怨み屋 あなたの恨み晴らします
時雨白黒
episodeⅠ道化師の笑い
怨み屋と言われる都市伝説がある。人の怨みや妬みを晴らすと言われているがその姿や正体を見た者はいない。普段は姿を見せぬが復讐を望むものにその姿を見せると言われている。しかし、それには代償が伴う。その代償は...
「はあはあはあはあはあはあ!た、助けて!だ、誰か!」
少年は息を切らしながら必死に逃げている。誰かに追われている少年は背後をいると刃物を持った人物が少年に向って歩いていた。
「どこにいるの~逃げないでよ~!じゃないと君を殺せないんだからさ~」
「ヒィ!こ、殺される!」
少年は自分を殺そうとする人物の不気味な笑みに恐怖し、咄嗟に隠れる。襲ってきた人物を撒くため息を潜めた。少年が安堵したが持っていた携帯電話が鳴る。少年は慌てて携帯電話を切ろうとしたが...
「うわ!どうしてこんな時に...えっ急に暗くなって...あっああああああ...」
影が暗くなり少年が上を向くと刃物を振り上げていた。
「み~つけた~」
「ああああああ...嫌だ...やだ...お母さん...嫌だああああああああああ!」
グシャっと鈍い音と共に少年の携帯電話が返り血で汚れた。携帯電話に母親が出ると何度も少年の名前を呼んだ。
「どうしたの!響也!響也!返事をして響也!」
「かあ...さ...」
少年は息絶えた。少年を殺した人物は携帯電話を手に取ると母親を煽る様に言った。
「ありがとうございました。あなたが息子さんに電話してくれたおかげで"響也君を殺せました"ありがとうございます、お母さん」
「そ、そんな...響也、響也!」
母親の取り乱す声を聴き携帯電話を切ると笑いが止まらなかった。
「あははははははははは!楽しいな~!自分より惨めで弱い子供を殺すのは爽快だって思わないかい~って君はもう死んでるんだった!ごめんね~」
そう言うと少年・響也の頬を刃物で叩き胴体に刃物を突き刺して狂ったように笑うと繰り返すように刺し続けた。殺された少年の頬には一筋の涙が零れたが彼の返り血で染まってしまった。
「楽しかった~これで9件目達成!次は誰にしようかな~」
その人物は変わり果てた少年を引きずりダンボールに居れるとバイクに乗り去った。
後日_新聞やテレビで報道された。少年・響也の自宅ではリビングのテレビから例のニュースが語られていた。
『ええ...今入ってきたニュースです。行方不明だった吉川響也君が先日遺体で発見されました。尚、ご自宅のダンボールに響也君の遺体が入っていたらしく、警察の調べに対し...』
「響也...ごめんね...私のせいで...」
ニュースの途中でテレビを消した母親は変わり果てたように仏壇に手を合わせていた。
***
朝刊を受け取ろうとした時にダンボールの存在に気づいた。開けてみると中に入っていたのは変わり果てた響也の遺体だった。
「何かしら?開けてみましょう...きゃあああああああああ!響也!」
すぐさま警察を呼んだが響也の死亡が確認された。
***
その日を境に母親はひどく後悔し、何も手付かずになってしまった。食材はなく、コンビニで弁当を買うために家を出た。
「どうして...響也は...私のせいだ!あの子を塾に行かせて帰りが遅くなったからだ...迎えに行けば...響也が死ぬこともなかった...」
「どうして...どうして...どうして...どうして...響也が...どうして...どうして...許さない...絶対に...恨んでやる...復讐を果たすまで...殺してやる!」
母親が呟き叫んだが何も出来ず帰ろうとしたが辺り一面霧に覆われた。戸惑っているとどこからか声が聞こえてきた。
「霧?どうして...?」
『本当に果たしたいのかい?』
『例え全てを失ったとしても?』
「...別に構わないわ!あの子を殺したやつに復讐を果たせるのなら!」
『分かったよ...あなたは合格だ。あなたを私のお店にご招待しましょう」
謎の声と共に霧が晴れて不気味な森に立っていた。目の前には一軒家の立派な屋敷が建っていた。
「ここは...もしも...本当に果たせるのなら!」
近づきドアをノックすると何やらヒソヒソ声が聞こえてくる。
『来たよ来たやったよ~人間が~』
『今日は何かな~何かな~』
聞えてきた声に反論しようとしたがドアが開いた。
