第40話 有言実行
緩い傾斜が始まり、峠越えに入ったことを教えてくれます。
関東ではよくみるラーメンショップが見えてきました。もちろん閉まってますが……今、Googleマップを見るとナマズ峠というそうです。地元の観光サイトにも載っているラーメンショップ。白髪ネギが入ったラーメンが美味しいそうですが、関東でもそのラーメンなのです。関西でも同じ味なのか、今、気になります。
楽に峠を越えてしまいました。峠が1つと話を聞いていたのですが、まだ岡山県に入っていません。やっぱり少し下っただけでまた登り始めます。どうやらあの程度の峠を地元の自転車乗りは峠と数えないらしいです。その程度は予想していたぜと自分を奮い立たせます。だって自分も地元だったら忘れてるくらいの峠でしたから。
自転車のギアはとっくに1番軽いギアです。もう無心で登っていくしかありません。いつの間にか山陽本線が右手に見えてきます。鉄道が通っているということは比較的傾斜が緩い場所ということです。
「この先、自転車専用道、自転車・歩行者はこちら」という看板を見つけて右手に折れます。山陽本線の踏切も渡ります。古い道です。旧道かなと思いましたが、今、調べてみるとやはりそうで、西国街道というものらしいです。
もう薄暗くなってきています。
左手の一段低いところを電車が走っていきます。
うーん。このまま夜になったら心が折れるなと思いつつ、傾斜がきつくなってきた細い道を走ります。人家とか皆無です。完全に廃道に見えます。廃屋もあります。枯れ葉が掃除されずそのまま落ちるままになっているのでタイヤが滑ってしまうのではないかと怖いです。ふわふわな感じです。それでいて傾斜がきつい。サイコンで確認すると10%もあります。メッチャ辛いです。
……カフェイン剤を飲んでいてよかったなあ、と思います。
バテたままだったらきっと降りて押していたことでしょう。私はよほどのことがない限り、上り坂で降りて押すようなことはありません。自転車乗りとしてのつまらないプライドですが、踏める限り踏むのです。たとえ太ももの筋肉を使い切っても上れるだけは……上るのです。
もう暗くなってきています。あまりにもきついのでブロックダイナモはやめてヘッドライトを点けます。これはもう最後の手段です。ブロックダイナモをやめるとギア1枚分くらい軽くなります。がんばって枯れ葉が敷き詰められた廃道にしか見えない迂回路をひたすら上ります。
ああ、見えた!
薄暗い中、ちょっと右に回り込んでから、頂上のようなものが見えました。
17時11分。
道路標識にやっと「岡山県」「備前市」の看板が!
ようやくたどり着きましたよ、岡山に。
写真を撮って娘に連絡を入れます。娘は
〔有言実行だ!〕
とすぐに返してくれました。
そうだな……確かに来た。計画通り。少なくとも岡山県には。
しかし岡山県に来るだけで満足しません。今日中に目的地に着くのです!
それは「吉備津」。
弥生時代の岡山の中心だった古代の港があった土地。そこが目的地です。
岡山市内まであと少し。
私は県境を、船坂峠を越え、岡山県入りしたのでした。
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