ツクヨミの心恋語
青柳 翠月
序章
今が、どれだけ辛くても、悲しくても、遠い御伽噺の王子様みたいに、誰かが迎えに来てくれる事を無駄だと、夢現を夢幻を見すぎだと分かっていても、心の何処かで期待しては、絶望に打ちひしがれてを繰り返していた日々。
それなのに、本当に貴方は私を、ずっと夢に見ていた御伽噺の王子様みたいに迎えに来てくれた。
「俺はね、
その人は、呆気にとられ立ち竦んでいる妹ではなく、折檻をされ蹲るように倒れ込んでいる私の前に迷いなく膝を着き、口元に優しい笑みを浮かべ手を差し伸べた。
同じ白銀色だとしても、全く手入れを施していなく薄汚い私の容姿とは真逆の、太陽の光できらきらと光る白銀の髪に、吸い込まれそうな程透き通った翡翠色の瞳。和装が目立つ今の時代、珍しい洋装姿。
差し伸べられたその手に、己の手を乗せると、私を支えながらゆっくりと立たせてくれた彼を改めて見つめる。
「……きれい」
「!……ふふ、貴女の方が俺より綺麗だよ。」
「ち、ちょっと待って! 月読命の姫巫女は、その忌み子じゃなくてこのあたしよ」
私達のやり取りを見ていた蒼依は、はっとしたように、そう弁解する。
それに続くように、両親も蒼依の言葉に、同調して、私を何時ものように蔑み罵倒し、困惑と焦りを織り交ぜた声音で訴えた。
「そ、そうですよ。本来の月詠家の姫巫女である蒼依ではなく、その化け物じみた〝
「先ほどから黙って聞いていれば……彼女の血の繋がった家族とはいえ戯言も大概にして頂きたい」
ガルルルッと、主人である若様を護るように後ろに控えていた四神獣の一匹であり、白菊家の代々当主が使役する白虎が前に出て、若様の怒りに共鳴するように唸り声を上げながら威嚇した。
「ひっ」
「
やっと、救い出せた彼女を庇うように抱きしめながら、腰を抜かし、脅えた目で見つめる元家族に言い放つ。
哀れで滑稽な姿を、冷ややかな目で見つめた後、好きにしていいよ。と、白虎に命ずると、そのまま三人を呑み込もうと、ぐぱ、っと鋭く尖った牙が生えた口を大きく開いた。
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