『お待たせしました。どうぞ中へ。貴方のその恨みや妬みを晴らしましょう!その代わり...入れば二度と出られませんよ?その代償は...全てを失う覚悟はありますか?』
「あるわ!あの子を救えるのなら何も惜しくない!」
「ではどうぞ中へ。私、"怨み屋がその恨みや妬みを払いましょう"」
その言葉を聞いた謎の人物は笑うと母親を中に案内した。怨み屋と名乗る男と共に母親は屋敷に入るとドアが閉まる。ドアに掛けられていた看板が切り替わり"OPEN"から"CLOSE"となり霧が発生すると屋敷が消え去った。屋敷が消え去ると霧もいつの間にか消えた。
中に入ると真っ暗で不気味な雰囲気が漂っていた。
「真っ暗ね...」
と母親が言うと屋敷の主の怨み屋はろうそくに火をつけた。
『これはこれは申し訳ありません。今、ろうそくをお付けいたしましょうか』
怨み屋はそう言いながら手を叩くと屋敷は明るくなり中が見えるようになった。不気味な悪魔や銅像、叫んでいる絵が飾られていた。埃っぽい天井には蜘蛛の巣があちこち作られていた。
『どうぞ、こちらです』
「はい...」
『それにしても珍しいですね。ここに人が来るなんて』
「滅多にこないんですか?」
『そうなんですよ。あと忠告しておきますが...此処は屋敷の中です。私が良いと言った物のみ触れてください。私が良いと言ったもの以外に触れるとどうなるのか分かりませんよ』
「触ったらどうなるの?」
母親が不安そうに聞くと怨み屋は何も言わず不敵に笑った。母親はそれ以上は聞けず様子を伺っていると怨み屋は立ち止まった。
『着きました...どうそ』
怨み屋の声と共にドアが勝手に開く。中にはアンティーク物のテーブルや椅子が置かれていた。
『どうぞ、おかけください』
「はい」
『ようこそお越しくださいました。それでは..あなたのご依頼をお聞きしましょうか』
「はい..私は..」
母親が話しをしようとした時だった。背後に掛けられていた絵が動き出した。カタカタカタガタガタガタガタと次第に大きくなる音が不快で耳を塞ぐ。怨み屋は静かな声で"止まれ"と言うと絵は動かなくなった。唖然とする母親に怨み屋は言った。
『申し訳ありませんね。この絵が騒いでしまって』
「い、いえいえ..大丈夫です..」
『なら良かった...本当に』
「あの...答える前に一つ質問良いですか?」
『構いませんよ。何でしょうか?』
「あの..さっき動いていた絵ってこの屋敷中にありますよね。あれって一体何なんでしょうか?」
怨み屋は楽しそうに微笑むと母親に言った。
『ああーその絵の事ですか。なら、少しだけ教えてあげますよ。あれは"果てた姿"なんですよ』
「果てた姿って?」
『"役目を終えた者の末路"と言いますか..先程動いていた絵は一番新しいものですね』
「へえ...そうなんですか」
『そう..."役目を終えた"...ねえ』
意味深に笑う怨み屋は不気味な表情を見せる。すると突然ベルを鳴らした。
『では、客人をおもてなしいたします』
「もてなすって何を?」
『今来ますから...来ましたよ』
ドアがノックされ開くと体中に包帯を巻いた人物が入ってきた。
『彼はメイドのミイラですよ。お茶を持ってきましたからよかったらどうぞ。メイドおすすめの紅茶です。どうぞ』
と言われ置かれた紅茶は真っ赤に染まりカップは汚れていた。紅茶ではなく血に見えた母親は飲める気がしなかった。飲む怨み屋を見る。これは決して飲んではいけないとその場で理解し、その様子を見た怨み屋は称賛した。
『おや、飲まないのですか?』
「ごめんなさい...飲めないわ」
『...試して申し訳ございません。どうやらあなたはとても賢いようだ。大抵の方はここで引っかかってしまうのに...危ない所でしたね。もし、飲んでいたら今頃は腹を空かせたメイドの餌食になっていましたよ』
その言葉を聞いて鳥肌が立ちメイドのミイラを見ると母親を残念そうに見ていた。母親はその光景に思わず息を飲んだ。
『ルールを理解していただいて嬉しいです。試した甲斐がありましたから.所で知っていますか?もしも"怨み屋に出会った場合、飲み物も食べ物も決して口にしてはならない"という噂があるのです。破れば"二度と戻れない"そうですよ。冗談はさておき...そろそろ本題に入りましょうか?』
「よろしくお願いします。息子を、響也を殺した犯人に復讐がしたいの!」
『響也と言うのは貴方の息子さんですか?』
