第20話 この俺が授業参観とやらに来てやったぜ?

 俺が素直にそう言って頭を下げると、ラングース先輩はまるで狐につままれたように呆けた顔を俺へと向けてくる。そして、毒気を抜かれた様子を見せた後、今度は必死に俺へと声をぶつけてきた。


「ちょ、ちょっと!? 何を謝っているんですの!? さっきまであれだけ私のことを侮辱していたではありませんか! そ、そう素直に認められてはこちらがやりにくいですわ!」

「いや、まあ、それは何て言うか……本当、すいません。悪いのは俺ですし、謝るのは当然ですから……」

「くっ……!またしても、この私を侮辱するというのですね……! も、もう許しませんわ!」

「え? いや、そんなつもりは……」


 げ、余計に怒らせたか? 俺なりにちゃんと謝ったつもりなんだが……。

 怒りと恥辱から顔をさらに真っ赤にして俺を睨み付けてくるラングース先輩にどうしたものかと頭を悩ませていた時だった。そんな俺の耳に、ふと聞き慣れた声がさらに聞こえてきたのだ。


「―ほう? ここが例の学校か」


 生徒しか居ないはずの校庭で、明らかに場違いな渋い声が響く。あまりにも学校の雰囲気に合わないその声に、周りの生徒達が何事かと驚いて顔を見合わせているほどだ。


 しかし、俺はこの声の主を知っている……例え姿を見なくても、その声が誰のものなのか骨の髄まで分からされている俺には。


「な、何でここに……」


 それはミューイも同じで、すぐにその声が聞こえてきた方に視線を向けると、驚いたようにそう口にしていた。その反応で確信する……この声の主は俺のトラウマである、と。


 さらに、この場に居る有名人の一人であるイサリナも、驚いたように声をこぼしていた。


「お、おじ様……?」


 その呼び方は初耳だが、ミューイと顔見知りであるイサリナがそう呼び、ミューイが驚くような相手は俺が知る限りでは恐らく一人しか居ない。


 大して理由も説明せずにいきなりこの学校に入学させ、あろうことか学校に向けて魔物を投げつけて来た暴れん坊。俺は唐突に現れた闖入者に驚きつつも、ゆっくりとその声の方向に振り返る。


 そして、その声の主に対して呼びなれた名前を口にした。


「……師匠?」


 俺がそう口にすると、師匠はニヤリと笑みを浮かべながらふんぞり返ってみせると、相変わらず大きな声で堂々とこんなことを口にしてきた。


「―よう、レクト、ミューイ。感謝しろ、この俺が授業参観とやらに来てやったぜ?」


 あの……授業参観の意味知ってます? まだ入学式なんですけど?

 そんな俺の心の声も虚しく、師匠は俺達の方にずかずかと足を進めてきたのだった。

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