題名未定(仮称:ポストアポカリプス)

 俺は仲里純(なかざとじゅん)。しがない男子高校生である。

 今日は学校のある、普通の平日のはず…なのだが、やけに外が静かである。

「何かおかしい…」

 車が走る音くらい聞こえてもおかしくないはずだが、目立った音は何も聞こえない。

「なんでだ…?……ってなんだこれ」

 とりあえず状況を確認しようとスマホを取ろうと思ったら、無色透明なルービックキューブみたいな物が置いてある。

「…誰か入ったか…?いやそれだったら気づくしな…」

 色々思考しながらとりあえず触れてみると、突如空中に文字が浮かび上がった。

「うわっ⁉︎なんだ…?ホログラムか…?でも投影先になるような物はないな…」

 何か人智を超えた力のような何かを感じつつ浮かび上がった文章を読んでみると、こんなことが書いてあった。

“アップデートのお知らせ 2024/7/2 4:00(UTC+9)

本宇宙に居住していただき、誠にありがとうございます。

以前より人類の多くの方々から「現状に満足していない」とのお声をいただきましたので、2024/7/2 0:00(UTC+9)にてアップデートを行いました。

以下はアップデートの内容です。

・あらゆる束縛からの解放

・異能力

・世界観の大幅な変更

・新しい生命体

また新要素の使用方法はこの文を読了後即座に送信されますが、通信環境などによりラグや不具合が生じる可能性がございます。

今後とも本宇宙をよろしくお願いします。”

「まるでソシャゲの運営からのお知らせだな…一体なんだってんだ…。

………はぁ…こんなものイタズラかなんかに決まっている。真面目に考えるだけ無駄だろう。…一回外の状況を確認しよう」

 閉め切っていたカーテンを開けると、そこには変わり果てた街があった。

 窓ガラスが割られており、荒らされたコンビニ。

 途中で折れ、鉄筋が剥き出しになった電柱。

 蔦に覆われた学校。

 どれも原型が残っており風化しているようには思えないが、周囲の環境がガラリと変化している。

 確実に自分が住んでいた街ではあるのだが、無人になったまま何年も月日が経過した様な印象を受ける。

 今自分が見ている世界は本当に昨日まで住んでいた世界なのだろうか。非現実的なことの連続で、そんな事さえ考えてしまう。

「…ついていけねぇ…これが本当に現実か…?…一旦冷静になれ……。

 そうだ学校に行って見れば誰かしらいるかもしれない。行ってみるか…」

 制服に着替え終わってドアを開けようとした時、突如全身に違和感を覚えた。

「うっ…!」

 全身に激痛が走る。それと同時に酷い頭痛が襲いかかってきて、痛みに耐えきれず倒れてしまう。

「なんだ…?体が作り替えられるような……!それに頭に膨大な量の情報が流れ込んで来る……!」

 頭が熱いからか視界がボヤけており、はっきりとは視認できないが、足先や手などの末端から徐々に肉体が変化していき、それに合わせて服装も変化していく。

「ぐっ…がぁっ…」

 脳内に記憶のような、知識の様な何かが流れ込んできており、脳の処理が追いついていないのか発熱している。

「っ!…はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 激痛から解放されたこれには全身に違和感が広がり、視界からも自分の肉体に明らかな異変が起きたことが視認できる。

「なんだ…何が起きた…?まったくさっきから一体何が起きてんだ……」

 とりあえずスマホのインカメで今どうなっているのかを確認する。

「うっそだろおい…」

 そこに映るのは自分の姿ではなく、女性の姿。

 身長は157cmほどに見え、女性らしく体付きは丸く、痩せ型で、髪型はロングポニーテール。胸部には2つの大きな双丘があり、客観的に見てとてもスタイルが良い。

 また幸いな事にこの体には見覚えがある。

「新園琴海(あらぞのことみ)…」

 この家の向かいに住んでるやつである。

 こいつは俺が通っている高校の生徒会長である。

 だからこの体が誰か分かったものの、俺は一般生徒である。クラスも違うため、向こうはこちらを知らないだろう。

「これが一時期よく耳にした 入れ替わり ってやつなのか…?」

 入れ替わりかどうかすらわからないが、情報交換するキッカケにはなるはずだ。

 そう思って、新園琴海の家に訪問しに行く事とする。

「生徒手帳があった方が身分証明はできるか…」

 スマホと生徒手帳を片手に家を出る。

 外に出ると、やはりというか誰もいない。

 アスファルトはひび割れ、コンクリート塀は崩れている。

「えーと、ここであってるはず…」

ピーンポーン

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