第2話 爆進

 摩天楼の外壁は二本の巨大な蔓ジャイアントジャックローズが頂に向かって伸びている。これを伝って登れば登頂出来ると言う算段のもと、二人は外壁を登り始めたのだ。


「はああああ⋯⋯」

「お互い苦労しますわね?」

「あ、ああ、本当にそうだな?」

「ねえ、前衛が一人抜けて困っているのだけれど」

「そうか、こちらもちょうど困っていたんだが」

「では、ここは一時休戦ということでいいかしら?」

「願ってもない申し出、痛み入る」


 とは言え、お伴をするはずだった他のパーティーは不本意でしかない。登らないわけにもいかず、しぶしぶダンジョン内を登り始める。前衛二人が居ないものだから、二つのパーティーが足並みを揃えて行く事となった。

 冒頭からの想定外のハプニングに困惑しながらも、さすがは熟練した精鋭揃いである。とんでもないスピードで攻略しながらダンジョン内を直走るものである。


 しかしそんな者はどこ吹く風と、外壁の蔓を爆走し続けている二人がいる。


「うらぁ、そんなんじゃ日が暮れちまうぞ、マール!」

「あ゙あ゙ん゙? そっちこそどこに目をつけてんだ? ジーク、お前の方が遅いだろう?」


 二人は押し合いへし合いしながらぐんぐん爆進してゆく。


 ジャイアントジャックローズは巨大なつる薔薇だ。このグレートローズ王国の象徴とも言える。当然大きな茨道だと言えるが障害になったとしても刺さることはない。それよりも途中咲いている花に誘き寄せられるモンスターの方が面倒だと言えよう。


 当然飛行型のモンスター、ジャイアントジャックビー、クソでかいクマバチだ。そう、本当にクマのようにでかい。危険なのは針だけじゃなく、爪や顎にも要注意だ。


「じゃああだああああ!!」

「どげえええええええ!!」


 ズバン! 瞬殺だった。


 この巨体が落下するのだから、下にいる者の危険は計り知れない。しかしそんなものはお構い無しの二人は猛進を続ける。


 花があるのだから当然葉もある

わけで、葉にはジャイアントジャックキャタピラー、巨大芋虫が葉を食べている。まあ、こちらに危害がなければ関係ないので通り過ぎるだけだ。

 しかしヤツが孵化すると危険なジャイアントジャックモスとなる。その鱗粉には猛毒があり、幻覚や幻聴を来たした後死に至らしむと言うものだ。


 ズドン! 葉ごと切り落としてゆく。


 実は二人が外壁を爆走している間、ダンジョンを行くパーティーも信じられないスピードで爆進している。バフのてんこ盛りダブルがけで力押しに併せて、ヒーラー二人によるゾンビ戦法だ。どんな強敵だろうとほぼ瞬殺されて塵となって消えてゆく。

 進むほどに連携が取れてきて、新しいアイデアも生まれ、階層をぶち抜いてショートカットを試みたりしている。少なくとも一週間もかかる様子は無さそうである。


「ポリュペーモスだ! くっそでかいぞ!」


 ズドン!


「邪魔だ!」


 巨大な頭骨をその一つ目を、めがけて放った矢が貫通し、大きな音とともに崩れ落ちてゆく。


「カッツェ、やるわね!」

「クリスティーナか、俺に惚れるなよ!?」


 とか言いながら、どちらの頬も薔薇色に染まっている。


「おい、油断すんな!? カトブレパスがいるぞ! 目を見るな!!」

「え!? あ⋯⋯」


 思わずカトブレパスの目を見てしまったカッツェの意識が消えそうになった時、


「セーフスピリチュアル!」


 後方から一筋の光が伸びて、彼の体を包みこんでいた。


「うぅ⋯⋯あれ? 今カトブレパスの目を⋯⋯」

「危なかったわね? 一足遅かったら危なかったわよ?」

「そうかクリスティーナ、ありがと、なっ!!」


 と言いながら、助けてくれたクリスティーナの頭上に迫るキングジョーゴスパイダーを真っ二つに切断した。


「こ、こちらこそ⋯⋯ありがとう♡」

「い、いや⋯⋯お互いさまだろう?」

「そ、そうね⋯⋯」

「ああ⋯⋯」


 階層を進めるごとに敵は強くなる筈なのに、彼らの勢いは増すばかりだ。


 こうして、以前とは比べ物にならないスピードで二人とパーティーは登頂しようとしていた。
















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