アイスクリーム
第22話
夜の20時ーー。
『逃げてーーっ!!』
『ギャーーーッ!!』
絶叫が部屋中に響き渡る。
耳の鼓膜が破れるのではないかというほどの音。
「ナナ、うるせぇよっ」
スパーンッと障子が開き、ロクが顔を出す。
その額にはぶっとい青筋が。
「うるさくない。これくらい普通でしょ」
「どう聞いても耳が破壊されるレベルだっ!!」
「あっ!!」
ロクはナナからテレビのリモコンを奪うと、音量を通常レベルにまで戻す。
音量は通常の2倍は大きかった……。
「ホラーを見るにはこれぐらいが良いんだよ」
「こんな音で聞いてたら、終いには小さい音が聞こえなくなるぞ」
バカタレ、と言いながらナナの隣に座るロク。
そしてムギュッとナナを抱き締める。
「何?怖いの?」
「……怖くねぇよ。お前が怖いだろうと思って兄ちゃんが」
「ふーん」
ニヤニヤ嗤うナナ。
双子なのだ。
ロクの気持ちなど、すぐわかる。
「嗤うんじゃねぇよ」
そう言って、ロクはグイッとナナの顎を持ち上げる。
「今日はしないよ」
「なんでだよ」
「これを見るの。明日には返さないといけないんだから」
レンタルDVD。
「延長しろよ」
「使い物にならなくするよ?」
グッと拳を握りしめるナナ。
真っ青になって大事なとこを押さえるロク。
格好良さ、台無し……である。
木村家の生活はいつもギリギリ。
それでもこれを見たくてなんとか節約して借りたのだ。
どこに延長料金を払う余裕があるというのか。
ナナご立腹である。
モゾモゾとロクの腕から抜け出そうとし……
「悪かった。だからこのままで」
「……」
捨てられた子犬のような顔をするロクに、大きく溜息をついて動くのを止める。
そんなナナの体にこれでもかってくらい手と足を絡ませるロク。
逃すまい、というように。
「邪魔したらすぐ離れる」
「了解だ」
真剣な表情で頷いたロクだったが……
「〜♪〜♪〜♪」
外から陽気な音楽が聴こえてきて、双子は顔を見合わせた。
「「この音楽はっっ」」
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