第39話 第三次ミューズ河防衛線

「中隊長殿、戦車音です」 

 中隊長は報告を受けると無線を取り上げる。

「中隊発砲準備、敵戦車が現れ次第攻撃開始」

 ある程度の偽装をされて、戦闘の準備をしていた独立歩兵203中隊は発砲の准尉を整える。

 森の奥から縦列体系の戦車部隊が現れた。

「各車、発砲」

 中隊長の指示で、各戦車は一斉に20ミリ機関砲を打ち出した。 

 戦闘を進んでいたレイマーク軍の戦車は瞬く間に撃破される。

 それの状態を確認したレイマーク帝国軍の戦車部隊指揮官は素早く命令を出す。

 戦車を後退させ森の中に戦車を入れる。

「レイマーク少将、敵戦車部隊は中隊規模、援軍求めます」

「了解、戦車部隊の一斉突撃で敵を撃破する。待機だ」

レイマーク少将は快活に命令をくだした。

「参謀、隊列を組みかえろ。軽歩兵戦車中隊を先頭に、快速戦車中隊を二番目に入れ替えろ。後方で軽歩兵戦車を森の中に展開、支援砲撃を行わせる。その隙に、左右に展開している、第1大隊、快速戦車部隊を渡河させて、第2大隊の戦車中隊を中央突破を計る」 

第1大隊の大隊長が戦死して、指揮権を掌握した時に快速歩兵戦車中隊と軽歩兵戦車中隊の場所が入れ替わった。その事をレイマーク少将は言っているのだった。

「承知いたしました。車列を整えます」

 返答をすると参謀は命令の内容を考えて、通信兵の元に行くのだった。


第203独立戦車中隊

「ホエール先任曹長。敵軍は撤退したと思うか?」

「撤退はしていない様に感じます。森の中で待機している様です。援軍を待ってからの突撃渡河をしてくると思います。敵は2個大隊規模。姿を見せたら攻撃を加えていく事を提案いたします」

 ホエール曹長は中隊長に気に入られて今は中隊の先任曹長の任務に着いている。

「あぁ、それしかないな。小賢しいアルベルトは戦死したか?」

「連絡はありません。しかし、敵の通信で補給所が破壊されたと言う物がありました。義勇兵小隊の活躍かもしれません」

「どこまでも小賢しい奴だ。しかし、この攻勢を乗り切れば、敵は当分動けないと言う事か?」

「そうなると思います。動きがありましたね。多数の戦車のエンジン音が聞こえます」

「中隊長より、各部隊、敵戦車が現れ次第、攻撃を開始、敵を殲滅せよ」

 中隊長は訓練の行き届いた部隊なら、何の問題も無く、敵戦車部隊を減らせると思っている。だから命令自体は簡単なもので良いとも考えている。単純な命令こそが大事だと思っているだった。

「敵戦車部隊、発砲音」

森の中で炸裂音がホエール軍曹の耳に届いた。榴散弾だ。

敵はこちらの位置をまだ把握していないのと、榴弾を用意していないだろうと思う。

そして、快速戦車部隊が森から抜け出してミューズ河を渡ろうとして姿を見せた。

「打て」

中隊長の悲鳴じみた命令が発せられマルク共和国軍の戦車部隊の発砲が始まった。


                                  続く

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