第4話 趣味の世界

 書くジャンルとしては、自分の中で、

「ミステリー小説だ」

 と思っていた。

 中学生の頃に最初に嵌って見た小説が、

「ミステリー小説」

 だったのだ。

 しかし、厳密に言えば、

「探偵小説」

 というもので、

「ミステリー小説の前身」

 といってもいいだろう。

 時代的に言えば、大正末期くらいから、昭和前半。

 つまりは、

「戦後の混乱期くらいまで」

 という時期である。

 その頃の探偵小説というのは、

「ヨーロッパから輸入した形そのもの」

 という探偵小説が多かった。

 特に、

「トリックや謎解きを主題にした、有名探偵であったり、頭脳明晰の刑事などが主人公で、事件を切れ味鋭い手法で、解決に導く」

 と言われるものが多かった。

 そもそもは、

「シャーロックホームズ」

 であったり、

「怪盗ルパン」

 と呼ばれるものが、売れたことから、

「探偵小説」

 というジャンルが生まれたのだ。

「怪盗ルパン」

 などというのは、探偵でもなければ、捜査員でもない。

 逆に、相手は、

「悪者」

 ということであり、今では普通にあるが、

「悪役が主人公」

 という話は、そんなに昔からあったのだ。

 ということで、実際には、

「怪盗と探偵との闘いというのは、確かにその当時もあったことだろう」

 しかし、その場合、

「怪盗が主人公」

 という発想を持つことで、ベストセラーになるということは、

「作者の発想勝ち」

 といってもいいだろう。

 発想の転換が、真っ逆さまであれば、

「それも真なり」

 ということで、もっといえば、

「さらに逆さにすれば、元に戻る」

 という発想もありなのではないだろうか。

 それが、

「探偵に対する怪盗からの目」

 ということではないだろうか?

