Cys:33 天上に響く神々のステージ
「星屑の中に、ひとひらの光───願いを込めて
それと同時に
───凄い! まるで、聖女が祈りを捧げてるみたい……!
私が目を丸くする中、
「終わりのない時を越えて───私たちの歌が響くのは、アナタのために───♪」
それと共に全身から溢れ出す黄金色の光は、全てを赦す癒しの光のよう。
次に
「涙を隠した夜も───すべてを照らす光になる───♪」
煌めく星々と赦しの光に神秘性が溶け込み、神々しい光に変わってゆく。
その光の中でスタイリッシュなダンスをしている
「どんな闇も───怖くない───♪」
「私たちが、ここにいるから───♪」
彼女の眼差しが私の心を一瞬でギュッと掴んできた瞬間、中央に立つリネットがバッと片手を上に掲げた。
「天上のシンフォニー、響け───♪」
リネットの歌声が私の心を閃光のように貫く。
みんな凄いけど、特にリーダーのリネットはその中でも別格かもしれない。
それと同時にメンバー全員がそれぞれのポーズを取り、全身の煌めきを最高潮に輝かせて歌ってゆく。
「無限の空に歌い続ける───♪ 儚くて強く、美しくて───♪ あなたの心を、照らし出す───♪
最後の音が、まるで宇宙に消えていくように響く。
5人の歌声と動きには全くブレやズレが無い。
振り付けはもちろん、立ち位置が入れ替わる時の髪の流れまで完璧。
なにより、歌声も輝きもみんな違うのに、それぞれの個性が完璧なバランスで調和されて、圧倒的な煌めきを作り出してる。
観客達の熱狂も凄くて、会場が熱気で壊れそう。
ステージライトもこれまで以上に輝きを増して、まるで本当に天上の国にいるみたい。
───これがAIドル……私が戦わなきゃいけない相手……!
手に力を込める事すら忘れ、私はただただ圧倒されてる。
大げさかもしれないけど、宇宙人に遭遇したぐらいの衝撃。
打倒AIドルを目標に掲げて動き始めてきたけど、勝つとか負けるとか、そんなレベルの話じゃない。
正直、AIドルがここまで凄いとは思ってなかった。
───今の私じゃ、勝負にすらならない……
その気持ちをヒシヒシと感じた私の身体は、小刻みに震えてる。
圧巻のパフォーマンスを目の当たりにした感動と同時に、絶望的な恐怖が止まらないの。
勝てる気が全くしない。
玲華さんが言ってた事が、今なら全部分かる。
いくら人間が努力しても、AIドルの“完璧な美しさ“の前では霞む。
“未来その物“というのもその通りだ。
「耕助さん、私……」
その先の言葉が出て来ない。
頑張ります! と、言いたいけど、嘘になるようで言えないの。
代わりに喉元まで、別の言葉が出かかってる。
───無理です。AIドルには勝てません。少なくとも私じゃ決して……
その気持ちを察してくれているのか、耕助さんは何も言わない。
横に座ったまま、私を静かに見つめている。
リネット達を目の当たりにした私が何て言うのか、それを本当は早く聞きたいハズ。
いや、きっと私の気持を分かってるのに、敢えて何も言わないんだ。
耕助さんの気持を考えると胸が痛くて、私は少しうつむいた。
───もし私が逆の立場だったら、どうするかな……
自分の夢を叶える可能性があると見込んだ相手。
しかも、事務所の専属契約までした相手が辞めそうだとしたら、きっと私なら全力で止める。
下手したら、相手が言いかけた言葉を遮ってでも、阻止しようとするかもしれない。
けど、私はそこまで考えた時に思った。
それならわざわざ、こんな凄いのを見せない。
見せるとしても、もっと実力をつけてからだ。
───なのに、耕助さんは私に見せてきた。いや、見せてくれたんだ。それはきっと……
そこまで想いを巡らすと私はスッと顔を上げて、耕助さんを真っすぐ見つめた。
自分自身にも耕助さんにも、私は嘘をつくつもりはない。
「耕助さん。私、このままじゃAIドルには勝てる気がしません。オーデションで戦うのはリネットたち以下だとしても、絶対無理です……」
「そうか……で、どうする?」
耕助さんは真摯な眼差しを向けたまま、静かに問いかけてきた。
こういう時、耕助さんはやっぱり大人なんだと実感するよ。
普段おちゃらけたり、やさぐれたりしてるけど、ここぞという時はどっしり構えてるから。
決して答えを急かしてこない。
逆に、私は自分がつくづく子供だと思う。
けど分かってる。
今、自分が何をしなきゃいけないのか。
ただ、これは勢いだけで言っていい事じゃない。
───頑張れ私。言ったら決して、もう戻れないよ。いいんだよね……!
私が心に問いかけると脳裏に、ううん違う。
魂からの声が聞こえてきたの。
『それでいいのよ。なんの為に“転生“してきたの? “歌う為“でしょ。思い出して……!』
これは私の幻聴かもしれない。
“転生した記憶“なんてまったくないから。
ただ間違いないのは、この瞬間私の心に灯火が灯り胸が熱くなったこと。
それと同時に、恐怖で凍てついていた心が
───私は、絶対逃げない! この灯火と共に前に進むんだ……!
心にその誓いを灯したまま、私は耕助さんに告げる。
「今のままじゃ絶対勝てない。だから耕助さん……私をどこまでも強くしてください!
私が身を乗り出すと、耕助さんはニッと不敵な笑みを浮かべた。
その笑みは、私がここまでに戸惑う事を予想はしつつも、この答えに辿り着く事を信じてくれてた事が伝わってくる。
「ああ、もちろんだぜ澪。あの浜辺で言ったように、俺がお前さんを最高の“人間アイドル“に育ててやる! しっかりついて来いよ」
「はいっ! 耕助さん!」
私の返事が事務所に響く。
それを受け止めてくれた耕助さんは、ソファからスッと立ち上がった。
そして、キャビンの中から出してきた白い紙袋を、片手で差し出して微笑んだ。
「澪、こいつをお前にやる。受け取れ」
「えっ、これは……なんですか?」
私はそれを受け取り、目を丸くして見つめてる。
滑らかな紙袋で耕助さんの骨太な手とは対照的。
中には、長方形で艶のある桜色の箱が入ってた。
柔らかな色だし、デザインもオシャレ。
箱には金色の刺繍が施されてて、青いリボンで結んである。
見てるだけでドキドキしちゃうよ。
───何が入ってるんだろう……! 空けていいのかな……
その気持を察したかのように、耕助さんは軽く笑みを浮かべた。
「空けてみろよ、澪」
「は、はいっ!」
青いリボンをほどいて箱をそっと空ける。
その瞬間、私の目に凄い物が映った。
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