「そうなんです。先日、息子の塾の帰りが遅くて心配して電話を掛けたんです。そしたら息子は誰かに襲われていてしまったんです。その後息子を殺した犯人から息子の遺体が入ったダンボールが送られてきて...」
『なるほど...それであなたが...畏まりました。私、怨み屋があなたの代わりに怨みを払いましょう』
「ありがとうございます」
『では...その前にあなたには代償を払って貰いましょうか』
「代償ってなんですか?」
『貴方の代償...それは...』
母親は言葉を聞き取ろうとしたがノイズが入り聞くことは出来なかった。上手く聞き取れず眩暈はすると気を失ってしまった。
『これでまたコレクションが増える』
と笑った部屋には怨み屋しかおらず用意されたグラスは割れ中身が零れた。椅子が倒れたが微かなぬくもりがあり誰かが座っていた証拠を残していた。
『さて、果たしに行きますか』
怨み屋は景色の見える絵を眺めた後ベルを再び鳴らすとメイドのミイラが現れる。
『後は頼みますよ』
怨み屋が言うとメイドのミイラはお時期をし窓を開けると風が引き入れた。メイドのミイラが顔を上げる頃には誰もおらず掃除をし終えると窓を閉めた。すると上から絵が落ちてきた。メイドのミイラは見つけると真ん中に置き、先ほど動いた絵を右に飾った。部屋に鍵をかけようと絵を見た。飾られた新しい絵には死んだ骸を抱きしめた母親が描かれており、まるで先程の母親のようだった。メイドの悲しそうな顔をした後無言でドアを閉めると鍵を掛けた。誰も居なくなった広間に飾られたあたしい絵が泣いたように見えた。
時刻は11時過ぎ_路地裏にいた怨み屋は不気味な建物も壁に立ち例の人物について考えていた。辺りには霧が立ち込める。ふと顔を上げると対象者が男の子を襲い殺していた。
『おや、あれは...』
「ははははははははは!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」
「助けて..誰か...助け...死にたくない...死にたくな...お母さん...」
少年は泣きながら助けを求めるが叶わず殺され、遺体を対象者が刺し続けた。血まみれに染まる姿を見ても怨み屋は助けない。咎めることもなければ助けることもしない。怨み屋には関係ないからである。哀れな姿に同情した。
『彼は人を笑いながら殺すようですね。まるで彼は"ピエロ"のようだ。そんな笑い好きのピエロにはお似合いの復讐をいたしましょうか。それではあなたの復讐を叶えましょう』
『人間と言うのは何とも醜い生き物です。そうは思いませんか?申し訳ありません、もう死ぬのでお答えできませんね。これが...人を殺した末路だなんて滑稽ですね』
「この...悪魔...」
『そうですよ。私は悪魔ですから...あなたが死のうが喚こうが関係ない。これもご依頼ですから...あなたに復讐します』
怨み屋は笑って対象者の頭を踏みつけると少年らを殺した殺人鬼は死に絶えた。
『最悪です。あなたのせいで大事な服に帰り血が着いたじゃないですか。まったく...これでご依頼完了ですね。死んでいる所悪いですがあなたには"具材"になってもらいます』
そう言うと怨み屋は遺体を引きずり屋敷へ向かった。
数時間前_対象者は子供を殺そうと夜を彷徨っていた。霧が濃いが人気も少ないため殺すのにはもってこいだった。対象者が周囲を見回すと少年が一人で歩いており殺すターゲットを見つけ悟られぬように話しかけた。
「今日は霧が濃くて見えにくいけど子供を殺すのにはもってこいだ。あ!みーつけた。あそこに子供がいる」
「ねえ、君ひとりかい?」
「うん、一人だよ。貴方は誰?」
「僕はね...君を殺す殺人鬼だよ」
少年にナイフを見せる。顔は見えないが少年は恐怖で怯えているはずだ。その証拠に走って対象者から逃げた。対象者は追っかけっこを楽しむように追いかけた。対象者は逃げる子供を追いかけるのが好きで、霧で見えずらいが道のりを知っているため追い詰めようと近づいた。
「ほらー逃げないと殺しちゃうよー」
「馬鹿め!」
「袋の鼠だ!」
少年は声を出さすに無言で走る。少年は怯えているのだろうと踏んだ対象者は狙い通り行き止まりの道に追い込んだ。少年が道に入った時口元が笑ったように見えたが対象者は気づかなかった。対象者が行き止まりの道に入ると誰かにぶつかり少年だと思い肩を掴むが掴んだのは別に人物だった。
『あの?どうしたのですか』
