転生のステージライト ─ TS少女は諦めない✨️

ジュン・ガリアーノ

Re:1 転生の向こう側

Cys:0 AIドルVS人間アイドル――歌声の戦場へ

──AIの時代の訪れと共に、


    人々は”完璧”さを崇め、


      自らの”価値”を失った──



 私はそんな時代に“転生“して、

 “人間アイドル“をやってるの。


 でも、観客達が望んでいるのは私じゃない。


 無数の観客達から放たれる熱狂と、眩しく照らす“ステージライト“

 それらは全て、人間を遥かに超越した『AIアイドルグループ』に向けられてる。


 けれど今、観客達は固唾かたずを飲んでステージを見つめたまま、一言も喋らない。

 ライブの最中に、観客達が全く予期していなかった出来事が起こったから。


 それは『AIドルvs人間アイドル』という、誰もが予期しなかった特別イベント!


 このステージに、私は仲間達みんなの協力を得て飛び入り参加、まあ……正確に言えば乱入したの。

 そして『AIドル《アイドル》』という”AIで作られたアイドル”の女の子達と向き合ってる。

 もちろん、私は”人間のアイドル”として衣装をまとってるよ。

 これは今の私の戦闘服。

 だから、ちゃんと仕上げてきた。

 気合いはバッチリ充分だよ。


 そんな私だけど、観客達から見つめられて、正直すっごく緊張してる。

 何より、目の前にいるAIドル達から放たれる存在感は圧倒的。

 幻影だなんてまったく思えない。

 一瞬でも気を抜いたら足だって震えそう。

 彼女達が持つ輝きはあまりにも完璧で、私を完全に飲み込もうとしてくるから。


───くっ、みんな……AIドルは、凄すぎるよ!


 プレッシャーを跳ね返そうとする私の全身に、ギュッと力がこもる。

 それに対し、史上最高のAIドルグループ『Shiny-Crystalシャイニークリスタル』のリーダーである『Lynetteリネット』は真逆。

 動揺してる素振そぶりなんて一切ない。

 同じステージに立つ私を、自信と余裕に満ちた眼差しで真っ直ぐ見つめてきた。


「へぇ、アナタが“人間の希望“? “至高のアイドル“? フフッ、分かってないわね。もう、人間の時代は終わったのよ。輝きも、歌声も……決して私たちAIドルには勝てないの───!」


 その眼差しは完璧な美しさを備えてる。

 ブルーに煌めく瞳は、まるで宝石のよう。

 いや、眼差しだけじゃない。

 見た目や佇まいも私とは全然レベルが違う。

 もちろん、他のAIドル達もそう。

 私もここに辿り着くまで必死に磨き上げてきたけど、Lynetteリネット達の完璧さには到底及ばない。


 そんな彼女達の登場で、今や私達人間アイドルなんて草葉の陰。

 だからこそLynetteリネットは、私の乱入にも動じてる素振そぶりはゼロ。


「こうなるのを望んだのは人間だし、私たちを選んだのも人間。だから……」


 そこまで告げると、Lynetteリネットは片手を伸ばしてスッと前に上げてきた。

 その所作も、流れるように完璧で美しい。


「アナタは決して選ばれないの、レミオ。いえ……『望月 澪もちづきみお』!」


 Lynetteリネットは私をビシッと指差した。

 彼女の言ってきた事は、悔しいけどその通りだ。

 皮肉だよね。

 私は“人間だから人間に選ばれない“の。


「でもLynetteリネット、私は……」


 これまで歩んできた軌跡が脳裏に駆け巡り、心に強く温かい灯火が灯る。

 そしてLynetteリネットを真っすぐ見つめたまま、私は一歩前に踏み出した。

 ヒールのカツンという足音が、会場に静かに響く。


「みんなの心に歌声を……『人間の輝き』を取り戻す為に、ここまで来たの。だから、絶対に負けない!」


 私がその宣言と共に右手をバッと横に振り切ると、Lynetteリネットはスッと手を下げて挑戦的な笑みを浮かべた。

 流れるような銀色の髪が僅かに揺れ、澄んだブルーの瞳が星のような煌めきを放つ。


「アハッ、面白いじゃない♪ やってみなよ澪。今からアナタが奏でる歌はと同じように……そう、アナタ自身の『鎮魂歌レクイエム』になるんだから───!」


 これは皮肉でも、私をバカにしてる訳でもないのは分かってる。

 完璧な存在だからこそ持ち得る、AIドル達の絶対的な自信。

 AIドルが放つ完璧な輝きは、これまで人間アイドルの存在価値を次々に溶かしていったから。

 彼女達は瞬時に観客の感情を読み取り、最適な歌声とパフォーマンスを提供する。

 そんな存在に、私達人間が勝てるわけがない。


───ううっ……このオーラは、まるで神話の女神っ……!


 正面に立つ私は、それをヒシヒシと感じてる。

 全身にギュッと力がこもり、額に冷や汗が滲む。

 心臓はドクドクと波打ってるのに、指先はひんやりと冷たい。


───でも、ここで退く訳にはいかないの。私が“最後の希望“なんだもん。だから。必ずやり切って……ううん、必ず勝ってみせる!


 共に戦ってきた仲間達みんなと、何より私の歌声を信じてここまで導いてくれた『耕助さん』の為にも……!


 だからこそ、私はLynetteリネットから瞳を逸らさない。


 マイクを握る!

 心の灯火を最高潮に燃やして歌う!

 今こそ、私の輝きを究極にまで高めるんだ!


───煌めけ! 私の『魂の交響曲ソウルシンフォニー』!


 全身から全ての想いを立ち昇らせ、私はLynetteリネットに向かい力強く笑みを浮かべた。


「歌声が、私自身の鎮魂歌レクイエム? そんなの……やってみなきゃ分からないから! いくよ、Lynetteリネット!」


───

 ───

  ───


 こうして、人間アイドル最後の希望と言われた私と、完璧な美しさを持つ至高のAIドルLynetteリネット達との戦いが幕を開けた。


 ただ、これはまだ遠い未来の話。

 転生する前、私はまだ……何者でもなかった。

 ううん。

 転生してからもそう。


 あの時まで、私はまだ───!

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