第4話 語られる半生(1)

そう昔でもない話のちょっとだけ昔の話。



伝説の英雄『桃太郎』として桃の中でドンブラコしていた桃太郎は、桃独特の甘い香りに包まれてとても苦しんでいたそうな。


桃の香りなど色気づいたばかりの女子が好む匂いだと一刀両断していた男桃太郎にとっては断じて許容しがたい環境であったそうな。


そして何と言っても裸ということで桃のヌルヒヤ感を全身で体感するのは生理的に無理だったそうな。


桃の香りとヌルヒヤ感、そして山の渓流を流れるための激しい揺れのため何度も胃から込み上げてくるものを頑張って押し留めてきたそうな。


桃の中でやってしまったら大惨事になることは幼い桃太郎にもよくわかっていたそうな。



「あと少し、あの先の急流を越えたら目的の場所」



桃太郎は垂れる鼻水をすすりながら、これまでの苦労を涙をぬぐいながら思い出しておったそうな。



「あの人たちが俺のお爺さんとお婆さん。俺が幸せにしてやる二人か。ここで会うのはお婆さんだけだったはずだけどな。まあ、いいか」



桃太郎は見えてきたお爺さんとお婆さんの姿に心を躍らせたそうな。



「おーい、こっち見てよ。こんな非現実的な大きさの桃が流れてますよ~。こんな桃、持って帰って割るの一択しかないですよ~」



しかし、お爺さんもお婆さんも川の中を覗き込んでいて桃太郎がドンブラコしている桃には気が付かない様子だったそうな。



そこで危機感を抱いた桃太郎はヌルヒヤ感マシマシになる覚悟で桃の果肉の壁に体を押し付けて桃の重心を傾けたそうな。そうして桃はお爺さんの腰にめがけてドンブラコしていったそうな。



ドン


「あ、痛たた」


「爺さんや、どうした…なんじゃこの物体は」


「なにかがぶつかって…なんじゃこの桃は」


「桃? 桃じゃ、爺さん。これ桃じゃぞ」


「まったく、こんな化け物桃を作るとはどこの外資じゃ。クレームじゃ、クレーム」


「爺さん、これは金になる…」


「婆さん、流石…」




「…おーい、俺はどうなるんじゃー」



お爺さんとお婆さんにスルーされた桃太郎のドンブラコは川の下流まで続いたそうな。


もちろん、桃の甘ったるい香りにヌルヒヤ感に揺れまくる桃内部、桃太郎がいろいろと我慢できなかったのは言うまでもなかったそうな。


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