王子様と恋愛駆け引き中【完】

佐伯エル(ひな。)

婚活女子の事情

第1話

婚活女子は忙しい。




最近よくある、内装の煌びやかなレストランや飲食店を貸し切っての婚活パーティー。カジュアルな仕事帰り女子からいかにも気合い入れてきましたというような華やかなドレスを着た女子まで様々いる中、男子もまたスーツや私服などバラバラだ。




「なので、この前の米国大統領選挙前では―――」





ひたすら目の前で先日利益の出たらしい株の話をしている男に乾いた笑いで相槌を打ちつつ、連れを横目で盗み見る。



同じ婚活仲間である会社の先輩は、少人数で組まれたこのパーティーでも目立つお高めスーツを着た上場企業の営業マンに焦点を定めていたらしくずっと彼に引っ付いていたが、ちらっとこちらに向けてきた視線で悟る。




あれはダメらしい。




最初は女豹のように目をギラギラさせていた彼女の、死んだような眼を見て思わず吹き出してしまい、目の前にいる男に怪訝な顔をされたのでごまかしたところでパーティーの終了アナウンスが司会者からされた。




他の人たちのように連絡先交換をといわれスマホを出したが、絶対に連絡返さないだろうなと思いながら、先輩に合図を出した。


















「やっぱ簡単にはいいオトコ見つかんないよなぁ」




場所は変わって婚活パーティーの会場から駅近のバーで、先輩の愚痴を聞いていた。




会社の2年先輩で営業部のバリバリキャリア街道を歩んでいる夏江先輩がカウンター席の隣でため息をつく。





彼女は婚活の失敗の後はやけくそになり飲まずにはいられない。それに付き合うのはいつものことだ。





「そんな簡単に会えたら苦労しないですって」


「だよねぇ……」





あ"ぁ~、と絶対に男の前では見せない野太い声でカウンターに突っ伏す。その隣で静かに飲むのはハイボール。これも絶対に男性の目線があるところでは頼まない。



ぷはぁっ、と勢いよくからにしてバーテンに同じものを頼んだ。




「八重(ヤエ)ちゃんはこの前の人どーなったの~?」


「この前の人?」


「ほら、あのコンサルタントの」


「あぁ……」





彼女が言っているのが2回ほど前に行った婚活パーティーで出会った男性の話だと気づいて気の抜けた返事が漏れる。怪訝な顔をする先輩にへらりと笑ってしまった。




「いやぁ、相手の連絡が頻繁過ぎて……」


「返さなくなっちゃったの?」




もったいなーい!と夏江先輩が額に手を当てて天を仰いだ。




「あの人すっごい稼いでそうだったのに!」


「だって業務中にも頻繁に連絡来るんですもん。めんどくさくて」


「もうっ、そのめんどくさがり直さないと結婚できないよ!」





もったいないっと叫びながらまたがくがくと首を前後に揺すられる。やめてくれ~。アルコールが変な感じで回ってしまいそう。




ちょうど助けるようにお兄さんがお酒を出してくれたので夏江先輩がしぶしぶと離れていく。勢いよく揺すられていたせいで三半規管がちょっとおかしくなった気がした。



首を振って変な感覚を追い払う。お酒を飲んでいると、ムウっと唇を尖らせた夏江先輩のじめっとした視線が向けられていることに気づく。




「八重ちゃん、本気で婚活する気あるの?」



半目で睨み上げるように見られて苦笑いが漏れた。




「ありますよ。もう28ですよ?」


「だったら……」


「でも、私ちゃんと仕事しない人は嫌なんです」





あの男はいつ仕事をしているんだと聞きたいくらい頻繁にメッセージを送ってきていた。業務中にスマホを見るなとは言わない。けれどその頻度がおかしい。それでもう常識がないという結論に達してしまったのだ。




「八重ちゃんは仕事にうるさいからなぁ」




仕方ないと言わんばかりにため息を吐かれる。けれど彼女もまたキャリアを積んできて30を超えても結婚の機会を逃しているので、八重の気持ちも少しはわかるのだろう。




「あぁ、いい人いないかなぁ」



そんな彼女の口癖が出て、思わず笑いを漏らしてしまった。

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