常種のドッペルゲンガーが使うのは即死魔法なのだが、ドッペルゲンガー(亜種)は、固有特性で変身が可能なのだ。しかし、変身の際に体の動かし方が全く違う生物を選んでしまった場合、全く動かせないことがよくある。それは、このゲームは全てをリアルに忠実に再現しているのが原因だ。

 だから、生物の体の動かし方も設定されている。

 猿やオラウータンなど比較的人に近い生物に変身するなら普通の人でも動かせるのだが、もちろんそんな生物では戦えない。

 相手は全員空想の中の化物だ。そんな相手と真面目に戦ったところで勝てるはずがない。

 最低レベルのゴブリンでもゴリラと同等程度の力を持っていてスピードではゴリラをはるかに超えてくる。

 だから、基本このキャラはネタキャラ扱いされることが多い。

 でも、俺はこのキャラの案を見た瞬間無限の可能性を感じた。変身した生物を扱えるようになれば無限に戦略が立てられると考えたからだ。

 だが、ドッペルゲンガーの性能は、人の脳で扱うことは不可能だった。ほんとなんてキャラを作ってしまったのだろう・・・

 一応全ての生物の動かし方は理解したが実行はずっとできていない。誰か一人ぐらい使える人物でもいればいいのだが・・・

 ふと、昔の記憶を思い出していると、電話に着信音がなる。

  

 放置していたことを思い出し、急いで来ていた電話を開く。


 「健二ーー!私たち、家の前に着いたよー!。」

 

 この大声で俺の名前を呼ぶ野郎はゲーム友達であり幼馴染でもある西宮だ。

 現役の人気読モをしている。

 長いサラサラの髪にこっちが引き込まれそうになるブラックホールのような黒色の瞳。

 幼馴染だがこいつを夜のお供に選んだことは無いとは言わない。


 「直美!あんたもなんか言ってやれ!」

 「え?わ、私?」

 

 今、西宮の急なバトンパスに混乱しているのが直美、こいつは幼馴染ではないが3年前に知り合ったゲーム友達だ。

 直美の垂れ目には独特の良さがある。

 直美も美人なのだが、それよりも母性溢れる肉体にいつも目を釘付けにされる。


 「こ、来ないと怒るよー?」

 「なんじゃそりゃ・・・」


 西宮は呆れているが、直美なりに頑張ったのだろう。このまま行くのを遅らせても面白そうだが、これ以上待たせると何をされるか分かったもんじゃない。

 光の速度で下に降りると二人の天女が待っていた。


 「遅いよ!!今日の予定は健二がどうしてもって言うから優先して来たのに。」

 

 決して自分で誘ったのに忘れていた訳ではない。

 話を逸らすために俺たちは急ぎ足でゲームショップに向かった。


 「うわー。今年も並んでんなー!」

 「毎年見てるけど人多すぎて気持ち悪くなる。」


 直美は嫌そうな表情をしながら不満を漏らす。

 こいつの人見知りはどうにかならないものか。


 「まあ、そう言うなよ。後で飯奢るからさ。」

 「そ、そう言うことなら。ま、まあ?我慢してやらないこともないけど。」

 「ほーんと、直美は食べ物に弱いね〜」

 

 そう言いながら直美の腹を木嶋が摘む。

 おいおい、仲良くしてくれよ。直美がとりあえずは我慢してくれるそうだし早くゲーム機を買って食事をしにに行こう。


 「そんな食べてばかりじゃ太るよ〜?」

 「うるさいなぁ。あんな奴ほっといて先行こ?」


 直美はおもむろに手を出す。

 歩くのが疲れたのだろうか?

 俺は直美の手をしっかりと握り手を引きながら歩き出す。直美の顔が少し茜色に染まった気がした。

 それなら早くゲームを買ってどこかの店で休憩させよう。


 「しんどいのか?」

 「別に・・・」

 

 直美はそっぽを向きながら答える。

 そうして歩いていくうちに列の最後尾に着いたのだが。

 

 「ちょ、ちょっと。抜かさないでよ。」

 「「うるせえぞ!さっさとどけ!ぶっ殺されてえのか!!」」

   

 どこか後ろの方で何やら揉めているようだ。ここで揉めるのはやめていただきたい。


 「あれ?直美は?」


 西宮が尋ねる。そういえばいない何処に言っているのだろうか。

 

 「なんだ?おめえ?」

 「じゅ、順番は守らないとダメ!」

 

 直美の声が聞こえた方に向かうと・・・

 体が大きく鬼が現世に現れたような人相の悪い男と直美が口論になっていた。

 ここから逃げろ!と俺の全細胞が危険信号を出している。

 俺の勘はよく当たる。

 参ったな・・・直美は普段大人しいがスイッチが入ってしまうとどんな相手にもはっきりと物を言ってしまう。


 「まあまあ、彼女にも悪気があって言ったわけではないと思うので」


 そう言いながらスッと2人の間に手を入れる。

 これはまずいな…相手の身長が思ったよりも高い。

 こう言う時は、俺たちが止めてやらないと。

 友達なのだから。


 「「他人は引っ込んでろ!」」

 

 大きな声で怒鳴られた後。

 ドン!っと巨漢に俺は軽く押され1メートルぐらい吹き飛ぶ。


 (こいつ、なんて馬鹿力だ?)


 「健二、大丈夫?」


 西宮はそう言って俺に手を差し出す。そして、その後ろで直美もとても心配そうに俺を見ている。

 これ以上心配かけるわけにもいかないな。

 次は少し強めに言ってやろう。

 まあ、流石に殺されはしないだろう。立ち上がりもう一度二人の間に入る。

 

 「お店の邪魔になっているので、早く後ろに並んでください。」

 「口の聞き方には考えろよ?坊主。

 ほら早く後ろに並べよ!」

 「フッ!」


 鼻で笑ってやった!すると、男の顔がどんどん赤くなっていく。巨漢はギュッと拳を握りしめる。

 流石に早くは言い過ぎだったか?怖いからあやm

 ドゴ!!