「え、違う!ガキじゃない!」
『ガキ?子供の事ですか?』
「ああ、そうだ。あんた見てないかい?」
『何言ってるんですか?子供ならいるじゃないですか。貴方の後ろに...』
対象者が振り向くと殺してきた子供たちが立って居た。頭から血が流れたり首が無かったり殺した状態で動いている。
「うわああああああああああああああああああ!な、なんで!」
『何を驚いているんですか?全てあなたが殺した子達ですよ。彼らはあなたに会いに来たんですよ。貴方が自分を殺したって』
「来るなよ!来るな!来るな!」
『あなたは助けを求めた彼らをどうしましたか?嬲って追い詰めて殺したんです。ほらー、彼らも行っていますよ。貴方もこちら側に来いとね』
「どうして僕を殺したの...僕、あなたのせいで死んじゃったんだよ」
「お母さんに会いたいだけなのに...」
「痛いよ...」
「どうして殺したの...」
「人殺し...」
「苦しいよ...」
「やめろおおおおおお!死ね死ね死ね!死んだ分際で!お前も薄気味悪いんだよ!しね!」
殺した子供たちに囲まれた対象者はナイフで切ると無抵抗で倒れた。そう言うと謎の男を真っ二つ切り裂いた。切り裂かれた男は笑うと不気味な言葉を言い残し消えた。
『ああー言っちゃった。あなたはつくづく救えない人ですね...いいでしょう。皆さーん、彼を好きにしていいですよ。自分がされたように"彼を殺せ"』
「な、何で生きて...お前ら動けないはずじゃ!く、来るな!」
死んで動けないはずの子供たちが動き出し、対象者に襲い掛かった。全身ナイフで刺されたり切られたりして、死にかけた。
「うわああああああああああああああああああ!痛い、痛い、痛い、く、来るな!来るなあああああああああ!死にたくない!」
『フフフ、殺した彼らに殺さるなんて滑稽ですね』
「お前は...さっきここにいたガキ!」
『本当に気づかないなんて滑稽ですね』
「姿が変わって...そ、そうかよ。最初から...お前の指示だったのかよ」
『そうですよ。これはご依頼ですから...あなたに復讐して欲しいと言うご依頼です。あなたならまんまと引っ掛かってくれると思いましたよ』
「ち、畜...生」
『人間と言うのは何とも醜い生き物です。そうは思いませんか?申し訳ありません、もう死ぬのでお答えできませんね。これが...人を殺した末路だなんて滑稽ですね』
「この...悪魔...」
『そうですよ。私は悪魔ですから...あなたが死のうが喚こうが関係ない。これもご依頼ですから...あなたに復讐します』
怨み屋は笑って対象者の頭を踏みつけると少年らを殺した殺人鬼は死に絶えた。
『最悪です。あなたのせいで大事な服に帰り血が着いたじゃないですか。まったく...これでご依頼完了ですね。死んでいる所悪いですがあなたには"具材"になってもらいます』
『さて...最後の仕上げを始めましょう。あとは任せましたよ』
怨み屋はそう言うと屋敷へ戻った。ゾンビに遺体を任せた後怨み屋は広間に向かった。
屋敷に戻った怨み屋は広い広間に座りベルを鳴らすといつの間にか依頼者が現れて椅子に座っていた。
「あ、あれ?私は一体何を」
『おや?お客様...いかがなさいましたか?』
「いえ、何でもないです。けど...依頼はどうなったんですか?」
『それなら...』
「ひい!こ、これは...な、なんですか、これ!」
怨み屋は指を鳴らすとメイドのミイラがやってきて何かを運ぶと依頼者の前に置いた。それは料理された例の殺人鬼だった。母親は動揺して怨み屋を見る。料理された遺体を怨み屋は食べ始めてその光景に戦慄した。
『あなたがお依頼した殺人鬼ですよ』
「え?なんて食べるんですか?」
『いけませんか?何か問題でも』
「だって人間ですよ...それを料理して食べるなんて」
『おかしくありません。なぜなら先ほど私が飲んでいた紅茶は人間の****ですから』
「え?」
それを聞いた母親は吐き気が遅いカーペットを汚した。割れたカップと共に汚れる様を見て怨み屋は深いため息を吐いた。メイドをを呼びつける怨み屋を母親は睨みつけて叫んだ。
『汚いですね...全く。メイドを読んで綺麗にしましょうか』
「こんなのいかれてる!人を食べるなんて!」
『フフフ...』
「何が可笑しい!」
『人間と言うのは実に面白い生き物だと思いましてね。自分が理解できないものだと錯覚した瞬間それ自体を否定する。私から見ればあなたも相当いかれていると思いますよ』