 それを考えると、

「探偵小説」

 というものが、

「時代は繰り返す」

 という言葉が当てはまるといえるのではないだろうか。

 平成の頃のミステリー小説や、サスペンスドラマと言われるものは、

「安楽椅子探偵」

 と呼ばれるような、

「実際にその場に行くわけでもなく、話を聞いただけで事件を解決する探偵」

 というものであったり、

「普段は、別の仕事をしているが、ドラマの中では、出しゃばる形で、探偵のようなことをする」

 というような話が多く出てきたりする。

 さらには、

「悪役が主役」

 というような話も出てくるだろう。

 そう、江戸の昔でいえば、

「鼠小僧」

 と呼ばれた話のようなものである。

 それだけ、

「バリエーションが増えてきた」

 ということであろうが、今の場合は、すべてのトリックや内容がっ出尽くしてしまい、

「飽和状態になる」

 ということで、

「その先を模索する」

 というのが、今の時代なのであろう。

 しかし、黎明期の探偵小説であっても、そもそも、パターンが決まっているわけではないので、

「他のバリエーションを」

 と考えるのは当たり前であり、

「それが、奇しくも、今昔で同じ発想になった」

 ということになるのであろう。

 それを考えると、

「探偵小説に限らず。時代は繰り返すというのは、別の方向から回りまわってきたものとが重なった時」

 に出てくるものだということになるだろう。

 さらに、昔の探偵小説というものでは、

「本格派」

 と、

「変格派」

 というものがあった。

 本格派は、いわゆる、探偵小説の定義と言われる前述の内容で。変格派というのは、

「それ以外」

 というある意味、曖昧な内容のものであった。

 その中で、分類としては、

「異常性癖」

 であったり、

「猟奇殺人」

 であったり、

「オカルト系のミステリー」

 であったり、

「耽美主義的な内容」

 などが代表的なものだろう。

 明治の文豪の中に、

「幻影的な小説」

 というものもあったが、それが、

「オカルト的」

 ということで変格派探偵小説と呼ばれるものと結びついたということであろう。

 探偵小説というものを二つに分類はしたが、それが浸透することはなかった。

 実際に、変格派と呼ばれる部分は、

「ホラー」

 や、

「オカルト」

 に移っていくようになり、

 サスペンスであったり、中にはSFに近いものとして移行していくものもあった。

 時代の流れとともに、

「戦後ではない」

 ということで、好景気や不景気を繰り返す時代になれば、

「社会派ミステリー」

 と呼ばれるものが出てきた。

 そんな小説は、

「ヒューマンチックな話」

 が多くなり、それが、当時の社会問題と絡み合って、一つのブームを生み出していく。

 例えば、

「ゼネコンとの癒着などでの、政治家をテーマにした話」

 あるいは、

「企業が伸びていく時にその廃棄物が問題にあった、公害問題」

 などというものは、どうしても、

「人間の尊厳」

 などという問題と絡むことになり、それが、占領国が押し付けていった、

「民主主義」

 という問題と絡んでくることで、さらに、社会問題が、露呈し、差別問題であったり、人権問題と絡んでくるのであった。

 それが、実際に社会問題となることで、

「自分なら、どうするか?」

 ということを考えさせられるのが、社会派ミステリーというものではないだろうか?

