再会、そして試練

街をぐるぐると歩いていても、結局どうしたらいいのか分からず、また冒険者ギルドの前まで戻ってきたルーナ。


「はぁぁ....どうすっかなぁ」


金も持たないから飯も食えない。

所持金を増やすにしても、仕事が無ければ増えない。

冒険者にもなれない。

まさに八方塞がりだった。


(もうこの際、なんでもいいから別の仕事を探すか?)


ギルドの前で立ち尽くしてると職員の男性がルーナに声をかけた。


「あの、どうかしました?」


「え、あぁ...ん〜」


この状況をどう説明したらいいのか分からず言葉に詰まらせる。


「何かあれば受付しますけど....先にお名前聞いてもいいですか?」


「ルーナ・フォルシウスです」


「ルーナ....ちょっと待ってください!あ!中に入ってていいですよ!」


その名前を聞いた職員は少し考えて、何かを思い出したかのようにギルドの中へ走っていった。


(....なんだ?)


大人しく待合の席に座っていると、奥の方からでかした!という声がルーナの耳に届く。

大きな足音達が近づくのを感じて、思わず身構えてしまう。


「君がルーナだな!?」


「え、まぁ....はい、そうです」


「良かった、今から探しに行こうと思っていたんだ!」


ルーナの頭の中は疑問符でいっぱいだった。


(俺を探していたのか?なぜ?ていうかこのおっさんは誰?)


「....ルーナ」


その声を聞いて、ルーナの体が跳ねる。

あの頃から特徴的な赤い髪も伸びて、背も伸びている。

それでも変わらない面影が、村で一緒に走り回った記憶を鮮明に呼び起こす。


「久しぶりだね、ルーナ....ずっとこのときを待ってた」


約束はお互いに忘れていない

ルーナはそれがまず嬉しかった。

3年間で忘れられているんじゃないかと、不安になりもしたが杞憂に終わった。


「これで一緒に冒険できるね!」


「あ、いや....それが、俺登録できないんだ」


「それについては大丈夫だ....申し遅れた、俺はここのギルドマスター、ギザだ」


一目見ただけで分かった。


(この人、強いな)


しかし、なにが大丈夫なのかルーナはまだ分かっていなかった。

ギザの分かりやすい説明で、事の経緯を全て把握することができた。


「なるほど....それにしても、条件って....無茶な要求してやるなよ、ユリス」


「だって一緒に冒険するって約束したじゃん!」


(確かにしたけども)


だが、今回ばかりは助けられた。

仕事が見つかったことに、とりあえずルーナは安心する。


「けど、本当に良かったんですか?」


「ギルドマスターとしては....不安の方が大きい」


それはそうだろう。

いやむしろ、その感覚はギルドの長として正しい。


「....少し来てくれ」


そう言われて、ルーナ達が連れてこられたのは冒険者用の訓練所だった。

一体何をさせられるのかと不安になっていると、ギザから木刀を渡される。


「1つ確認だ、お前は自分の力に自信はあるか?」


「ある」


迷わず即答した。

その様子に、思わずその場に居る全員が驚く。


「まさか即答してくるとは....ならば、少し待て。ちょっとした試験を行う」


「分かりました」


ユリスは少し納得の行かない様子だが、ルーナの表情に焦りは無い。

ギザが連れてきたのは、現役を引退した元B級冒険者ルードル。

ギザが提示した試験内容は、このルードルに一太刀でも当てたら合格というものだ。

それを聞いても尚ルーナの表情は焦りの色を見せない。

本当に勝つつもりでいる。


「ギザはいつも初心者の冒険者達には必ずさっきの質問をするようにしている....お前のように自信があると即答するものは早死するかすぐに辞めていくのさ....そうならないように、俺がお前をここで叩かなければならない!」


そう言って、冒険者を引退したものとは思えないスピードで、力で、ルーナに向かって勢いよく振り下ろす。

その勢いは風圧となり、大きな砂埃を上げた。

巻き上げられた砂埃の中から、2人の姿が徐々に現れてくる。

観戦していた4人は、目を疑った。


「なっ....なにっ.....!!」


ルードルが両手で振り下ろした木刀は....

片手で持った木刀に容易く止められていた。


「....そ、そんな....ルードルさんの攻撃を....片手で...」


「....自信は嘘では無いみたいだな」


「次は俺の番です」


ルーナはルードルの木刀を振り払い、勢いよく振り下ろす。

振り下ろされた木刀をルードルはなんとか止めようとするが、振り払うことが出来ない。

まるでルードルの体だけに何十倍の重力が掛かっているかのように、体の節々が悲鳴を上げる。


(な、なんなんだこの重さ....!!まずい!押し切られる!)


ルードルの持つ木刀は負荷に耐えきれず折れて、ルーナの木刀はルードルの首元で止めらられ勝負はルーナの勝利で終わった。


「俺の勝ちですね」


「はぁ、はぁ、はぁ....現役を退いて数年経ってるとはいえ、まさかここまで手も足も出ないとは....これでも冒険者をやっていた時は剣の腕は一級品だと言われていたくらいなのに、魔力も俺の方が上、一体どういうことなんだ?」


「....俺が使ったのは、異能というものです」


「なっ!異能だと!?」


ギザは驚きを隠せずにいるが、職員の2人とルードルはなんの事か全くわかっていない。


「なるほど、どうりで....」


「ユリスさん、異能ってなんですか?」


「職員さん達が知らなくても無理ないわ....」


異能。

ロストマジック、または始まりの魔法とも呼ばれ、神話の時代に存在したと言い伝えられている古代魔法。

魔力を使って、精神エネルギー、身体エネルギー、更に生命エネルギーを活性化させるという力。

体の強度は上がり、若さを保つことも可能になる。

消費される魔力は極わずかに抑えられるが、体にかかる負担は現代魔法の数倍。

そして、これを使いこなすことによって魔力の成長は遅くなり、現代魔法の習得が不可能になるというデメリットが存在する。

だが、異能によって繰り出される技は自由そのもの。

そして、とても強力だ。

それこそ、おとぎ話に出てくる摩訶不思議な魔法のようだと言われている。

この異能というものは古代魔法というだけあって、ある程度の解明は進んでいるが未だに謎の部分がある。

習得難易度はかなり高く、最低でも習得は5年以上掛かると言われる。

これまで習得を試みた人間は居たが、ある者は精神崩壊し、またある者は身体が強化に耐えきれず一生動かなくなったりと、失敗の代償が大きすぎて現代では使おうという発想すら起こらない。


「....そんなものがあったんですね....知らなかったです」


「昔は魔法学校でも教材に載っていたんだが、もう今は載らなくなったからな。今の若い世代では、ユリスのような勇者パーティに所属するくらいの立場に居ない限り名前すら聞くことは無いだろう」


当の使用者本人であるルーナは、そんな大袈裟なことかといまいち状況に着いていけていない。


「とりあえず、ルーナの冒険者登録と活動については問題ない。今後ともギルドに力を貸してくれ」


「はい」


「この異能については今から詳しく話を聞かせてもらう。ユリス、ルードル、お前達も来い。職員の2人は通常の業務に戻ってくれ」


全てがスムーズにとはいかなかったが、まず1つの目的は達成された。

この冒険者ルーナ誕生は、世界を動かす大きな鍵となるが、それはまだ誰も知らない未来のお話。








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