第11話

◇廃村の血腥(ちなまぐさ)い空気

「さて……これで本当に終わりか? もう逃げるやつもいないんじゃないか?」

 ガルサーグが付近を見回す。腕には返り血が付着し、口元には余裕の笑み。

 「残念だが、遊び足りないな。イリスを探すんじゃなかったのか?」

 ゼアハが肩をすくめると、サルグリッドがツカツカと近づき、杖を地面についた。

 「目的はイリスを連れ帰ることだ。こいつらを葬(ほうむ)るのはそのついでにすぎん。……領主様は待っているぞ」


「ルシファード、どうする? 先に村へ向かうか、それとももう少し徹底的に……」

 ガルサーグがちらりとリーダーを見やる。

 ルシファードは少し沈黙したあと、静かに言葉を放つ。

 「……ここはもう用済みだ。人間の血の臭いも飽きた。さっさと村へ行くぞ。領主様に暇(ひま)を取らせるわけにはいかない」


 そんな彼らのやり取りに、廃墟の地面で呻(うめ)き苦しんでいた賞金稼ぎの一人が、最後の力を振り絞って声を上げる。

 「おまえら……不死身……だろうと……いずれ……報いを受ける……っ」

 呼吸が荒く、もう息が途切れそうだ。

 「そうか。ならせいぜい期待しておくんだな……虫けらが」

 ゼアハが吐き捨てるように言い、仲間たちは夜の闇へと再び歩き出す。


 倒れた男の視界には、四つの黒い背中が徐々に遠ざかるだけ。

 血の臭いと絶望が廃村の夜風に染み渡るが、眷属の足取りは揺るがない。

 彼らは嬉々(きき)として不死の力を信じ、人間を圧倒的に下に見る。

 彼らの目指す先には、まだその存在を知らないイリスがいるアヴァロン村……

 だが、今のところ、眷属にはどんな阻む者もいないように思えた。

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