桃から生まれたかった桃太郎
みかん畑
第1話 そう昔でもない話
昔々のだいぶ未来、つまりそう昔でもない時代、お爺さんとお婆さんが住んでいました。
お爺さんは山に松茸を盗みに、お婆さんは川に砂金を集めに行きました。
お爺さんとお婆さんは生活が苦しかったのです。
国民年金だけではやっていけなかったのです。
若い頃にブイブイ言わせてたのをちょっと後悔しながら日々金策に勤しんでいました。
「爺さんや、季節でもねえのに毎日山に行くのやめねえかね。爺さんでもできるバイトだってあるんじゃし」
「婆さんや、松茸盗りは甘くねえ。今から前もって生えそうな場所をチェックしとかねば、ここ数年の間に妙に多なった海外勢に先に盗られてしまうんじゃ。婆さんこそ、残ってねえ砂金集めなどしとらんと掃除のバイトでもしたらどうじゃ?」
「爺さんや、この辺は昔金鉱山で大儲けした大名がおったと言われておるのをもう忘れたのか。その話聞いて真っ先に飛びついたのは爺さんじゃないかね。飛びついといて早々と諦めて一獲千金の松茸に走るなんて、ギャンブルが過ぎるとは思わんのかね」
「婆さんや、こんな何千回とやってきたやり取りを繰り返していることが無駄なんじゃ。わしゃ、行くぞ。止めてくれるな」
「爺さんや、止めはせんが、次の年金が入るまでは食料バンクの古々米しかねえことだけは忘れるでねえぞ」
お爺さんとお婆さんはそれぞれ山と川へ出かけて行ったそうな。
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