第5話 11:45-12:30

 チャイムが鳴る。

 午前中は打合せとメールの返信に追われている内に終わった。

 午後一で部内の打合せがあり、そのあとは支社開催の会議に出席することになっている。

 書きかけのメールを慌てて仕上げ、私は席を立った。


 朝コンビニで買ってきたパスタを冷蔵庫から取り出し、オフィスの端に置かれた電子レンジに入れる。

 600W3分間を指定し、温まるまでの手持ち無沙汰な時間を有意義に過ごすべくスマホを取り出した。


 ***


■『雪より甘く』結音(Yuine)さん

 https://kakuyomu.jp/works/16818093088970373405

 推し文章表現

「彼が、そっと少女の魂を すくった。」

→様々な解釈の余地を残した本作。

 あえてのこの表現……色々と考えさせられる奥深さに惹かれました。


 Side毎に分けられた作品構成から対になっているサブタイなど、細部まで目配りされた作品です。

 悲しくせつなく静かに綴られる物語の中には、確かな情熱が眠っている。

 炎と雪、選んだ結末は同じでもプロセスの異なるふたつの魂の行方。

 行き過ぎた気持ちは破滅へと向かって行ってしまうのかも知れませんが、それでも想いを寄せられたことは『すくい』であってほしいなぁと思いました。

 結音さん、素敵な作品をありがとうございました。


 そして、たまちゃんを推して頂き、ありがとうございます!

 ファンサとして、リクエストテーマ『雪』で1,000字掌編書かせて頂きました。

→『雪降る荒野で君を待つ』

 https://kakuyomu.jp/works/16818093093321778042



■『闇よりも深い夜に響くノイズを表現したいもの』榊琉那@The Last Oneさん

 https://kakuyomu.jp/works/16818093089432950083

 推し文章表現

「ラリーズの神髄は、ライブの中でしか存在しない。単なる音だけではダメなのだ。」

→ライブと音源は似て非なるもの……!

 やっぱり生が一番ですよね!!(`・ω・´)


 実は本作で裸のラリーズを知りました。

 早速ググってみたところ動画も発見!

 観てみたら本作でヒロシが語っている通り、かなりの衝撃でした……勿論もちろん生で体感するものとは差があるでしょうが、確かに光のストロボっぷりがすごい。

 そこに叩き付けられる想いを吐露するような歌、ひずんだギターの音。

 確かに尖っている、でも心に足跡を確実に刻み込む、そんな音楽。

 人それぞれに刺さる音楽は違って、万人に好まれるものもあれば、誰かひとりの心を救済してくれるものもある。

 そんな熱い気持ちがひしひしと伝わってきて、どんどん読み進めてしまいました。

 榊さん、素敵な作品をありがとうございました。


 そして、たまちゃんを推して頂き、ありがとうございます!

 ファンサとして、リクエストテーマ『表現力』で1,000字掌編書かせて頂きました。

→『その意味は、恋。』

 https://kakuyomu.jp/works/16818093091509782892



■『添い寝』ヒニヨルさん

 https://kakuyomu.jp/works/16818093089345408081

 推し文章表現

「こんな午後はあと何回続くのだろう。」

→『こんな一日』ではなく、『こんな午後』。

 確かに続いてほしいのは『午後』なんですよね。

 絶妙だと思いました。


 まず惹かれたのは『ハシコ』というネーミング。

 そして二人の関係性が……!

 特に意識していないハシコに対して、マドカは……。

 読みながらきゅんとしつつ、せつなさにもだえてしまいます。

 特に中盤のパンケーキのたとえが秀逸すぎて。

 ふと自分がいつも一緒に過ごしていた旧友のことを思い出してしまいました。

 読み手の記憶にアクセスしてしまう程のリアルな描写、素晴らしいです。

 ヒニヨルさん、素敵な作品をありがとうございました。



■『囁きのオウムアウア』大隅 スミヲさん

 https://kakuyomu.jp/works/16818093090081310150

 推し文章表現

「その恒星間天体は『オウムアムア』と名付けられた。ハワイ語で『遠方から来た斥候』という意味を持つその名が示す通り、それは太陽系外から飛来した史上初の天体であった。」

→ネタバレにならなさそうな範囲で……このネーミングを持ってくるところが天才的だと思いました。


 ひえぇ……(´;ω;`)とチキンの私はびびるような描写が出てくるものの、気になってついつい読んでしまう……!

 人を引き込む文章力が素晴らしいです。

 ラストもものすごい絶望感で、それを予感させて終わるのがまた……。

 そして良すぎるのがタイトルセンス!

 どうやったらこういうタイトルを思い付くのでしょう……あやかりたいです……。

 大隅さん、素敵な作品をありがとうございました。



■『世を終わらせる雷鳴』亜咲加奈さん

 https://kakuyomu.jp/works/16818093090109765765

 推し文章表現

「おぬしが生きるか死ぬるかを決めるのは、わしだ。おぬしではない。わしに命ずるなど、心得違いもはなはだしいわ」

→強キャラ感が半端ない台詞せりふ……!

 このあとの展開も知った上でもう一度読むと、更に圧倒されてしまいます。


 三国志は『蒼天航路』しか履修していない私ですが、とても読み応えがあり楽しませて頂きました。

 歴史小説は難易度が高いと思うのですが、力任せしない説得力!

 孫権という一人の男が持つ様々な魅力を高い筆力で描き切っています。

 読者も于禁と同じ思いで孫権を眺めてしまう……。

 ラストとタイトルの符合も見事です!

 亜咲さん、素敵な作品をありがとうございました。


 ***


 丁度パスタを食べ終えたところで作品を読み終える。

 『世を終わらせる雷鳴』のような重厚な歴史モノにも出逢えるとは……カクヨムは本当に奥深い。


 時計を見るともうすぐ昼休みも終わりだ。

 『添い寝』の影響でパンケーキ欲に火が点いたけれど、コンビニにおやつを買いに行く時間はない。

 それにしても『囁きのオウムアウア』は強烈だった。

 このあと出張だが、青い髪の女性を見ても絶対近付かないようにしよう。


 スマホの通知で天気予報を見ると、明日は雪が降るそうだ。

 今日までは天気が持つということでほっとしつつ、『雪より甘く』が脳裡のうりよぎった。


 さて、13時からの内部打合せを終えたら、支社に移動しよう。

 『闇よりも深い夜に響くノイズを表現したいもの』を読んだお蔭で、移動中に好きな音楽を聴きたくて仕方がない。

 私は食べ終えたパスタの器をゴミ箱に入れて、鼻歌交じりに席に戻った。

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