第13話 突破せよ! ゴブリン包囲網!!っ
「ああもう、次から次へと! 恐怖心って物は無いのか、コイツら!」
ユーナの圧倒的な
眼前で仲間が散ろうと、自身が負傷しようと、だ。
別に無感情というわけではない。
むしろ恐怖以上の感情が……まるで何かに駆り立てられているかのような……焦りに使命感に満ち溢れたように必死の形相で武器を振るっている。
そのせいか、ユーナが道をこじ開け、俺達が突き進めば進むほど、抵抗はより苛烈さを増してきた。
(そんだけあの王様を守りたいのかね? どうにもそんな体張って守りたくなるようなカリスマ性は感じないけどな。 目を引きはするが……)
今も嫌らしくジッと俺達を見つめていて気にはなる。
(それよりも、ユーナが前を蹴散らして道を作っても、すぐ両サイドから補充が入って進みにくくなってきた。
その上、俺とユーナを分断しようと無理矢理割って入ってくるヤツも増えてきたし、何か手を打たねえと!)
このままだと一分もしない内に分断されるだろう。
(魔法である程度まとめて片付けたい所だが……、そんな大層な魔法、準備も余裕ないこの状況で使えるほど、俺には才が無く、魔法の練度も魔力の量も足りてない。
そもそも、コイツらの防具に魔法の威力を軽減する
洞窟やその入口で戦闘したゴブリン達に比べ、此処で戦っているゴブリン達の方が防具の質が一段高い。
かといってそこまで高級そうにも見えないが、それでも一つくらい
だから、魔法障壁ほどではないが魔法は効果的でな――!
(いや待て! たしか岩や植物なんかの既に物理的に存在する物体を魔法で操る形式なら、殆ど軽減されなかったはずだ…………!
それに、魔力でゼロから作り出すんじゃなく、元から在る物体を魔力で動かすだけなら、何とか俺にも出来る!
よっしゃ! とりあえず、やってみるか!!)
俺は体内で循環する魔力を一部分割した。 その魔法用に別けた魔力を胸の奥で練り上げていく。
「ユーナ、一瞬でいい! もっと俺の傍に寄ってくれ!」
「? ――あっ、そういうことね! ぶちかましちゃえ、トーヤ!!」
「――ああ!」
ユーナは、俺が魔法を使うことを一目で察してくれたようで、ゴブリンを数体ぶっ飛ばして、俺の手がギリギリ届くか届かないかの魔法発動の邪魔にならない絶妙な距離を保って俺の前に陣取る。
俺はそれを確認すると、魔力の上質化と並行して、今度は
(やっぱり気付くよな――!)
漏れ出る俺の魔力の高まりを感じ、魔法の発動を察知したのか、魔法士のゴブリンが何やら叫ぶと、周囲のゴブリン達が一斉に俺へ狙いを変え、死に物狂いで攻撃してきた。
集中が途切れれば魔法の発動は失敗する。
新人の魔法使いなら気がそちらに取られ過ぎて、初級と扱われる比較的に簡単な魔法すらまともに編み上げられなかったことだろうな……。
「
こちとら喋りながらだろうが、戦いながらだろうが魔法を撃てるように鍛えられてるっての!」
魔法の構築に意識を向けながらも、呼吸の如く……とまでは行かずともほの意識せずに近付くゴブリンの攻撃を躱し、反撃で振るう斬撃で次々と仕留めていく。
「トーヤの邪魔はさせないんだから!」
そこにユーナが加われば、正に鬼に金棒。
ゴブリン共に俺の魔法を妨げる余地などあったものではない。
(――っし!! 完成だ! 魔力の質も充分なくらい高まったし、後は魔力を流して詠唱で固定化&起動すれば発動する!)
