第2話 大親友のゴドウィン編 ①
突然の一緒に行こう宣言に困惑する俺は、拒絶の一言を出した。
「何言ってんだよ? は?」
「さあ。いくぜ。まずは皆を探しに行こうか」
ゴっちゃんが俺の手を取ろうとした。
だから、俺はそれを払いのける。
「嫌だよ。俺はお前らと別れたんだ。俺は外からお前らの雄姿を見たいって言っただろ。俺は弱いの。皆の足手まといなんだよ。それが嫌なんだよ」
「はぁ? 誰がお前を足手まといだなんて言ったんだよ。そんな奴どこにいんだ。俺が見つけてボコボコにするわ」
「誰も言ってねえよ。お前らがそう思ってるだろ。俺なんてただの盗賊だぞ。職業盗賊。お前らとは格が違う。弱すぎてびっくりするわ。せせこましい役職でめっちゃカッコ悪いんだよ」
「あ?」
ゴっちゃんの目が鋭くなった。
俺の襟首を持って、顔を近づけて睨んできた。
「おい。マジで言ってんのか。あぁ」
「な、なんだよ。そう思ってんじゃないのかよ。役に立たねえ。屑はいらねえってよ。皆で俺を馬鹿にしてたんじゃないのかよ」
「マジでお前。被害妄想にも程があるぞ・・・一人でそんなことを思ってたのかよ」
「ああ。そうだよ。皆との差があるんだからな」
「お前、そんなのが不満だったのかよ。じゃあ、早く言えよな。そんな事ねえんだよ。俺たちはお前を馬鹿にしねえ。これは絶対だ!」
「嘘つけ。いいか。俺はおまけにスキルすらも雑魚なんだぞ。盗むしかない盗賊ってなんだよ。なんで俺には他のスキルがねえんだ? そんなのただの泥棒じゃねえか。役職泥棒だろ。これ!?」
「ふざけんなよ。そんなつまんねことで悩むんじゃねえ。俺たちは、お前のこと………」
ゴっちゃんは、左手で俺を持ち上げて、右手に力を溜め始めた。
拳が眩しいくらいに光りだしていた。
「一つ。目を覚ましてもらうわ。くらえ。ボケ。仙光掌!」
「ぐあっ」
目には見えない光のような速さの拳。
拳が当たった瞬間にしか拳を認識できなかった。
威力が凄すぎて、俺は地面に埋まった。
「うおっ!?」
「おい。ク~ちゃん。もう一つ言うぞ」
「……」
「俺たちはお前の事が大好きなんだぞ。そんなお前を役立たずだなんて思うもんか。絶対。何があっても。俺たち四人はお前の味方だ。それを信じてくれ。頼む」
「……」
ゴっちゃんの声が、信じられないくらいに悲しそうだった。
このもじゃもじゃな髭がなくて、表情さえ分かれば、本当は泣きそうな顔かもしれない。
「だってさ。俺たち、お前と一緒にいたいからこの五年。修行してきたんだぞ」
「……ん?」
意味が分からない。
俺は皆との解散を宣言したのは覚えている。
だけど、一緒にいたいから修行という話を聞いたことがないのだが。
「ああ・・・そういや、皆はどこに行ったんだ。それを聞いておけばよかったな」
地面から首だけ出ている俺の隣にゴっちゃんは、座り始めた。
出来たら俺を地面から出してくれると嬉しいのですけど。
なぜかゴっちゃんは話し始めたのだ。
「俺はさ。仙極谷ってところに行ったんだ」
それ何処だよ。
って言いたかったけど、それよりもまず地面から出して欲しい。
それに話が長くなりそうなので、本当に出来たら早く出して欲しい。
「そこにはさ。仙人がいるのよ。そこら中、仙人だらけで、修行をし放題の場所でさ。いやぁ。地獄だった。マジであそこの修練内容がとにかく酷い。あ、それとさ。女がいなくて地獄だったわ」
ゴっちゃんが、修練内容を教えてくれないので、俺にはそこに女がいないから地獄だったっていう話にしか聞こえなかった。
ナンパモンクのゴっちゃんのイメージは消えていない。
「そんで、五年の修行でさ。俺。モンクから仙人になったのさ」
「マジかよ」
「お! やっと話してくれたか。ク~ちゃん。話してくれねえから、俺の独り言だけになるのかと思ったぜ」
話してくれねえって話じゃねえんだよ。
ひとまずここから出してくれないと声が出しにくいんだわ。
なんだか一音発する度に、お腹あたりが苦しい。
ギュウギュウ詰めの缶詰の中から、お話をお送りしているみたいなんだ。
「れ、レベルっていくつ・・・になった」
マジで声が出ねえ。
さっきのはびっくりしたから声が出ただけだった。
「俺は、今。どんくらいなんだろ。最後に測った時は8か?」
「は、8!?」
今のは声が出た。やっぱり驚くと出るらしい。
俺たちのレベルの上限は10。
1から始まり、10で終わる。
各種パラメータは、各レベルで上限1000。
レベルアップ条件は、その各種パラメータが1000に到達した項目が一つできたらである。
だから、攻撃力が1000になれば、防御力が40でも、速度が50でも、1レベルアップできるみたいな形だ。
それを8まで行くという事は、相当な修練を積まないといけない。
レベルアップしていけば、パラメータの上昇率は低下していくからだ。
「や、やべえな・・・そのレベル・・・・」
「そうか。これ、仙人の里だと、ギリ上位だぞ」
「・・・ま・・・マジかよ」
そこ化け物ばかりがいるじゃないか。
と思った俺はいよいよを持って声が出しにくい。
体の限界が訪れながら話している。
「・・・ちょっと・・・ゴっちゃん」
「なんだ?」
「出してくれね?」
「ああ。地面からか。出て来いよ」
「・・・で・・・出れるか・・・見事に埋まってんだよ」
「出れねえの?」
「これよく見ろよ。俺が出れるわけねえだろ。すっかり埋まってんだよ」
「いや、里じゃ。基本訓練なんだけどな」
どんな訓練じゃい。
と言いたかったけど、いよいよを持って息すらもしにくい。
「こうさ。ふん! ってやれば、土をぶっ壊せるよ」
ゴっちゃんの体から光が出た。
そんな技、仙人にしか出来ない技じゃないんですか?
