異能
「ふぅ、今日の依頼も達成できたな」
「鉄鉱石10個....うん、問題ないわ」
ルーナとユリスがパーティを組んで、早くも3日が過ぎた。
パーティ組む前に起きたワイバーン騒動のような事はそうそう起きず、2人は地道にF級依頼をこなしている。
「鉄鉱石って装備に使われるのか?」
「装備もそうだけど、家の部品にも使われたりしているわよ....と言っても今回採取したのは10個だけだから、恐らく装備に使われるわ」
S級のユリスが居るからと言って、高ランクの依頼は受けられない。
ルーナのランクに合わせなければならないというルールがある。
ワイバーン騒動の1件で、一気に冒険者ランクが上がるなんて甘いことも無かった。
「悪いな、F級だとつまんないだろ?」
「そうでもないわ、あなたと一緒に冒険者として仕事ができるんだもの」
ユリスの婚約の意思は本気だ。
ルーナは何かの冗談だと最後まで信じたかったようだが、あれからまたユリスの家に行ってからも夜通しユリスの想いを聞かされてしまい、受け入れざるを得なかった。
(別に嫌なわけじゃない....むしろユリスと結婚なんて俺としても嬉しいことなんだが....もっと釣り合う相手なんていくらでも居るだろうに)
「さぁ、帰りましょ?ルーナのランクアップも近いはずよ」
「やっとか....ちなみにユリスはどのくらいの期間でS級になったんだ?」
「私は国王の命令で勇者パーティに所属していたし、魔法の実力を見せたら特例ですぐにS級になったわ」
普通ならずるいと言いたくなるところだが、その待遇が当然だと思えてしまうのがユリスの凄いところだ。
「相変わらず規格外だな」
「異能を覚えてるあなたも変わらないわよ」
持っている力は全く違えど、規格外なのはお互い様。
「それはそうか」
「....気になってたんだけど、ワイバーンを討伐した時、ルーナは火を纏っていたわよね....あれはどういう状態なの?」
「あれは異能による形態変化みたいなもんだ....異能って言われるが古代"魔法"だからな。現代魔法と同じように属性みたいなのがあるのさ」
現代魔法の属性は、火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。
現代の魔法使いは必ずどれか1つの属性に適正する魔力を持っている。
この前言ったように、ユリスは不適正の属性は無い。
そして古代魔法にもが属性....正しく言えば形態が存在する。
炎、氷、雷の3つ。
古代魔法において適正というのは無く、使おうと思えばどの形態も使えるようになる。
「なるほど....形態変化ね」
「あぁ、ワイバーンを倒した時は炎形態だったってことだ」
「ふーん....他のを見たいって言ったら今から見れるの?」
「それは分からんな....」
異能の形態変化。
体に大きな負担が掛かる以外にも、デメリットがある。
炎、氷、雷の形態変化はランダムで、自分で選ぶことが出来ない。
「自分の能力なのに、ランダムなんて結構不便なのね」
「そこが面倒なところだな....ただ、現代魔法みたいに術式の発動がある訳では無いから、1度発動してしまえば、どう強くするかは自分次第なんだ」
「その辺は現代魔法よりも自由なのね....と言っても私はいくつか自分で魔法作ったりしてるけど。その形態変化ってもし自分で選んだらどうなるの?」
ユリスの想像通り、厳密に言えば選べないわけじゃない。
自分で選んだ場合の負担と、代償が大きすぎるのだ。
「....修行期間で1回試したことはあるが、3ヶ月異能が全く使えなくなった」
「それは....やめといた方がいいわね」
もしかすると回数を重ねれば、その代償は小さくすることができるのかもしれないが、時間がかかりすぎる。
そもそも代償が小さくなるという保証は無いのだからルーナはやらない。
「まぁそういうことだ」
「でも、今後ランクが上がれば能力を使わざるを得ない時はやってくるわ。その時のお楽しみね」
「それを言うならユリスの本気もまだ見てないから、俺はそれを楽しみにしてるぞ」
そんなことを話していると、ギルドに着いた。
「あ、おかえりなさい!ルーナさん!ユリスさん!」
「依頼達成の報告をしにきたんだ。確認してもらっていいか?」
「はい!では、鉄鉱石を出してください」
言われた通りに鉄鉱石を取り出し、確認をしてもらう。
鉄鉱石自体、そこまで珍しい素材では無いので報酬はそこまで高くない。
「確認終了しました!しっかり達成できてますので、こちら報酬となります!」
鉄鉱石10個の採取。
報酬は6000R。
「そろそろランクアップの依頼受けますか?」
噂をすればなんとやらだ。
ユリスももうそろそろだろうと言っていたし、
「そのランクアップのやつって基準はあるのか?」
「ランクに合った依頼を受けた数、達成数、そして達成率。全てが基準以上に達すればランクアップの依頼を受けることができます!」
そして注意しなければならないのは、ランクに合った依頼は1ヶ月で1件は必ず受けなければ、ランクは1つ下がる。
F級の場合は、ギルドカード剥奪。
「そうなってくると、早めにランクアップはしないといけないな....このままだとユリスのランクも下がるんだろ?」
「そうですね....ユリスさんは勇者パーティとしての実績があるのである程度の融通は効きますけど、長く期間が空くとさすがに下がると思います」
「私は別にランクは気にしないのだけどね」
ユリスはこう言ってるが、ルーナは気にする。
と言うより、ランクを上げなければ報酬も上がらないのだから、このままというわけにはいかない。
「まだ疲労はそこまでだし、時間もある....よし、受けよう。ユリス、もう1件大丈夫か?」
「私も大丈夫よ」
「分かりました....でしたら、少々お待ちください!」
そして、マルサが持ってきたランクアップ依頼。
ゴブリン10体の討伐。
「E級からはいよいよ本格的に討伐依頼が絡んできますので、こちらを達成したらE級冒険者です!」
「分かったわ....よし、行きましょうかルーナ」
「あぁ」
地道だが、確実に2人の歩みは進んでいく。
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