第53話

「いいじゃんべつに。親戚だって言えば」



適当こいてんじゃねえと言って舌打ちする。あいつがこんなとこ来たら一発で囲まれるわ。こんな、垢抜けないやつばかりのなかで、あんな女が来たら噂になる。別に身内の贔屓目とかではない。そもそも身内というほど親しくもない。きっと言えば行くと言うだろうが、あの年で、こんな中学生のお守りなんか、家のなかだけで十分だ。




「だってさあー。弁当作ってくれんだべ? ぜってー来てくれるよ」



まだ言うか。



「お前は見たいだけだろ」


「そんなことねえって!」



おおげさに手を横にぶんぶん振る動作にいらっとしつつ、ふと今朝蛍が言っていたことを思い出した。





「お前だしって何かわかる?」


「は? だし? ……出汁?」


「取り方とか」


「……眞夏おまえどうしたいきなり……、そんなん知ってる中学生いんの」


「知らないならいい」



なんだ。みんな知らねえんじゃねえか。俺だけかと思った。



「もしかして、大学生のおねーさん出汁とってんの?」


「らしいな」


「え、なんなんそれ……お嫁さんになってほしい……」

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