第6話 ち、治癒魔法!?

「は、花をこんなに出せるなんて……なら、本当にこの人が……」

「え~と……?」


 クラスの連中が何で騒いでいるのかが分からない上、隣の女子も何やら考え込むようにして俯いてしまい、事情の分からない俺は一人状況に取り残され、呆然としてしまう。


 もしかして、挨拶の仕方がまずかったか? いやいや、ミューイの部屋にあった本だとあんな感じだったし、掴みはバッチリだったはず……。


 まあ良いや、まどろこっしいのはやめよう。というか、こういうのは俺のキャラじゃないし。


「お父様は本気で……? そ、そうだとしても、私はまだ心の準備が……」


 そうして、俺は気を取り直して隣の女子への挨拶を再開しようとしていたのだが……何やらブツブツと呟いており、一人でお取込み中のようだった。……都会は変わった子が多いんだなぁ、うん。


 いや、独り言が多いからって引いちゃダメだろ、俺! 友人を作るなら少しくらい寛容にならないとな! そうと決まれば―


 どことなく頬を赤くしていて、怒っているのか恥ずかしがっているのか分からない女子を前に、俺は仕切り直そうと軽く咳払いをしてみせる。すると、明らかに動揺した様子でその女子に振り向かれてしまい、俺は一瞬言葉に詰まりそうになる。……いや待って。俺、本当に何もしてないよね?


 落ち着け、田舎者。ここで動揺してしまえば、相手の思う壺だ……いや、何と戦ってるかは知らんけど。


 ともかく、女性が動揺しているならそれをリードしてやるのが男の務めだろ! ミューイの本にもそう書いてあったしな!


 そうして、俺は一つ呼吸を置くと何やら顔を真っ赤にしている女子を安堵させるべくにっこりと微笑みかけながら声を掛けた。


「なあ、君」

「ひゃい!?」

「……ひゃい?」


 ……これは都会の返事か何かなのだろうか? なるほど、俺は都会について何も知らなかったらしい……とか思ってたが、どうやら、単に返事をした際に舌を噛んでしまったらしく、口を抑えながらぷるぷると肩を震わせている女子。


 その姿を見ていると、こう罪悪感が湧いてきてしまい、俺は言葉に詰まりながらもどうにか謝罪を口にした。


「……いや、あの……うん……なんかごめん」

「い、いえ……わ、悪いのは私で……っ~」


 そう言いつつも、舌が切れて痛いのか口を抑える女子。……なるほど、確かにこれじゃあ話しにくいよな。


「いや、悪かった。謝る前にまず治してやるべきだったよな。ほら」

「え……?」

「もう痛くないだろ?」

「あ、あれ……? ほ、本当に痛くない……」

「治癒魔法だよ。まあ、わざわざ俺がやるほどじゃなかったかもしれないけど、あまりにも痛がってるから治させてもらったんだ」


 俺が軽く魔法を使って怪我を治してやると、隣の女子は驚いた様子で何度か口を開いていた。別にそんな驚くことでも無いだろうに。


 なんで自分で治さないかは疑問だったが、ま、痛がっている時はそういうことにまで気は回らないもんな。こんな初歩的な魔法を使えないほどに焦っていたとは、隣の女子は焦ると弱いタイプなのかもしれない。


 そうして、俺が一人で考え事をしていた時だった。


「ち、治癒魔法だって!?」

「お、おい……う、噓だろ……?」


 そんな俺に、今度は周囲から花を咲かせた時以上の歓声が浴びせられた。今度は一体何なんだ?

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