第8話 そんな馬鹿なことをする人間でほんとすいません

「―みんな、さっきの魔物は私達で対処しておいたけど、帰り道は充分注意してね? もしかしたら、魔物の群れが押し寄せている合図かもしれないから」


 そうして、師匠が飛ばしてきただろう魔物を処理したことを告げるレフィリー先生。……うちの師匠がすいません。


 まあ、そうは言っても、バレなきゃ問題ない。

 あくまでも俺は師匠に「学校に通え」って言われただけだし、例え隣の席の子が理事長の娘だろうと何だろうと、普通に過ごしていれば問題ないはず。強いて言えば、授業に付いていけるかが問題だが……こればかりはやってみないと分からないもんな。


 ――さて、と……帰りにミューイの様子でも見てくか。あいつ、人に馴染むの苦手だし、クラスで孤立してないか不安だし―


 そうして、俺が姉弟子のことを心配しながら一人で頷いている時だった。教卓に手を付いていたレフィリー先生は真剣な表情を作ると、周囲を警戒するようにしながら小さな声でとんでもないことを言い出してきたのだ。


「……これはまだ確定情報じゃないから、あなた達に伝えておくか迷ったけど……何かあってからじゃ遅いから先に言っておくわね。……今回の騒動だけど、実はうちを狙ったテロの可能性もあるそうよ」

「…………はい?」


 無理矢理考え事から引きずり降ろされた俺は、思わず間抜けな声を上げてしまう。テロ……? 何が?


 混乱する俺をよそに、隣に座るイサリナを始め、教室に居る生徒達が息を飲むように音を鳴らす。


 そんな俺以外の生徒達から恐怖と困惑の目を向けられたレフィリー先生が大人らしく真剣な表情でとある紙を黒板へと貼り付けると……そこに貼られた紙へと俺が目を向けた瞬間、顎が外れそうになった。


『今、俺の悪口を言わなかったか?』


 そこには、師匠が俺に向けたであろう手紙が貼り付けられていたのだ。いや、ちょっと待って? ほんとあの師匠、なに余計なことしてくれてんの?


 そうとは知らず、レフィリー先生はその紙を思い切り叩きつけると、真剣な表情で俺達へと視線を向けながら額に汗を流して続きを口にしていく。


「見て、この文章……これは一つの脅迫とも取れると思うの」


 いや、確かに脅迫だけどっ! それは俺に送ってきたものだからっ!

 そんな俺の心の中のツッコミも虚しく、冷や汗を流したレフィリー先生は深刻そうな表情で話を続けていく。


「……残念ながら、他の先生方も私と同じ意見だったわ。愉快犯の可能性もあるけど、大陸一の魔法使いが理事長を務めるこの学校にそんな馬鹿なことをする人間なんてまず居ない……そのことから、これはこの学校を狙ったテロの可能性が高い、という話になったの」


 ……すいません、それやったのうちの師匠なんです。そして、そんな馬鹿なことをする人間でほんとすいません。


 心の中で酔っ払い爺さんのことを謝っているものの、もちろん伝わるはずもなく、教室に張り詰めた空気が流れていく。

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