第1話 別れに『儀式』を
このバーを作ったきっかけは、山瀬自身の失恋体験にあった。大学院で認知科学を学んでいた彼女は、「死別に葬儀があるなら、恋人との別れだってきちんと見送る場が必要なのでは?」と思い立ったのだ。周囲には「たかが失恋」と片付けられてしまいがちな痛みでも、本人には大きな喪失感がある。それを『弔い』という形で丁寧に扱うことで、人の心は少しでも軽くなるのではないか。そう考え、山瀬は仲間のカウンセラーやセラピストと連携しながらこの小さなバーをオープンさせた。
ビルの2階にある店内は、黒を基調としたシックな内装。こぢんまりとした空間だが、暖色系の照明とアロマのやわらかな香りが、落ち着きと安心感を与えてくれる。横浜という街の喧騒から少し離れたような、この不思議な癒やしの空気こそが、山瀬が目指した『ハートリリースセレモニー』の大切な舞台装置なのだ。
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