 あれ?なんで今俺こんなに高くにいるんだ?

 木嶋と直美がびっくりした顔で俺を見ている。


 [【命を賭けた偽善】《ラスト・イポクリジア》を達成しました。]

 [スキルを獲得しました。]


 なんだ?急に頭の中に直接話しかけられた気がしたんだが。とても気分が悪い。

 

 [貴方は人生で希少な職業アチーブメントを全て達成しました。新たな職業が解放されます。]


 今度ははっきりと聞こえる。

 可愛らしい声だな・・・

 こういうのは機械のような声だと思っていたが。それにしても可愛いな、まるで天使!いや、女神のようだ。


 「弱え癖に出しゃばるな。興醒めだな、逆にストレス貯まってしまった。」


 巨漢はそういうと何処かへ行ってしまった。白いシャツから薄っすらと背中の刺青が見えた。

 俺…あんなやつに説教してたのか。


 「け、健二!頭から血が出てるよ?」


 愕然としている俺の心配をしてくれる直美。

 直美の小さな手が俺の顔にそっと触れる。

 告白しよう。そう俺は決心する。


 「おい、健二!大丈夫なの!?」

 「死んじゃうなんて許さないから」


 西宮・・・いつもはふざけてる癖にこう言う時は真面目なんだよなぁ・・・

 直美のやつも流石に死ぬって大袈裟だろ。

 俺は顔を横にやると冷たい水のような感触が肌に伝わる。

 嫌な予感がしながら俺は目を最大限横にやると、さっきまで茶色だったはずの床が真っ赤に染まっていた。確かに、これは流石に死ぬかもしれないな。

 俺には最高の親友のこいつらがいる!

 まだ・・・まだ!死ぬわけにはいかない!


 「私、〇〇のこと・・・

 こんな終わりかたないよ。」


 直美は今にも泣き出しそうな顔を浮かべて俺に言った。

 

 (ん?今こいつなんて言った?)

 

 「に、西宮ぁ。直美のやつ、い・・・今なんて?」

 「健二!まだ意識が!」


 西宮はしどろもどろになりながら俺の耳元で話しだす。


 「その今話すことじゃないかもしれないんだが。」

 「勿体ぶらずに早く言えよ。」

 「その・・・直美のやつ多分・・・。

 私も・・・!」

 

 耳がイカれているのかよく聞こえないが大体の内容は予想がつく。

 まさか現実で百合に遭遇するとは・・・

 そんなことより俺は聞かなければならないことがある。恐る恐る口を開く、返答によっては死んでもおかしくはない、それほど重要なことなのだ!

 

 「ち、ちなみにいつから好きだったんですか?」

 「健二、私たちの仲じゃん!急に敬語なんてやめてよ。」

 

 涙を拭きながら木嶋が話していると少しの間沈黙していた直美が口を開く。


 「いいよ、香織。私が自分で言う。」


 直美、今もしかして、西宮のこと今名前で読んだのか?俺でもまだ読んだことなかったのに!!

 覚悟を決めた顔をして直美が俺の近くに歩いてくる。こんな顔を見たのは初めてだ。

 やっぱりこいつら・・・

 

 「やっぱり、気づいてなかったんだね。

 私、健二たちと出会った3年前のあの日に一目惚れして・・・今まで振られるのが怖くて・・・言えなかった、ごめんなさい。」


 彼女は泣き顔のまま深々と頭を下げた。

 

 (きっと言い出しずらかっただろうに・・・)

 

 ちょっと待てよ?ってことは俺は両思いの二人間に下心を持ちながら割り込み乗車してたってことか!?

 羞恥の念が全身にみなぎってくる…

 知りたくなかった、急に気まずい雰囲気が流れる。

 もうなんか一気に色んなことがあって訳分からん。

 気のせいか俺への視線が急に増えた気がする。俺が二人の邪魔をしていたからだろうか。

 初恋が終わってもうなんかもうゲーム以外思い残すことないかも。他人のために何かしていたら俺にも彼女できたのだろうか?

 まあいい。

 もう考えても仕方のないことなのだから。祝福してやろう。


 「知ってたよ、俺はお前の気持ちを尊重する。」


 言ってしまった・・・

 だが、不思議といい気分だ。

 その後俺は意識だけが残った。


 [達成報酬として2度目の人生が支払われます。]


 いいタイミングでまた天使さんの声が聞こえてきた!さっきよりも声がより一層優しくなった気がする。

 じゃ、さよなら今世!

 ずっとこの真っ暗な空間だと思ったけど、良かった〜。来世ではきっと人助けをしよう!

 

 [!?]

 [ちゅ、注意事項として来世は異世界に行きますが宜しいですか?]


 (どうぞ〜)


 [???????

 も、もしよかったら追加報酬もありますが?]


 (えっ!欲しいです!)

 

 (天使様はなんでこんなに良くしてくれるんだ?別に俺に恩を売っても特になるとは思えないが・・・)


 [好きなスキルを一つ差し上げましょう。]

 

 (じゃあ〇〇できるスキルをお願いします。)

 [{スキル}を獲得しました。]


 答えはもう決まっている。

 俺の後悔。それは、自分の為にしか努力しなかったことだ。

 異世界ではこの力で俺は人を助けて最高のハーレムライフを送ってやる!


 そうして鷹宮健二の意識は途切れた。




 鷹宮健二

 職業:ゲーマー

 種族:人間

  職業アチーブメント達成率“百パーセント”

 スキル: 「偽善君主」「{???}」





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