俺は目を閉じ静かに一呼吸すると力ある言葉を紡ぐ。
「求めるは針山、使うは岩石! 串刺せ、――
地を蹴る足裏から地面、そして地中へと流し込んだ魔力が周囲の鉱物をかき集め、俺の
――それは何本もの岩のトゲ。 不格好で不揃い、されどその先端はどれも等しく鋭利に尖り、その強度に至っては容易く砕けるものではない。
まさしく自然の凶器。 大地の牙と呼べる代物である。
その大地の牙が、十を超える本数でもって、ほぼ同時のタイミングで地面から獲物目掛けて勢いよく突き出ていく。
「ちっ、まだまだ魔法の修練が足りないか。 やっぱり師匠のようには行かないな」
……結局、直撃して串刺しになったのは三体だけ。
ゴブリンの軍勢の只中を全力疾走で駆けながら、それも四方八方から伸びる攻撃を避け、防ぎ、反撃しながらの魔法行使とはいえ、だ。
(せめて後二、三体は当てたかったな。 こんな精度では師匠に鼻で笑われてしまう)
やはり、足止めさえ出来ればいいと数優先したのが原因だろう。
そっちに意識が行き過ぎて魔法の精度が酷い有様になってしまった。
(この魔法、案外今後も使えそうだし、コソ練して改善しておくべきかもしれない。 いや、する!)
「トーヤ、こんな魔法まで使えたんだー! さっすがー!
面白そうだし、今度私にもやり方教えてよね!」
「ぜぇ……はぁ……そんな悠長な事、言ってる場合じゃ、ないっての!」
魔法の刺し漏らしか、俺は斜め前方から斬りかかってきた二匹のゴブリンを切り伏せ、思った以上の魔力消費で乱れた呼吸をすぐさま整える。
「ふぅ。 さ、道は出来た! さっきの魔法のことは帰ったらいくらでも付き合うから、今はとっととこの大群を突破するぞ」
「やったー! 私もそろそろ魔法ってやつを使ってみたかったんだよねー! さっきのは地味な魔法ばかり使うトーヤにしては珍しく派手だったし、私にピッタリかも!」
「地味ってお前……。 以前にも言ったけど、俺は魔力も才能も平々凡々なの! そんな俺が本職の魔法士みたいに派手で魔力消費の激しい魔法をぼこすか撃てるか! 一瞬で干上がるわ!」
「えー、嘘だー! だってこんなに派手なの使えてるじゃん」
ほら、と、一面が岩の針だらけとなっている様を指して反論してくるが、この魔法の原理なんかを詳しく語って聞かせる暇はない。
「工夫だよ、工夫! ほら、それも帰ったら話すから今は戦いに専念してくれ」
「ぶーぶー!」
ゴブリン相手なんか片手間でも余裕だもんと言いたげにしてくるが、その力関係はスタミナが切れたら余裕で逆転するという事実をそろそろ常に頭の片隅に入れておいてほしいものだ。
「……それで女神様は後どのくらい戦えるので?」
「………………五分……くらい?」
うわ、結構ギリギリだ。
……それも、ユーナ本人にすら確信が無いのなら三分から四分と見た方が良いだろう。
それでもここまでの戦闘時間を考えると、相当に上手くやりくりしてくれているのだろう。 普通に嬉しい。 そして助かる。
「…………ほうほう。 それで、こうしてお話に夢中になって間に合わず戦闘中に倒れたら、いったい誰が苦労するんでしょう?」
「…… ……あははー。 トーヤだね……。
――よぉし、分かった! 私、集中する!
その代わり、帰ったら教えてくれるって約束、忘れないでよね! ゼッタイだよ!」
「仰せのままに、女神様」
「じゃあ、ちょっとスピード上げるからしっかり付いてきてよね!」
「えっ!? ちょっ、速っ!?」
さっきまでとは比較にならない速さで走るユーナ。
両サイドに生えた二メートル級の岩の針山が、ゴブリンと俺達を隔てる壁となり、ゴブリンの動きを阻害する障害物にもなっている。
攻撃としては微妙な結果だったが、本命の進行ルートの確保という点では成功と言えるだろう。
それでもちょっとの距離しか稼げていないとも言えるが、お陰で今は走る事に集中できて大助かりだ。
(これで置いてかれたら情けないにも程があるってのに、さっきから全っ然、追いつける気がしねえ!! もっと本気で走んないと、マジで置いてかれるぞ、これ!!)
俺は肺と足の筋肉により多くの魔力を回し、大急ぎでユーナの背を追いかけた。
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