第16話 家族との再会(2)

「お父様、お母様。レクト様は私の恩人です。恩人に対して無礼ですよ。ちゃんと話を聞いてから判断してください」


 レイラはそう、怒った口調でご両親を窘めた。


 「そうはいってもだな. . . . . .」


 「レクト様を疑わないでください」


 「. . . . . . そうだな、悪かった。話の続きを頼めるかな」


 さっきまで涙を流して再会を喜んでいたのに、父に対して強気だ。


 「えぇ。俺が言ったのは、レイラを助ける時の話です」


 「つまり、今は違うと?」


 「はい。怒らないで聞いていただきたいのですが、俺がレイラを助けようと思った理由は、レイラで試したいことがあったからです」


 その言葉を聞き、またもやレイラのご両親の目付きが鋭くなった。

 先ほどよりも強く。


 「レイラを何に使おうとした?」


 「簡単に言いますと、俺と一緒にいても問題ないかを確かめようとしました」


 「どういう意味かな?」


 「俺の魔力は生まれつき強過ぎて、周囲の生き物を傷つけてしまいます。今まで俺に直接触れて、死ななかった者はいません」


 「では、レイラにも触れてみようとしたのか」


 レイラの父、エルメストさんからは言葉の節々に怒りを感じる。

 俺の説明が悪いのだろうが、これは事実だ。


 「まさか。俺が確かめたかったのは、一緒にいても問題ないかどうか、ということです。俺の魔力は近くにいるだけで体を蝕むので、できるだけレイラには魔力が移らないよう心がけています」


 「だが、それでも危険なのだろう?」


 「えぇ。今レイラには何の問題もありませんが、あくまで今の所は、です」


 「. . . . . . なるほど、君の話はわかった」


 かなり簡単にしか話していないが、重要なことは伝わっただろう。

 しかしこのままでは、俺はレイラを害するかもしれない危険人物という位置になる。

 どうしたものか。


 「今日ここに来たと言うことは、レイラを解放してくれるんだね?」


 解放とは、心外だ。

 いや、周りからしたらそう見えるのか?


 「お父様。私はレクト様に酷いことなんてされてませんよ? 奴隷だったことに関係なく気を遣ってくださったんです」


 「奴隷だと!? どう言うことだ、レイラ」


 「あなた、少し落ち着いてください」


 「. . . . . . すまない。それで、どういうことか説明してくれないか?」


 「もちろんです。そのために来ましたから」


 エルメストさんは、レイラの発言に一瞬で激昂したが、すぐに落ち着いた。

 リヴィアさんの方がずっと落ち着いてるし、この人がいないと叩き出されていたかもしれない。

 とりあえず、今までの経緯を詳しく話すとしよう。



 ♢ ♢ ♢



 「. . . . . . と言うことがあって、今に至ります」


 俺はレイラに起きた出来事を、レイラに確認しつつ話した。

 なぜ俺が話したのかと言うと、とてもレイラが話せる状態ではなかったのだ。

 今も思い出すと怖いのか、繋いだ手が震えている。

 ご両親もそれには気づいており、辛そうな顔でレイラを見ていた。


 「そうだったのか。悪かったね、色々疑ってしまって」


 「いえ。仕方がないと思います」


 「レイラの様子を見るに、君はレイラを無碍にはしてないようだね。むしろ親しいように見える」


 「えぇ」


 「安心したよ。本当に、レイラを助けてくれてありがとう。これからも、レイラに会いに来てくれると嬉しい」


 「あの、そのことについてですが. . . . . .」


 やはりご両親は、レイラがこのまま家に帰ると思っているようだ。

 まぁ、普通はそう思うだろうが、はたして俺とレイラが一緒にいることを許してくれるのだろうか?

 横を見ると、レイラが決心したのか、立ち上がった。


 「お父様、お母様。私、まだ家に帰りません」


 「. . . . . . どういうことだ?」


 「私の今の家はレクト様の家です。私はそこに帰ります」


 「レクト君の言っていた実験の手伝いをしたいのか?」


 「いえ。私がただ、レクト様と一緒に居たいだけです」


 「レイラ、それはレクト君に迷惑ですよ」


 「そうだぞレイラ。それに、レクト君とあまり長くいると、魔力による影響で危ないんじゃないか?」


 レイラのご両親はこちらに目線を送ってきた。

 もちろん、魔力の影響はまだわからない。

 今の所まったく影響が見られないから、このまま気を付けていれば、もしかしたら一緒に暮らしていけるかもしれない。

 しかし俺の父は、親子であるにもかかわらず、少しずつ蓄積した俺の魔力で命を落とした。

 可能性がないとは言いきれない。


 「魔力による危険はありますが、俺としてもレイラと一緒に居たいと思っています。どうかレイラの意志を尊重していただけませんか?」


 「. . . . . .」


 「あなた、いいのではないですか?」


 「しかしだな. . . . . .」


 「心配なのはわかりますが、あの様子ではレイラが納得できないでしょう?」


 レイラの母は、俺たちの繋いだ手を見ながらそう話した。


 「それにレクト君ならば、レイラが危険になったらすぐにこちらへ届けてくれるでしょう」


 「はい。少しでも魔力の侵食が見られたら、すぐに離れます」


 「. . . . . . 離れてしまうのですか?」


 「レイラが苦しくならない程度には会えるから、大丈夫だ」


 レイラは“離れる”という単語に反応して、不安そうな瞳で見つめてきた。

 俺としても離れるのは絶対に嫌だが、レイラの命が最優先だ。

 可能性としては考えなければならない。


 「. . . . . . はぁ。いいだろう。君のところへレイラを預ける。よろしく頼むよ、レクト君」


 俺とレイラのやり取りを見て、観念したようにエルメストさんはそう言った。

 

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