第4話

「ふーん。で、悲しいけどコンビニ通いはやめると」

「悲しくはねえって! このままのペースだと、金がなくなりそうなんだ」

 昼休み。俺と寿一は屋上でメシを食っていた。

 寿一は鉄柵に肘をついて、購買のサンドイッチを食べている。鉄柵の向こうにはグラウンドが広がっている。俺は胡坐をかいて、弁当を広げる。

「別にいいんじゃね? バイトもしない高校生の財力だと限りあるし。てかそこまで、こしろーがコンビニに拘るのが意外だった」

「……だよな」

 拘るのは、俺らしくない。

 地上では豆粒のような生徒たちが、動き回っている。

 体育の授業の前に、熱心な部活は昼練をしている。ハードルを等間隔に並べているのは陸上部だろうか。

「病院」

 寿一の肩が跳ねた。

「この前病院の検査だったろ。どうだったんだよ」

 寿一は頬を掻く。

「完治したって」

 完治したのに、嬉しくなさそうだ。


 寿一は中学から短距離走に打ち込み、県大会に出場した経験もある。陸上のスポーツ推薦で、根美ねび高校に進学した。

 早い段階で合格が決まっても、寿一は慢心せずにずっと走ってトレーニングを続けていた。

『春休みには練習に参加させてもらえるってさ。高校の練習、すっげえわくわくする』

 中学三年生の一月に、寿一は俺が教室で受験勉強をしていると、どこからともなく現れて、根美高校への期待を語った。

 根美高校は偏差値がまあまあ高く、部活動も盛んで文武両道を謳っていた。

 俺は家から通いやすいという理由で、根美高校を志望している。

『こしろーも部活入るんでしょ? どこ入るの?』

『別に、どこにも入るつもりはない』

 寿一は根美高校のパンフレットを、参考書の上に置いた。居合道部、美術部、陸上部。様々な部活動の高校生たちの集合写真が何枚も掲載されている。

『こんなに部活があるんだから勿体ないって! キラキラした青春を送ろうぜ。女子の制服も可愛いし!』

『……』

 顔だけで、金ヅルにならないあんたに興味ねーよ。ぷるぷるの唇から吐き捨てられた可愛い声。俺は無意識のうちに拳を握りしめた。異性にいい思い出はない。

『おーい寿一、カラオケそろそろ行くよ』

『お、もうそんな時間か。じゃあな、こしろー。受験勉強頑張れよ』

 寿一はひらひらと手を振ると、同級生と連れ立って去っていった。

 俺は教室に一人残される。

『……帰るか』

 お腹が減った。勉強の続きは家でもできる。リュックを背負って、教室の電気を消して戸締りをする。窓の向こうでは、寿一が同級生に囲まれて明るく笑っていた。

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