「そんなこと!」
『自分の息子は殺されたとしてもあそこまで狂い散らすなんて見てて滑稽ですね。あなたは殺された息子を愛してはいなかった。むしろ自分が殺したいと思っていたのではありませんか?』
「そんなことはい!私はあの子を愛して!」
『こころから言えますか?私も馬鹿ではございません。依頼者の事は見定めます。貴方のように狂い自分の殺す対象を奪われその矛先に殺意を向けるほうがよっぽど狂っています。そして私に依頼するぐらいのまるで道化師のようだ...』
「あんたに言われたくはないわよ!」
母親が強く叫んだ時に強い風が吹きろうそくの火が全て消えて天井の薄明りのみとなり怨み屋の顔は見えなくなった。
『あなたはつくづく救えない人ですね。でも考えなかったのですか?ご依頼の代償について...』
「依頼の代償...」
『命には命で...それがこの世界の原理ではありませんか』
「ま、まさか...私を殺すの!」
『なぜ拒むのです。私は忠告しましたよ。しかし、貴方は言いました。復讐を果たせるのなら関係とおっしゃいました。忘れたとは言わせませんよ』
「そ、そんな...なっこの声!」
辺りが薄暗くなりどこからうなり声が聞こえた。
『実はあなた以外にお客様をお呼びしたのです。なんせ依頼なんて滅多に来ませんから...対象者と依頼人フルコースなんて...』
「......」
『そんなに怯えないでください。あなたは彼らのディナー食べて頂けるのですから...それに皆さまもう待ちきれないですね。それでは準備に参りましょうか!』
するとドアが開き大量の料理が運ばれ見えない何かが喰い荒らしている。
『それではメインディッシュの時間ですね』
怨み屋が指を鳴らすと殺人鬼の遺体と母親は気づけば机の上に座らせられていた。傍には腐った野菜や果物が置かれていた。
「な、何!いっいや...」
『皆さま味付け致しましょう!野菜にはドレッシングを!ステーキにはソースを!メインディッシュにはとびっきりの物を!』
「何これ...血が!」
怨み屋が言うと食べ物に何かが掛けられた。遺体や母親に掛けられた。掛けられたのは血液だった。
『それでは皆様、そろそろ食べごろのお時間です!』
「やっやめ!」
その時化け物の声が響いた。
『早く食わせろ!』
『喰いたい!』
『人間喰う!』
『殺せ!』
『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!』
「もうやめて!私が悪かったから!」
母親は響く声に耐えきれず耳を塞ぎ叫んだ。叫ぶと声も聞こえなくなり怨み屋もおらず夢だったのではないかと安堵したその時だった。ドアの鈍い音が聞こえて音の方を見ると怨み屋が母親を見て不気味に笑った。
『それでは皆様...どうぞ召し上がってください』
「なっ...そんな...い、いや...」
化け物と一瞬目が合うと次々に母親に近づいて来た。食い散らされて痛くて助けを求めた。
「いっいやあああああああああああああああああああああああああああああ!」
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、死にたくない!あがっ!あああああああああああああああああああああ!だすげてええええええええええええ!」
醜い叫び声と共に依頼者は食い殺されて化け物は去った後窓を開けると怨み屋は死んだ母親に話しかけた。
『これでご依頼完了です。どうでしたか?ご満足いただけましたか?命には命でその命の重みをご理解いただけましたか?なんて...話しかけてもすでに死んでしますから...仕方ない。メイドを呼んで片付け貰いましょうか』
怨み屋はメイドの頼むと広間を綺麗に片づけた後残った母親の遺体を食べた。
『つまらない...人間とはやはり不味いですね。あなたが懐かしいです...』
怨み屋は窓の外居見える満月を見つめてそう静かに呟いた。するとコウモリが飛んできて怨み屋に手紙を渡した。
『またご依頼ですか...さて、今度はどんなご依頼でしょうか』
怨み屋はそう言うと風が吹きカーテンが揺れて窓が隠れた。カーテンが動くと怨み屋の姿はなかった。
episodeI 道化師の笑い (終)
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