第29話 痛恨の(文字通り痛い)失敗をする

 大津から京都はすぐでした。


 逢坂を越えます。


 これやこの 行ゆくも帰 かへるも 別わかれては 知しるも知しらぬも 逢坂あふさかの関


 百人一首に名高い逢坂の関がここにあったんですね。峠になっているので出入りを監視するのには確かにいい場所だったんだと思います。今も道幅が狭くて交通量が多いので、荷物満載の旅自転車が通るのは大変です。体力的にはそう大変でもありませんが。


 逢坂を越えて、坂を下り、京都盆地入りです。


 これから市街地を通って東山を越えなければなりません。国道1号線を通っていくのですが、軽車両通行止めになり、迂回します。迂回するとき、急な階段を下らなければならなくなります。自転車用の脇の傾斜を使ってもかなり急。きっと本当の迂回路が別にあるのでしょう。しかしそのとき、右(私の場合アメリカ式にしているので後ろ)ブレーキがロックしました。レバー引かなくてもブレーキが効いている状態なので急な傾斜が降りやすかったので結果オーライです。しかし降り終えてからチェックすると力を入れないとブレーキレバーが戻りません。どこが悪いのか。ケーブルをチェックしても分かりません。もともと動きは渋かったのですが……出発前に店に点検に出しておくべきだったと後悔。大問題です。


 そして国道1号線の脇の歩道まで来た頃、右ブレーキを使っても、レバーを手で戻せばこのまま行ける気がなんとなくしてきました。冷静に考えれば片方のブレーキで残り200キロくらいを走ることになります。それ、無理ゲーです。修理しようにも12月31日なので自転車屋さんだってやってません。でも行ける気になってしまいます。魔が差したとしかいいようがありません。


 そして本当に魔が差してしまいます。必要もないのにチェックしたくなって右ブレーキレバーを引いてしまいました。当然、強烈に後輪がロック、ブレーキレバーを戻す間もなく自転車は倒れ始めます。前のお話でもご説明しましたが私が履いているのはビンディングシューズといって、ペダルと靴がくっついています。咄嗟のことなので靴をペダルから外せません。そのまま左側に倒れ込み、左膝を強打してしまいました。


 あまりの痛さに悶絶し、少し痛みが引いてから、自転車を立てます。そして金網に立てかけて痛みをこらえながらいろいろチェックします。坂の上りでやったので速度は出ていません。なので幸い、自転車にダメージはありません。


 右ブレーキレバーを引いて放置して元に戻らず。さっき変わりません。しかし落ち着いて観察するとハンドルバーにつけたフロントバッグが重さでお辞儀していて、そのために左ブレーキレバーを押していることが判明。分かってしまえば単純です。固定ボルトを緩めてフロントバッグを元の位置に戻します。それだけでブレーキのトラブルは解消。


 しかし当たり前ですが左膝は痛いままです。でも結構引いてきた気がします。こんなこともあろうかと用意してある消炎剤を塗り、痛み止めの塗り薬も塗ります。かなり楽になります。これからどこまで行けるものかと不安になりながら、東山を越えたのでした。

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