俺は盗賊なんですけども、と流れるようにツッコミを入れたかったが、出せた言葉は一言だけ。
「・・・で、出来ねえわ・・・」
そしたら、ゴっちゃんは、今日一の驚いた声を出す。
「嘘だろ。なんでだ」
こっちが言いてえよ。むしろ何でお前が出来るんだよ。
とにかくこの五年でゴっちゃんのボケ性能が上がったことは確かだ。
「・・・とりあえず。頼む。頭がいてえ・・・・呼吸がまともに出来てないからかも」
「そうか。わかったよ。ほい」
片手でひょいと俺を持ち上げた。
さっき埋まっていたのが嘘みたいに地上に出て来られた。
「ぐはっ。はぁはぁ。息できたわ。死ぬかと思った」
「またまた。大袈裟だな。ク~ちゃんはさ」
念のために俺は体のチェックをした。
どこかおかしい所はないかと、頭から順に下に触っていく間。
俺は思う。
またまたって何だ?
大袈裟にしたことなんか一度もないのに?
やばい。
俺はこの頭のおかしい親友の考えを読めなくなっていた。
一般常識から外れている考えの持ち主なので、なんだかこの人と会話を続ける自信が無くなって来た。
「それじゃあ、ク~ちゃん。いこうぜ」
「ん?」
「皆に会いに行こう」
「俺は会わないって。俺たちは解散しただろ。そうだろ?」
「うん。したな」
「じゃあいいだろ。俺はいいから。お前らで会えばいいじゃん」
また恥ずかしい思いをしたくない。
情けないけど、俺だけ弱い思いは嫌なんだ。
「でも集合するって決めてた」
「お前らでだろ。俺は関係ない」
「いや、お前を中心にして集まるって決めたからさ」
「だからその約束を俺がしてねえんだわ」
「したぞ」
「なに? してねえよ」
「お前。あの時、俺たちで有名になればいいんだよなっていうさ。俺の問いにな。そうだって言ったんだぞ」
「・・・ん。言ったな」
たしかに最後に言った気がした。
「だから、お前を含めて俺たちで有名になればいいって、あの時皆で約束したんだ。だからお前にも来てもらう」
「へ、屁理屈だぞ。俺がその会話に入ってねえ」
「屁理屈? お前さ。俺たちとの約束を破るのか」
「俺は、それを約束だと思っていない。だから無効だ。そんなのは、約束をしたとは言えん。俺がその話し合いの場にいなかったんだからな」
「ん? でもいいのか。お前。最後に約束はしたんだぞ。お前、変なところが律儀な癖に、俺たちとの約束を守らなくてもいいのかよ」
「・・・・んんんん」
ゴっちゃんは俺の性格を掴んでいる。
俺は、真面目とかそういうのじゃなくて、こだわりが強い性格なのである。
机の上とか引き出しとか整理整頓してないと嫌だし、買い物とかの時に、おつりとかごまかされるのが何よりも許せない。
だから約束をしたのなら、約束を守らないと気が済まないタイプだ。
他人が破るのは、まあいいとしても、自分から約束を破るのは死んでも嫌なタイプなのだ。
自信喪失系陰キャなのにだよ。
自分が難儀な性格だと思っている俺は、今の発言を聞かされたら断れない。
ヘンな意地もあった。
「ほれほれ。いいのか。ク~ちゃん。約束破りになるぞ」
俺の性格をよく知っているから、ゴっちゃんは挑発してきた。
「・・・はぁ。じゃあ、集まるまでは一緒にいようか。お前らと約束してねえけどさ・・・」
「いや、約束してるからよ。皆と会えばわかるぞ。あれは約束だと思ってるからな。ハハハ」
ゴっちゃんが笑っていると、後ろから声が聞こえてきた。
「見つけたぞ。この野郎!」
俺は振り向いた。
「な!?」
「許さんぞ! 貴様」
俺の人生は、なんだかかんだ言って波乱万丈なのだ。
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