第23話 相変わらずの浴内さんと、変わり始める人間関係
猫屋敷さんの告白の翌朝。
僕はいつも通りに自転車を走らせていると、家の前で待っている
「おはよう有馬君」
「おはようございます……っていうか、ヘルメット、どうしたんですか?」
「実はね、私も自転車通学にしようかなって、お母さんに前々から相談してたんだ」
ピンク色の流線型をした、可愛らしくもカッコいいヘルメットを装着した
確かに、
でも、こんな寒い時期から始めなくてもと、思ってしまうのだけど。
「それに、今日から毎晩、有馬君が家まで送迎してくれるんでしょ? バス代出させる訳にもいかないし、だったら私も自転車通学にしちゃおうかなって思ってね」
「それは確かに助かりますけど……大丈夫です? 寒いのこれからですよ?」
「それは、ちょっと頑張らないとかな」
たはは……と困った笑顔の
十二月よりも寒いのが一月二月だからね。
耳が痛いくらいに寒くなるのに、自転車通学をさせてしまうとは。
……いや、僕が悪いんじゃない。
悪いのは寝取られ男の葉樹枝であり、その元カノの霞桜さんだ。
「よし、それじゃあ行きますか」
「行くって、鮫田さんは?」
「ヒラリちゃんは元々バス通学だから。今日からは途中下車せずに、そのまま学校に行くって」
あ、鮫田さんって、これまでバスを降りて
それも結構な手間だったろうに、ある意味僕よりも凄いかもね。
そんなこんなで、自転車通学が開始となった訳なんだけども。
「うわ、寒い! それにバス早い! あんなの追いつくのが無理でしょ!」
「なので、途中から追いかけるの諦めてました」
「これは確かに、安全運転第一でいった方が良さそうね」
自転車に乗り、
彼女の背中が見れるだけで幸せを感じてしまうのは、やっぱり惚れてるからなんだろうな。
昨日の猫屋敷さんの告白が気になるところだけど、それについては当人と会ってからにしよう。
と、思っていたら。
交差点にいるね。
ダッフルコートのミニスカート、ツインテールのデコ出しスタイルは間違いなく猫屋敷さんだ。
でも猫屋敷さん、僕に気付くと同時に
この二人の誤解も、早く解いてあげないとだな。
「
「んー?」
「今週の土曜日とか、どこかで時間取れます?」
「今週の土曜日? 多分、大丈夫だけど」
「ちょっと、相談したいことがありまして。出来たら学校以外でお話が出来たらな、と思うのですが」
キィっと音を立てて自転車を停めると、
「ちょっと待って、それってヒラリちゃん呼んでも大丈夫?」
「はい、大丈夫ですし、むしろ来て頂いた方が宜しいかと」
「ああ、なんだ、そっか。分かった、それならいいよ」
相変わらず、僕と二人っきりはダメらしい。
多分これ、僕と鮫田さんがくっついている、とか考えてそうだなぁ。
そんなこと全然ないのに、なんでだろ。
まぁともかく、残るは猫屋敷さんだけど……ん? limeの着信?
――どうせそれ、私も参加なんでしょ。
あ、聞こえてたんだ。
――うん、参加でお願いします。
――わかった、全部有馬に任せる。
よし、これで猫屋敷さんもOKだな。
それと、念のため、浴内さんにも連絡を入れておこうかな。
何かあった時に、彼女なら鮫田さんだって止めることが出来るだろうし。
教室に到着するなり浴内さんの席へと向かうと、それだけで彼女は頬を赤らめた。
彼女が夏に切った髪は、今は
浴内さんは160センチしかない身長に対して、Dカップという巨乳の持ち主だ。
故に、昨今のクラス、いや、学校内での彼女の評価はかなり高い。
元々大人しい性格であることも、評価を高くしている要因のひとつだ。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とは、今の浴内さんを表現するに相応しい言葉だ。
ただし、それは僕以外の人と接する時限定であり。
僕と接する時の浴内さんは、純粋なるセックスモンスターへと、変化するのだけれども。
「ここで、するの?」
「何をだよ」
座ったまま、当然の如くスカートを捲り上げる。
窓際席特有の日差しの中、輝く細い太ももがとても眩しいです。
というか止めて欲しい、周囲の男子の視線を僕だって感じることが出来るぞ。
「いいよ、言わなくても分かってる。私は有馬君のどんな性癖でも受け入れてみせるから。あ、でも、他の人に抱かれる寝取らせだけは理解出来ないから、それだけはヤメテ欲しいと思う。有馬君が目の前で他の女を抱くのは許せるけど、私は自分の身体を有馬君以外に触らせるのは許せないの」
僕にそんな性癖は存在しない。
大体そんなアホなことをお願いするようなクズでもない。
周囲の目が痛いから、とっとと本題に入ろう。
「今度の土曜日なんだけど」
「わかった、行く」
「まだ何も伝えてないけど」
「大丈夫、土曜日になった瞬間に有馬君の家に行くから」
浴内さんの場合、本気で部屋に来そうで、ちょっと怖いな。
夜中の00:00に家のチャイム鳴らされたら、さすがに不審者対応しちゃいそうだ。
「土曜日の朝十時に、天宮駅に来て欲しいんだけど」
「そう、わかった。付近にソリスティアっていうラブホテルがある天宮駅ね」
「どういう建物を目印にしても構わないけど、そこには行かないからね?」
「でも、話し合いがメインなんでしょ? それも
「……誰からの情報?」
「あの日以降、私と猫屋敷さんは親友と書いてマブダチって呼び合う仲なの」
ああ、なるほど。
僕が誘うのを前提に、猫屋敷さんも浴内さんに連絡してたってことか。
「だとしたら、ラブホテルは選択肢のひとつに入ると思うんだけど? もう話題としても新しくはないのだけれど、ラブホテル女子会っていう言葉があるぐらい、ラブホテルは身近な存在へと変わろうとしているの。誰にも聞かれたくない話を数人の女子とするのであれば、相互監視も出来るし、場所としても喜ばれること間違いなしなの。それに、それに万が一可能性があったとしても、その気になれば全員と関係を持ってしまえば、その後の関係は良好になると、私は思うのだけれど」
「朝から何を熱弁しているのよ! アンタは!」
スパーン! って、いつの間にか側にいた猫屋敷さんが僕の頭を叩いた。
「熱弁していたのは僕じゃない」
「いいのよ、レディファーストでしょ? 大体ね、こんな可愛い浴内の頭を叩けると思う? そんなことしたら、クラスどころか学校中の敵になっちゃうわよ」
前に思いっきり頬を叩いていた気もするけど。
まぁいいか、ここで二人を敵に回すほど愚か者でもない。
それにしても、正論なのか机上の空論なのか微妙に判断が付きづらいが。
ラブホテル女子会という言葉があるのかどうかぐらいは、検索を掛けてみるか。
「あった」
自席に戻りスマホで確認。
本当にラブホテル女子会という言葉があるじゃないか。
綺麗なホテルで酔いつぶれてもそのままベッドで横になれる。
お風呂のジャグジーや泡風呂で楽しめる、なるほど、これは確かに選択肢のひとつになりそうだ。
何よりも。
お値段が安い。
御休憩、一部屋二時間二千円。
五人で行けば一人四百円で済むじゃないか。
僕が金欠なのは皆知っているだろうし、これはラブホ案でも問題無さそうだ。
よし、行こう。
彼女たち全員とラブホテルに。
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