第13章:人間side
人間側では、魔族の動向に関する情報が密かに集められつつあった。聖教国と帝国の間で協力関係が結ばれ、双方の情報機関が連携して魔族の拠点を特定し、討伐軍の準備を進めていた。しかし、魔族がどれほどの規模で集結しているのか、またその拠点がどこにあるのかは依然として謎に包まれていた。
「我々の探索隊が報告した通り、この地域には魔族の集団が潜んでいます。規模は不明ですが、間違いなく拠点を構えていることは確かです」
帝国の将軍であるアリエンは、厳しい表情で円卓を囲んだ聖教国の代表や他の高官たちに告げる。彼の鋭い眼差しからは、戦場における冷徹な経験が滲み出ていた。
「聖教国としては、最優先で討伐を行うべきだと思います。魔族が大規模な儀式を準備している可能性があり、放置すれば恐ろしい事態を招くかもしれません」
聖教国の司祭長であるエリスは、力強い口調で述べる。彼女の目には確固たる信念が宿っていた。魔族が魔王を復活させようとしているという情報は、彼女にとっても大きな脅威であった。
「その通りだ、エリス司祭長。魔王が復活すれば、この地域の安全は保障されない。聖教国の力を尽くしても、魔王の力に対抗できるかは疑問だ。しかし、我々には“光の剣”がある。討伐軍を編成し、魔族の拠点を一掃するしかない」
アリエン将軍は力強く宣言し、その言葉に周囲は頷いた。
だが、その決定を下す前に、彼らは魔族の動きを把握する必要があった。すでに数百人規模の騎士団や冒険者が集結し、討伐軍として準備を整えている。しかし、問題は時間だ。魔族が儀式を完遂する前に討伐軍が到着できるかどうかが決定的なポイントだった。
「どうする、アリエン将軍?」
エリスが問いかける。アリエンはしばらく沈黙した後、ゆっくりと答える。
「まずは偵察隊を派遣し、魔族の拠点を突き止める。そして、その情報を基に討伐軍を動かす。だが、魔族が本格的に動き出す前に、儀式を中断させるための手を打つ必要がある」
アリエンはその後、慎重に考慮しつつ言葉を続けた。
「魔族が手に入れようとしている“魔王城”への道を切り裂くことが最優先だ。もし儀式が完了すれば、魔王の復活は時間の問題となり、全世界がその影響を受けるだろう」
その言葉に、周囲の者たちはさらに警戒を強めた。
一方、聖教国の教会でも急速に戦略を練るための動きが活発化していた。教会の高位聖職者たちは、魔族の儀式を阻止するために全力を尽くす決意を固め、特に“魔王”に対抗できる聖なる力を持つ聖騎士団を編成する準備を進めていた。
「我々はこの地における魔族の拠点を突き止め、討伐軍を投入する。その間に、可能な限り魔族の儀式を妨害し、魔王復活を阻止するのだ」
聖教国の最高司祭がその場で決定を下し、全軍を動かす準備を整えた。
数日後、偵察隊から重要な情報が届いた。魔族の拠点は深い森の中にあり、さらにその周辺には強力な魔族が徘徊しているという。それに加えて、拠点内では儀式が着々と進行している様子だった。
「時間がない。偵察隊の報告を元に、我々の討伐軍を即座に動かすべきだ」
アリエン将軍は決断を下し、討伐軍の指揮を執ることに決めた。
その頃、魔族側では“魔羊”を尖兵として立てる計画が進行していた。その計画が、果たして人間側にどれほどの影響を与えるのか、まだ誰も知る由もなかった。
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