 そのうちに、時代が、平成に進むにつれて、前述の

「安楽椅子探偵」

 であったり、

「探偵らしからぬ探偵」

 というものが出てくるのであった。

 何といっても、中には、

「泥棒が探偵役をする」

 であったり、

「警察の中で、まるで時代劇のような。隠密という組織があり、それが、事件解決のためには、なんでもあり」

 という形のものが出てきたりもしたのであった。

 そんな、

「探偵小説から、ミステリー小説へと変革と遂げてきたジャンルであるが、やはり、自分は、探偵小説が好きだった」

 そもそも、探偵小説というのは、時代的にも、

「自分が知らない時代」

 ということで、

「本を読む」

 という想像力を掻き立てられるものということで、魅了されたのだろう。

 そういう意味で、今の若い連中が見ている、

「異世界ファンタジーもの」

 というのも、

「想像力を掻き立てられる」

 ということでは、

「自分たちと同じなのではないか?」

 と感じるのであった。

 というのも、

「異世界ファンタジー」

 とううものは、自分たちのような人間から見れば、

「まったく想像のできない世界」

 ということになるのだが、彼らとすれば、その想像力を掻き立てられる、元々の素材というものがあるのだ。

 というのが、

「ゲーム」

 というものであったり、

「アニメ」

 だったりするのだ。

 特にアニメとゲームというのは、密接に結びついているようで、

「アニメを元にして、ゲームが作られたり」

 逆に、

「ゲームを元にして、アニメが制作されたりしている」

 ということである。

 平成に入ってから、引きこもりの子供が、

「部屋の中で何をしているか?」

 というと、

「ゲームをしている」

 という。

 昭和の頃は、子供が遊ぶというと、

「表の公園などで、遊具で遊ぶか、球技などで遊んでいるのが当たり前」

 という時代であったが、そのうちに、

「家でゲーム」

 というのが当たり前になったのだ。

 特に、

「オンラインゲーム」

 などができると、

「表に出なくても、ゲーム機で会話をしながら、ゲームで、コミュニケーションをとることができる」

 ということだ。

 昔のように、野球道具をもって家を出ようとしている子供を、親が、

「宿題は終わったの?」

 といって

子供が出ていくところをとがめるという、

「昭和の構図」

 があったが、今はそんなこともなくなった。

 というのも、

「ゲームをするのが忙しく、部屋から出てこようとはしない」

 ということである。

 下手をすると、食事に出てくることもなく、それこそ、

「引きこもりではないか?」

 というような状態になっているということである。

 そもそも、

「引きこもり」

 というのは大げさかも知れないが、

「バブル崩壊」

 というものが大きな影響を持っていて、

 それまでの、

「父親だけが、働いて、生活をしている」

 ということで、家族の生計が成り立っていたが、

「給料の減少」

 さらには、

「リストラ」

 などというもので、

「母親が、働きに出なければいけない」

 という、

「共稼ぎ」

 ということになってくるのであった。

 だから、子供が家に帰ってきても、何もできていない。

 パートくらいであれば、

「母親は夕方前に仕事場を出て、買いものしてから、夕飯の支度に間に合う」

 ということは普通にあるだろうが、

「正社員で働いている」

 ということであれば、そうも簡単にはいかないだろう。

 だから、共稼ぎをしている家族が、

「夕飯を皆で一緒に」

 などということはあり得ないといってもいいだろう。

 だから、子供は、

「自分で作って食べるか」

 それとも、

「表で食べるか?」

 ということになる。

 昭和の時代であれば、

「鍵っこ」

 などと言われて、まわりからは、

「かわいそうだ」

 と言われたであろうが、もし、自分が、その時代に生きていれば、

「うらやましい」

 と思ったに違いない。

 何といっても、今の時代に慣れてくると、

「家族一緒の食事がうらやましい」

 などとは思わない。

 これまで、一人で自由だったものが、いまさら、

「家族団欒」

 と言われても、

「鬱陶しいだけだ」

 としか思わないだろう。

 それを考えると、

「今の時代に生まれてよかった」

 と思う。

 そういえば、当時にもし、生きていた人が、自分と同じ気持ちだったとして、

「自分の子供には、自分と同じような思いをさせたくない」

 ということで、考えるだろう。

 だが、その子が大人になって。子供を持った時、どういう教育をするだろうか?

 多分。

「自分が受けた教育と同じことをするのではないだろうか?」

 と考える。

 やはり、

「同じ人間であったとしても、立場が変われば、気持ちも変わる」

 ということではないだろうか?

 だから、

「上から見る視線と、下から見上げる視線で、その立場が分かっただけで、まったく違った景色であり、距離感を感じることになる」

 というものであろう。

 そんな自分を、大人になってから、

「子供の頃に感じた親に対しての思い」

 というのを、忘れてしまったのかも知れない。

 あくまでも、

「自分が大人になったということで、子供の頃の自分は、遠い過去のことで、何を考えていたのかすら、立場の違いが、打ち消すということになるのではないだろうか?」

 と感じられるのであった。

 それを思えば、

「上から見る視線」

 というのは、

「一歩間違えれば、子供の人生を変える」

 ということで重要である。

 それを分かっているのかいないのか、やはり、

「大人になるということは、一つの結界を超える必要がある」

 ということになるのであろう。

 自分が、最近小説を書くようになると、毎日が楽しくなってきた。

 仕事は、毎日いっていて、若い頃は、結構仕事も楽しかった。現場での仕事が楽しいと思うのは、若い頃だけのことで、それが、

「主任」

 などという立場になると、

「仕事が楽しい」

 などということは考えられなくなったのだ。

「どういうことなのか?」

 というと、

「今までは自分でできていた仕事ができなくなってきた」

 ということであったが、その理由としては、

「部下にやらせて、それで指導しなければいけないという仕事だからだ」

 ということであった。

 上司になると、基本的に、部下にやらせて、それで仕事を回すというのが、当たり前ということであった。

「やってみて、言って聞かせて、させてみて。もめてやらねば、人は動かじ」

 という言葉があるが、上司とは、まさにそういう言葉である。

 しかし、実際には、

「自分が第一線に立って仕事をする」

 ということが一番自分の才能を生かせるという人もいるだろう。

 だから、なんでもかんでも、管理職への階段を昇らせるというのは、いかがなものであろうか?

 だから、

「上司にならなければ嫌だ」

 と思う人は、会社を辞めて、正社員としてではなく、派遣社員であったり、アルバイトという形で、

「現場の仕事をしたい」

 と思っている人もいるだろう。

 確かに、今の時代は、

「正社員を辞めて、派遣社員で働く」

 という人や、最初から、派遣社員でいくという人もいる。

 その人がどうして、そういう道を選んだか?

 というのは、その人それぞれに理由もあるだろう。

 もちろん、

「正社員をリストラされた」

 であったり、

「上司のパワハラで辞める羽目になった」

 などというのもあるだろう。

 これらは、

「自分のせいではない」

 というやむを得ない理由で、派遣会社に登録するということになる。

 しかし、最初から、

「会社の仕事に適合できない」

 という自己理由で辞める人もいる。

 昔であれば

「せっかく正社員で働いているのに、もったいない」

 という人や、

「やりたくても、病気でできない人がいるというのに、贅沢だ」

 という人もいるかも知れない。

 そもそも、その病気というのも、場合によっては、その理由というものが、

「上司からパワハラを受けて、精神疾患に陥ったりしたとして、そのへ原因が仕事であれば、会社を辞めるしかない」

 ということで、そんな上司がいるところで、こちらに、

「甘い」

 などというのは、それこそ、押し付けではないだろうか?

 それを言っているのが、他の管理職だとするならば、

「パワハラ行為を辞めさせてから言ってもらいたいものだ」

 ということである。


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